第4話 魔法使いのオバアさん
私は魔法使いのオバアさん!
今、ルンルン気分でお仕事に向かってるの!
ターゲットはね、えー……シンディ、とかっていう女の子よ!
その子を城のパーテーに行かせて、王子様のハートを射止めさせるのが今回のミッション!
ぬふふ、これがクリアできたらねぇ……
今までのツケ、ぜぇーんぶチャラになるの!!
なんて素敵なんでしょう……これでまた賭場に出入りできるわぁ!
え? どんな賭け事かって?
自分が育てた黒イモリを出場させてのかけっこさ!
は? イモリがかけっこできんのかって?
できないよ!
だから調教師が、あの手この手でゴールまで誘導すんのさ!
あ、魔法はナシね!
え? 依頼主?
過保護なバァさんよ。
なにが良かったのか人間と結婚した娘を、いまだに心配してんの。
娘には、孫娘が二人もいるんだよ。あ、血が繋がってないのを入れたら三人だけど。
依頼主のバァさんはさ、里を出る娘に魔法の鏡を持たせたんだ。
まあ、言うなればスパイだね。
娘の様子を、逐一報告せよってさ。
当の娘は再婚して、あら、ようやく幸せを掴んだのね……と思ったら、旦那がさっさとあの世へ行っちまった。
それからもう三年経つけど、鏡からの報告じゃあ、娘はちぃっとも幸せになりそうにない。
娘の人相がどんどん悪くなっていくのを見て、とうとう我慢ならなくなったわけ。
でも直接あれこれやると、プライドの高い娘が怒るから間接的な戦略をたてたのよ。
名付けて、シンディ追っ払い大作戦。
王子とシンディって娘が結婚して、あの家からいなくなれば娘一家には
この過保護なバァさんの望みを叶えてやりゃあ、私のこさえた高額のツケなんざ、あっちゅうまに消えるんだ。
そういう約束だからさ、ついつい熱が入るってもんさね。
「あ、ターゲットみっけ! こんばんわ、お嬢さん……ほら、もう泣かないで?」
「え? 私、泣いてないですけど……今、繕いものしてる最中で忙しいんですよ……お姉様、またサイズアップとか、大丈夫かしら……ところでオバアさん、どこから入ってきたの?」
あらやだ、シンディったら随分な美人さんだこと。こりゃきれいにおめかししたら、王子様もイチコロだわ。
「あなた、お城のパーチーに行きたいんでしょ? でも、その格好じゃあねぇ」
頭から爪先まで、召使仕様だ。
「行きたい? 誰から聞いたか知りませんけど、それガセネタですよ」
あん? なんだって? ちょっと、縫い物なんかしてないで、こっち見なさいよ!
「行きたいでしょ、お城のパーチー⁉ んでもって、ハイスペ王子と結婚して、ウハウハな生活を送りたいでしょ? 正直に言いなさいよ!」
あ、なに、そのめんどくさそうな表情は。
「私、今の暮らしに満足してるんで!」
「まあた、強がり言って! 給料ナシで雑用押しつけられる生活より、ドレス着てごちそう三昧の生活の方が、いいに決まってんでしょうが!」
はあー……って、なにその深いため息……
「オバアさんとは価値観が合わないから……ねっ、もう外も暗いし帰りな?」
「いやいや、なにもしないで帰るわけにいかん……んもう、めんどくさい! こうなったら問答無用、強制的に城に送りつける!」
私は愛用のステッキを、ヤケクソ気味にブンブン振り回したのだった。
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