第9話 萌花に与えられた才能

「お、2人とも戻ってきたぞ」

「おかえりー」


 戻ってきた、おかえりなどの反応が彩夏と彰から起こっているが、これは2人の意識がこちらの世界へ戻ってきたことへの反応だ。2人の現実世界の体はずっとソファーの上にあった。


「ねえねえ、どっちが勝ったの?」

「私」

萌花は彩夏の質問に対して少し得意気に答えた。


「しっかし、天賜魔法無しでよくやるよな」

「天賜魔法しか使えない神威の方が大変そうだけどね」

「萌花は俺の天賜魔法への対策万全にしてるからなかなか崩せないんだよな」


「神威の天賜魔法は出力結構高いはずなのに何で萌花の影を貫けないの?」

「それはな、萌花がただ影を張るだけじゃなくて、何重にも影を重ねてガードしてるからだ。そもそも光線をジャストガードされる時点で勝ち目はほぼ無いと思うけどな」


「萌花のジャストガードってほんとに凄いよねー」

「それと魔力操作だけが私の誇れるところだからね」


 萌花が産まれ持った特別な才能。それが精密な魔力操作だ。

魔法を発動するとき、無駄に魔法陣に注いだ魔力は霧散してしまう。これを魔力ロスという。

ベテランの魔法師でも魔力ロスを0にするのはほぼ不可能だ。

その魔力ロスをどれだけ減らせるかが魔力効率という言葉で表されている。

しかし、萌花は魔力ロス0を当然の如くやってのける。


「それにしても、萌花って精密な魔力操作ができるけど、それとジャストガードは関係無くねえか?」

「全く関係無い訳じゃないけど、半分くらいは私の努力の成果かな」


「萌花は魔力効率だけじゃなくて努力できる才能もあるんだな」

「私は敵意や殺意に敏感だから、それもジャストガードの成功率に貢献してくれてるかも」

「敵意や殺意を感じ取れるってスパイみたいでかっこいいね」

「スパイ……ね」

「ん? どうかした?」

「なんでも」


「もしかして萌花……」

「ん?」

「かっこいいスパイに憧れてたりするの?」

「えっ、んーー、まあ、そんなとこかな」




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