第3話 恐竜人姿の発見
「みんな、静かに、背後から何かの気配が近づいてきたわ」
森の探検隊一行は、恐竜人の遺跡内部を探るため入っていき、遺跡内の様子を隈なく調査し出していった。
その結果、この遺跡は一億年以上も昔に建造されたことが分かった。
石造の遺跡の通路は、石の階段を下りて先から洞窟のようなところまで伸びて続いていた。むき出しの岩壁が迫る洞窟の方へ降りてくると、しばらく歩いたその時、隊列最後尾の山野辺が背後からの気配に気付いたらしい。
「それは本当か、山野辺」という大沢は確認した。「相手は一体何人くらいかまでは分かるか?」
「そうね、おおよそ二体分だと思う」山野辺は言った。「何かがこちらへ歩いて近づいてくるところみたい」
大沢は、背後の隊員たちへ目を向けた。誰もが緊張に身は縮こまっている。
大沢は周辺の地形に目が向かった。人一人が何とか隠れられそうな岩陰の場所がちょうど六つほどあった。もはや、今更考えている猶予的時間は残されてなどいない。
「総員、直ちに、近場の岩陰へ隠れろー!」
大沢の号令で、一行は一人一つずつ六つの岩の影に隠れた。
そうやって息を殺してことを待っていると、やがて松明を持った何かへ彼らの意識を向かい出した。
それは待ち望んでいた光景のようだった。そこには不思議な光景があった。そして、驚愕を迫られる光景でもあった。
人間の大人程の大きさの存在が二体こちらへ松明を持って歩き近づいてきた。
彼らの体の表面は緑色の厚手そうな皮で覆われている。目や顔の造りが爬虫類系そっくりのものだった。茶色い布の服を羽織っている。そして、彼らはしきりに何か喋っているように見受けられるのだった。
その容姿井出達は、明らかに恐竜人と呼べるものに他ならなかったのだ。
「オイ、オマエ、ナニカカンジトッタダロウ」
「アア、サキホドマデウゴクケハイガアッタ。シカシ、ドコカヘキエタ」
「マタ、アノニンゲントカイウヤツラカモナ」
「アイツラ、ワタシタチヲミテ、コシヲヌカシテイタナ」
「ソンナニ、ワタシタチノコトガメズラシイノカナ?」
「ワタシタチカラスレバ、ニンゲンノホウコソフシギナヤツラダヨナ」
「アア、ソウダナ。マタ、アエルカナ、ニンゲン」
「オビエテイタニンゲンガワタシタチニコウゲキシテキタコトダケハワスレルナヨ」
「アア、ニンゲンニモイロイロイルンダロウナ」
「モシ、ニンゲンガオソッテキタラ、オマエドウスル?」
「ニンゲンニ、ワタシタチノコトバハツウジナイ。ワタシタチヨリカラダガオオキカ
ッタラニゲル。アイテノホウガ、カズガオオイトキモニゲル。アイテガワタシタチヨリチイサクテカズガスクナイトキ、イノチヲカケテタタカウ」
「オマエニハ、ニンゲントタタカウカクゴハアルンダロウナ?」
「モチロンサ。ワタシタチキョウリュウジンハ、ユウモウカカンナホコラシイシュゾク。ソノナニオメイハキセナイ」
「ヨシ、ボチボチワタシタチノスミカマデカエロウ。キョウノテイサツハ、タイシタハッケンモナカッタシナ」
「ニンゲンニモアワナカッタシ、ヒマナテイサツダッタナ」
「ソウダナ、イコウゼ、アンマリカエリガオソイト、オヤブンシャーマンカラシカラレルカラナ」
「アア、ハヤクアタタカイネドコニカエロウゼ」
「オット、ソノマエニ、オヤブンノキョウノハナシガアルゾ、オクレズニサンカダ」
「ワカッテイル。イソイデイクゾ」
それっきり二体の偵察係の恐竜人たちは、洞窟の奥地へと姿を消していった。
その状況を見計らって、森の探検隊一同が、岩陰からひっそり姿を現してきた。彼らでは辺りの様子をキョロキョロと見渡していき、何も恐竜人たちの気配が湧かなくなったことに一旦安堵し始めていった。森の探検隊は先ほどの恐竜人に姿が見つからずに済んだのは良かったのだ。恐竜人が何に着いて詳しく話し合っていたかは謎のまま分からないのだけど、自分たちは依然として安全自由なままの身でいられて良かったという気持ちは密かで胸の内を抱けてあった。
「隊長、これからどうしますか? あの恐竜人の向かった方へ参りますか」といった三好のおずおずとした質問に大沢では腕を組んで暫く考えた挙句、やがて、想いを決断すると口を開いてこう答えた。
「よし、このまま洞窟の奥地まで行ってみよう。そこまで行かなくては、新発見は夢のまた夢だぞ。皆、覚悟はできているな」
その言葉に頷かない探検隊員は一人もいなかった。
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