姉川とお出かけ

今日はダラダラ日。

朝飯食ってぼーっとしていると、スマホがポン鳴る。

LINEメッセージが届いたようだ。

俺にLINEを送る人は限られている。

家族からLINEが届くようなことは滅多にないので、数人程度だ。

(ちなみにジムやクラスのグループラインはうるさいから通知切ってる)


1人は梨衣花ちゃん。

主に雑談が中心だ。

偶に勉強会のお誘いもある。


もう1人は市姫さん。

前までは連絡なんて無かったが、ストレス発散に付き合うようになってからは、

ちょくちょく話すようになった。

ストレス溜まってきたから殴らせて?

とかいうチンピラみたいな内容がメインだが。


そして最後に姉川さん。

毎日のように今日暇?って連絡がくる。

すでに何度も断っている。

今日暇?だけ言われてもなあ。

目的が分からんと返事しづらい。

とはいえ何か面倒なことを押し付けようというわけでもなく、

シンプルにそういう機微に疎い人なんだろうな。


ちなみにさっきのは姉川さんだった。

流石に断りすぎたし、そろそろ会うか。


「大丈夫です、と」


すぐに既読が付いた。

そして即返信。

家の近くまで迎えに行く、とのこと。


家知らないでしょ?

と打つと、前飯食った鳥貴族で待ち合わせらしい。

まあ、確かにあそこは近い。

歩いて帰ったのを見て判断したのか?

意外と勘が良いな。


まあいいや。

じゃあそれでよろしくお願いします、と。

時間はどうしますか?


と、打ったらまた即返信。

いますぐ!


とのことらしい。

暇かよ。

暇なんだろうな。

大学生だもんな。


分かりました。と、打って家を出る。

どうせ俺も今日は暇だしな。


鳥貴族の前につくと既に姉川さんが居た。

早いな。

そしてめっちゃ目立つ。

白の丈長半袖Tシャツにキャップ。網タイツにブーツ。

Tシャツが長すぎて下になにも履いてないかと錯覚してしまう。

そして髪の色が変わってる。

初対面では緑色のショートヘアだったのに、

今は金髪にピンクのインナーカラーに変わっている。

しかもそれらのファッションが彼女の立体的な顔立ちにめちゃくちゃ似合っている。これが地方の鳥貴族前ではなく都会の駅前だったら5分ごとにナンパされていたかもしれん。


「お待たせしました」


「おお、早いな!

返信きてから10分くらいだったし、来た方向から考えてアピタの近くか?」


ナチュラルに住所を特定しようとするな。


「まあ、はい。

そっすね」


「じゃあ次からはそっちで待ち合わせるか!

とりあえず乗れよ。暑いだろ?」


そういってピンクのワゴンRのドアを開ける。

中にはぬいぐるみやバンドグッズ?のようなものが沢山。

いかにもって感じだ。


「免許持ってるんですね」


「ここら辺だと普通だろ?

オートマ限定だけどな」


言われた通り車に乗り込む。

良い香りがした。

市姫さんとは違っていかにもな香水の香りだ。


「随分忙しいみたいだな。

中々誘いにのってくれないからウザがられてるかと思ったよ」


「そりゃあ姉川さんが暇か?としか聞かないからですよ。

何をするか分からないから、取りあえず丸一日空いてない場合は断ってました。」


「えっ!?そうなの?

何するのかとか聞いてくれればいいのに!

か、彼氏なんだからっ!」


「いや気を使いますよ。

偽彼氏ですし」


「……うーっ」


なぜか唸る姉川さん。

というか本当にどこに行くんだろ?

順当に考えれば学校かな?

写真を見せたけど、実物を疑われているパターンとか。


バイト先は既に俺と付き合ったと吹聴しているらしいから無いだろう。

その件で日野君からお前気を付けろよ?ってLINEが来た。

彼だけには俺が偽彼氏として三又していることを伝えている。

揉めてもしらないからな、と言われたがバレたところで揉めないだろ。

偽なんだから。

精々周りにバレないように気を付けろと言われるだけだ。


「そ、そういえばさ。

どうかな?今日の恰好?

結構イメチェンしたんだけど」


「ああ、前から思ってましたけど、そういうファッション似合いますよね。

インナーカラーもおしゃれでカッコいいと思います」


ちょっとセクシー過ぎない?

とは言わないでおく。

それなりに信用してくれた年下の男が、実はエロい目で見ているなんて知ったら男性不振に拍車がかかってしまう。


「そっかそっか!

前の色よりこっちの方が好みか?」


「え?

まあ、はい。そうですね。

俺は好きです」


「そうかそうか!」


テンションが上がる姉川さん。

外見褒められるのなんて慣れっこだろうに。

まさか偽装云々は照れ隠しで本当は俺が好きなんてことは無いだろうしな。

20歳の女性からしたら15歳の男なんて子供も同然だろ。

女性は男性より精神年齢が高いというし。


「それで、今日はどこに行くんですか?」


「ラウワン行こうぜ!

コウジは格闘技やってるからスポーツとかもできるだろ?

安心しろ、奢るから!」


うーむ、球技は苦手なのだが(得意だったら中学でいじられてない)。

というか……、


「学校とかじゃないんですか?」


「学校?なんで?」


「いや、学校でナンパしてくるやつにアピールとかするのかなって……」


「あっ!

……ああ、えーと。

うん、それは大丈夫だ。

大学は夏休み本当に人がいないんだよ。

だから行ってもあんまり意味ない。

あたしはサークルにも入ってないしな」


そうなのか。

大学ってのはそうなんだ。

知らんかった。


「でもラウワンには大学の連中やここら辺のナンパ野郎が沢山いる。

そいつらに彼氏をアピールすることは大きな意味があるんだ」


「なるほど」


「と、いうわけだ。

納得したか?」


「はい、てっきり暇だから簡単に誘える俺を誘ってるのかと思いました」


「……ちがうよ?」


本当に?

まあいいや。

スーパー安全運転に揺られてラウワンへ。

まあまあ遠いが、車ならそんなにかからないし、姉川さんとの会話は結構楽しい。

フランクで話しやすいのだ。

そんなこんなで片道30分かけてラウワンに向かうのだった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る