ラウワンデート
ラウンドワンに到着。
目的はスポッチャだ。
入り口でプランを決めてリストバンドを貰い、
入場する。
細かいことは全部姉川さんがやってくれた。
姉川さんは基本的に容量いいし頭の回転も早い。
話していれば分かる。
人間関係がポンコツなだけである。
しかし、ここがスポッチャかあ。
本当にいろんなものがあるんだな。
ゲームセンターにローラースケート、パンチングマシンとか初めて観たし、ストラックアウトも実際に見るのは初めてだ。
別の階にはバドミントンにテニスにバッティングセンターなどなど。
これは学生がハマるわけである。
「スポッチャ初めてか?」
「はいっ、凄い広いですね」
「だろー?
とりあえず一通り遊ぼうぜ。
空いてるのは……」
そういってサラッと俺の手を取る姉川さん。
何気に女の人と手を繋ぐのは初めてだ。
リードするつもりか?
首まで真っ赤になってる女が?
手を繋いでびっくりしてしまい脇汗かいた男を?
とんだ組み合わせだ。
姉川さんは口調こそ荒っぽいが、とても線が細い。
ちゃんと飯食ってるのか心配になるレベル。
そのか弱さに女性を感じる。
歳上の綺麗なお姉さんとデートしているんだなって実感する。
つまり、なんだ、
あんまり周りへのアピールとか偽装関係だとか気にせず楽しんだ。
色んなゲームをやってスポーツもやってパンチングマシンで全然数字が出なくて凹んで、球技が下手すぎて姉川さんにボコボコにされ、音ゲーではそこそこの成績を残したりした。
そして休憩。
椅子に座って一息つく。
「楽しいな!
あたしスポッチャがこんなに楽しいの初めてだ」
「今までは楽しめなかったんすか?」
「男女混合でしか来たことないんだ。
そうなると合コンみたいになっちゃうし。
なんか純粋に楽しめないんだよ」
「なるほど」
そういうのが好きな人の方が多いのだろうが、
姉川さんは嫌だったということか。
生きづらいな。
「コウジはこの後どうしたい?
また音ゲーやりに行くか?」
「うーん、そうすっねー」
と、考えていると姉川さんが俺の太ももに手を置く。
おいおい、男性恐怖症はどうした。
と、思ったら顔が真っ赤になってるし何だったら汗もかいてる。
太ももに乗せた手が小刻みに震えており低周波治療器みたいになってる。
無理すんなよ。
俺は太ももの上の手を両手で掴み、
姉川さんの顔の前まで持っていく。
「ぇ?」
「こういうことはやめましょう?
姉川さんは好きでそういうファッションをしているだけで、
根は真面目で身持ちが固い人なんですから。
無理しないでください。
せっかくのデートなんだから背伸びせずに楽しみましょう」
姉川さんの学友も多いらしいから偽装云々は口にせずに説得する。
まったく、テンション上がって変なことしない方がいいよ?
対人関係ポンコツなんだから。
「……うん、分かった。
コウジの言う通りにするね」
今度はぽやーっとした顔で俺の顔を見つめる人になってしまった。
なんだなんだ。
照れるからやめてくれ。
というわけでこっちを見続ける姉川さんに何を言おうか考えているとお腹が鳴った。そういえば動きっぱなしで昼ご飯も食べていない。
「とりあえずお腹すいたのでご飯にしましょうか」
「そうだね。
適当に勝ってくるから待ってて」
姉川さんが立ち上がる。
あまりに自然な動きで見逃してしまうところだったが、
流石に全奢りは申し訳ない。
俺も楽しんでいるわけだし。
「いや、流石に自分の分は払いますよ」
「大丈夫大丈夫。
あたしの方が5個も年上なんだから。
それに、こういうところのご飯は高いよ?
小遣い少ないんだろ?」
「……ありがとうございます」
そう言われると弱い。
同じような言い回しで梨衣花ちゃんには奢ってるしな。
ジュースだけど。
ここは申し訳ないが甘えることにした。
テーブルで待っていると、食べ物を買いに行った姉川さんが男から声をかけられた。それに対して姉川さんは俺を指さす。
男は少し怪訝な顔をしたが、去っていった。
本当にすぐナンパされる人だな。
でも揉めなくてよかった。
「お待たせ!
コウジのおかげでナンパ男を撃退できたぞ!」
姉川さんがご飯を買って戻ってきた。
唐揚げとポテトとチャーハンか。
ジャンキーだが美味そうだ。
「それはよかったです」
「いつもはすぐケンカになるんだけどな。
コウジのおかげかな」
それは多分、姉川さんが今日機嫌がいいからだ。
しつこいナンパ男も悪いが(ビビッて)口汚く対応する姉川さんにもケンカを誘発する原因は存在している。
とはいえ丁寧に対応したからといって引き下がるわけじゃないから難しい。
この人には俺(彼氏役)が必要だな。
危なっかしすぎる。
と、いうわけでご飯を食べて休憩してまた運動をして帰宅。
次は同じ大学の連中がよく行く商業施設へ行きたいらしい。
俺は了承した。
家の近くのアピタまで送り届けてくれたが、
別に隠す理由も無いので家まで送ってもらった。
姉川さんは少しうれしそうにしていた。
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