いつの間にか三股!?イジメが怖くて鍛えたらとんでもないことになった

桜井君JK

プロローグ

「せんぱい、

これってどういうことですか?」


「私も気になるわ。

武田君、どういうことか説明してくれる?」


「モテモテだなコウジ。

ちゃんと説明したほうがいいぞ。

あたしと付き合ってるってな」


「えーっと……」


休日の街中。

偶然会った3人の女子に問い詰められている。


小柄でかわいらしいが出るとこは出てるゆるふわモテ系後輩女子。

黒髪ストレートで女優のように大人びた美人のクラスメイト。

パンク系でスレンダーで長身のカッコいい系だが、実はポンコツな女子大生。


実にバラエティに富んだメンツだ。

しかもみんな怒ってる。

姉川さんなんて付き合ってるとか言ってるし。


てか怒られるようなことしてないよな?

意味が分からん。

どうしてこんなことになったんだっけ?


時は高校入学まで遡る。








中学生で背の伸びなかった俺はいわゆるいじられ役だった。

小学校から仲良かったメンツの中でもヒエラルキーが下の方になり、なんとなく生きづらい思いをしていた。


理由は分かっている。

俺が弱そうだからだ。


反撃しなさそうだからからかわれる。

それが続くとつけあがる。

平和な学校だったからイジメとまではいかなかったが、嫌だと言えない日々を過ごした。


俺は思った。

高校デビューをしようと。


幸い中3の後半から背が伸び始めた。

みんなからの対応は変わらなかったが、それはすでに自分のキャラクターが決まってしまっているからだ。


新しい環境にいけば変わるはず。

そう思った俺は親に頼んで市外の私立高校を受験した。


お金がかかるので申し訳ないが仕方ない。

気持ちよく学校生活を送るためだ。


そしてそれだけじゃない。

高校デビューするなら付加価値が必要だ。

漫画とかだと急にヤンキーになったりするが、今時ヤンキーなんて流行らない。

陽キャも無理だ。

絶対にボロが出る。


なので俺は受験が終わると同時に格闘技ジムに通いはじめた。

元プロMMA選手の経営する小さなジムだ。

大きいとこはガチな人が多そうなのでやめた。

別にプロになりたいとかじゃないからね。


そこにはキックボクシング、MMA、ブラジリアン柔術のクラスがあった。

俺は全部に出た。

ブラジリアン柔術は道着が必要だったので学校で買わされた柔道着でとりあえず参加した。


いじられっ子だった俺にとって打撃は怖かった。

でも中学生相手にガチで来る人はおらず、1ヶ月ほどである程度慣れた。


MMAとブラジリアン柔術は楽しかった。

小柄な大人の人が相手になってくれるのもあって押し潰されるようなこともないし、手加減もしてくれる。


特に柔術は、センスと度胸が必要なキックボクシングと違って、勉強みたいに知識を詰め込んで反復練習が大事な格闘技らしい。

つい先日まで受験生だった自分には合っていた。


YouTubeで調べた技を試して失敗して何が悪かったか聞いて練習して。

そんなことを繰り返していたらジム内でも頑張ってる奴という扱いになり、ジムの人たちもかなり優しくなった。

特に見た目怖い人グループ(刺青ごりごり)が、ご飯を奢ってくれたりした。

ジムに入会する代わりに小遣いが減ったから、めちゃくちゃ助かる。


そんなこんなでジムが楽しくなり、そんなに好きじゃなかったキックボクシングもそこそこ出来るようになってきたかなというタイミングで入学式。

そして自己紹介。

そう、ここだ。

このためにやってきたのだ。



「武田康二です。

桜田中出身です。

趣味は格闘技。

……あっやる方です。

よろしく」



……あっやる方です。

これだ。

これが言いたかったのだ。


よーし、かましてやった。

まだ小柄な部類だが、これで舐められまい。

というかケンカになっても怖くないしね。

いつも大人と取っ組み合いをして慣れているのだ。


念のためLINEのトプ画はジムの集合写真(刺青の人が多めの日に撮ったやつ)にしてるしね。

これで高校デビューは完璧だ!


そう、思っていた。

この時は。

あんなことになるとは思いもしなかったんだ。

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