イケメン陽キャの家にお呼ばれ

華麗に高校デビューをかました俺だったが想定外の事態が3つあった。


まず1つ。

私立高校のお行儀の良さだ。

イジメどころかいじりすらない。

地元中学だったら馬鹿にされてたようなやつでも、

変わった面白いやつ扱いだ。

特にうちのクラスは陽キャの日野君が男子を牽引している。

日野君はみんなで楽しくやろうぜタイプのイケメンサッカー部陽キャだ。

自己紹介でかましたせいで最初軽くビビられてた俺にも気安く話しかけてくれた。

おかげで俺は野球部やサッカー部のやつと同じスポーツマン扱いだ。

楽しくやれているが、高校デビューしたかいが無い。

中学時代の俺でも全然楽しめただろう。

日野君が俺の中学校にいたらなあ。


そしてもう1つ。

男子内では一目置かれたが、女子に怖がられた。

技を教えて欲しいとかいうウェイの奴にキムラロックとかアキレス腱固めとかフロントチョークとかやりながら教えてやったのを見て暴力野郎だと思われたっぽい。

普通にモテたかったのに残念極まりない。

少なくともクラスの女子とは厳しそうだ。

でも格闘技は辞めないがな。

楽しいし。


最後に1つ。

友達ができない。

いや、クラスのやつらとは話す。

LINEだって交換した。

みんなで集まる系のやつには呼ばれる。

ただ、誰かと遊びに行くことがない。

これはシンプルに市外だからだ。

俺は家が遠い。

遊ぶのも一苦労だ。

ジムは変わらず行ってるから時間もないし、ジム会費や道具、スパーリング大会費用とかを出してもらう代わりに小遣いを減らされたので買い食いもカラオケも厳しい。

格闘技は楽しい。辞める気はない。

だけどこれでは高校デビューじゃなくてアマ格闘家デビューだ。



あ、あと成績が悪い。

確実に格闘技のせいだ。

ジムに行く時間もそうだが、暇が有ればYouTubeで技術動画や試合動画を観てしまう。勉強に身が入っていないのが分かる。

まだ高校1年の中間だからそれほど深刻ではないが、

親が怒ったらジムを解約される可能性もある。

なんとかしなきゃな。



取りあえずテスト期間だけジムを減らしてなんとか期末テストで挽回。

みんなが本気を出してない1年生の間はこれで乗り切ろう。


そしてあっという間に夏休み。

やることが多いと時間が過ぎるのも早い。


夏休みもほぼ格闘技漬けだ。

8月にアマチュアMMAの試合がある。

階級年齢実力で別れてマッチメイクされるので、そんなに強い人と当たることは無いだろうけど、スパーリング大会とは違って大きい会場でやるらしい。

緊張する。


朝昼に宿題。

夕方から夜にかけて練習。

ジムが休みの日は宿題も休んでダラダラ。


そんな毎日を送っていると、珍しいやつからLINEがきた。

日野君だ。

遊びの誘いだった。

ダラダラする日に合わせて約束をする。



そして当日。

俺は日野君の家に向かった。

彼の家にはPS5があるらしいので、それで遊ぶことになったのだ。

意外と彼の家は近いようで、自転車で20分程度だった。


到着して部屋に通される。

おしゃれな部屋だ。

これが陽キャかあと思いつつ早速ゲームを始める。


面白い。

……が、格闘技ほどじゃないな。

俺がゲーム下手なので接待プレイさせてしまう申し訳なさもある。

そんなこんなで遊んでいると日野君が口を開いた。


「……武田さあ、彼女いるの?」


「いないけど?」


まさかの恋話だった。

なんだなんだ好きな人でもできたのか?

クラスの女子だと市姫さんかな?

正統派美少女って感じだし。


「だったらお願いがあるんだけど、いいかな?」


「なに?」


女子に調査だったら無理だぞ。

俺怖がられてるし。


「俺の妹の彼氏になってくれない?」


「……は?」


は?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る