第2話 謎の遺跡発見者たち

「そんなまさか、本当に恐竜人の遺跡があったなんて……」という日下部は、それきりすっかり言葉を失ってしまった。

 

 探検隊一行はなだらかな丘の下の森から開けた場所に辿り着いていた。

遂に、彼らでは謎の遺跡を発見していたのだった。


 これから一行が向かおうとしている真っ先に、大きな門が半ドア状態になって開いていた。ただそれだけでも好奇心を与えてくるシチュエーションなのだった。もう片方のドアは閉じておらず、奥の方へ向かって倒れてボロボロの石ころ状態だった。


「ほれみてみろ、日下部」清水は得意げに言った。「これで地図の信憑性は格段に高くなっただろう。もういい加減、真実を認めねばなるまい」


「…………」


「よし、ここでひとまず休憩だ」といった大沢の号令に、探検隊一行では黙って座って腰を落ち着かせて休んだ。


 探検隊一行では携帯食を譲り合って分けたり水筒の中身水分を飲んだりする。その光景を、頼りない松明の火の明かりが照らし出していた。その松明の明るさと熱量が、獣や虫に煙たがれて寄せ付けないものだ。かがり火で照らし出された探検隊員たちの頼りない食べ物の影は、口の中に入っては消え去っていく。


 そんな最中、ただ一人黙々と遺跡由来の印を地図上へ書き込む大沢一人の姿を除き、一行では辺りの異様な光景をしげしげと眺めていた。


 入り口の右脇には一本円柱型の柱が立っていた。


 表面の象形文字がほぼ崩れてしまって消えかけてあった。その消えかけた文字列を、織部は写真で取っていった。その上部には、太古に隕石か何かが落ちて滅びた仮説が有名になっている恐竜ではなく、恐竜人らしき石像彫刻が、図体をでかくして荘厳な佇まいで聳え立っていた。入り口の左脇の円柱にあるはずの石像は、だいぶ以前に落ちて砕けて粉々になって風化していたせいか、そこに恐竜人の石像は影も形も見当たらなかった。


「あまり飲み食いばかりして、食料は底に着かせず残しておけよ。遠足じゃあるまいし」


 口うるさい大沢が投げかけた言葉に一行は「へーい」と答えると、リュックなどの荷を再び担ぎ上げた。その隊員たちの手には懐中電灯が握り締められてある。


 一行で目指す先の場所は、得体のしれない恐竜人が立てたような謎の遺跡の中だ。そこにたとえ何が待ち受けていようとも、一行の足取りは止めるわけにいかない。


「それでは一同、これから我々はこの謎の遺跡最深部まで迫り、一つでも多くの情報を発見し入手する」大沢は高らかに宣言した。「それを手柄とし、持ち帰れるものは全て持ち去り、世間へ恐竜人の真相を広めるのだ。その使命は間近に迫っている。くれぐれも、隊列から離れ離れになったりするな。あの遺跡の中から生還して帰るぞ。手遅れミイラ取りからはミイラ状態にまで陥るなよ! それでは一行、出発だー!!」


 号令した隊長を先頭で探検隊一行の足は歩み始めた。

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