第5話 志望動機

 「ただいま」

「おかえり、神威」

「ういー、おかえりー」


 俺達は自分の家の他に活動拠点を持っている。

見た目は普通の一軒家と全く変わらない。

というかちょっと豪華だ。

こんな所用意する資金がどこにあるんだかとは思う。


 「警察に色々話しないといけねえかなり疲れた。後で報告書見ればそれでいいだろって思う」

「確かに」

「萌花はいないのか?」

「コンビニ行くって言ってたぞ」

「了解」


 「そろそろ戻ろうかな。皆気にする頃だろうし」






 「ただい……」

「ていっ!」

拠点のドアを開けた瞬間、彩夏がスーパーボールのような物を投げてきた。

こちらへ向かって飛んできたボールを人差し指と親指でキャッチする。


 「えっ」

「この程度の不意打ちで私に当てられるとでも?」

「……おかえり」

「ただいま」


 これは彩夏がいつ何があっても対応できるようにと私にしてくる不意打ちだ。

でもなぜか私にしかしてこない。

これは好きな人にいたずらしたくなるあれなのだろうか。

私にはよく分からないけど。


 「萌花~」

ソファーへ移動していると、彩夏がソファーから立ち上がりベタベタとくっついてきた。


 「ちょっと彩夏、邪魔なんだけど」

「ひどーい。私は萌花の事をこんなに大切に思ってるのに」

「この態度からは私への思いが全く伝わってこないよ」

「ええーっ」


 「4人の志望動機とかって皆把握してるのかな?」

「多分どこかで話したんだろうけどよく覚えてないな」

「じゃあ今もう1回話さない?」


 「なら俺から話していくかな」

「おっ、いいね神威」


 「俺が魔法師を目指そうと思ったのは、家族が魔法を使う犯罪者に殺されたからだ」

「復讐目的だっけ?」

「全然違う。俺と同じ思いをする人が少しでも減ってくれたらいいなって……おかしいか?」

「立派な理由だと思う」


 「次は私が発表するね」

「彩夏の志望動機とかその場のノリでしょ」

「萌花!?」

「否定はできないな」

「俺もそれに一票」

「皆酷いよぉ……」


 「おふざけはこの辺りにして、彩夏の動機聞きたい」

「そのおふざけを始めたのは萌花じゃん……」

「いいから」


 「私は昔、魔法師に命を救われたことがあるんだよね」

「あー、そういえば言ってたなそんなこと」

「それで、その人に憧れを感じて魔法師を目指すようになった」

「憧れを感じて魔法師を志望する人は多いらしいし、彩夏もそのタイプなんだね」


 「萌花の動機も聞きたーい」

「私も神威と同じような動機だよ」

「なんか雑。もっと詳しく聞きたいー」

「めんどくさい」


 「そんじゃあ、最後は俺だな」

「彰は人を助けるために魔法師になったんでしょ?」

「ああ、そうだ。でも先に言われると俺が言うこと無くなっちまうだろ」

「単純だけど、良い理由だよな」

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