第30話 家族のような仲間と
「———さて、と……1人15セットだな」
最終的に集まって来た蛮族達は、ゲームと同じく30人+ヘルハウンド30匹であった。
ただこんなに数がいるにも関わらず、コイツらの強さは1人1人がそこらのB級モンスターとそこまで変わらない。
それどころか、集団戦闘となるとそれ以上に厄介になるだろう。
そんな相手を前に、セニアがいつも通りの自然体で俺の隣に立つ。
「ん、蛮族と犬で1セット?」
「ああ。お前もこの程度なら余裕だろ?」
俺が敢えて挑発的な笑みを浮かべながらセニアに問い掛けると……セニアは何処からともなく短剣を2本取り出して構えた。
「ん、その安い挑発に乗ってやる。その代わり、遅かった方が負け」
「よし、乗った」
それが合図だった。
2人同時に飛び出した俺達は、一瞬にして1番近くに居た蛮族と相対する。
「ニンゲンタべる!!」
「グルルルルルガァ!!」
しかし、流石不毛の地で生き残る種族なだけあり、即座に俺達に対応して襲い掛かって来た。
ヘルハウンドが一斉に口から火を吐き、蛮族が長さ5メートルはある槍を慣れた手付きで振り回す。
そのどれもが、並大抵の人間であれば即死級の一撃だった。
並大抵の人間ならば、の話だが。
「この程度なら余裕だな」
「ん、まずは犬から」
俺はヘルハウンドの吐いた炎を拳圧だけでかき消し、怯んだ隙に懐に入ってヘルハウンドの腹に拳をぶつける。
まるでスーパーボールのように吹き飛んでいくヘルハウンドと騎乗していた蛮族は、途中で仲間に激突し、共々割れた地面に落ちて行った。
「よし、2セット撃破」
「ん、3セット撃破」
「何!?」
チラッとセニアの方を見れば、確かに心臓に短剣が突き刺さった蛮族3人と槍が突き刺さったヘルハウンドの死体が転がっている。
どうやらセニアは持ち前のスピードで撹乱させながら先に蛮族を殺し、パニックになったヘルハウンドを槍で貫いたらしい。
「ん、イルガは怠けてた」
「言ってくれるじゃねぇか、セニア! なら……こんなことは出来るか?」
「……っ!」
俺は指輪からブーメラン(殺傷性あり)に変形させて投げる。
チートボディのパワーとコントロールによって寸分違わず蛮族の頭をまるで何もないかのように幾つも刈り取り、俺の手元に戻って来た。
「……ズルい。専用武器はズルい」
「武器も立派な俺の力の一部だ。ならお前も自分専用の武器を持ってくれば良かったな」
俺が自慢げに指輪で出来たブーメランを見せつければ、露骨に眉を潜めるセニア。
何故だろう。
やはり俺がイルガの身体に転生したからなのか、やけにセニアに勝つ時の優越感が凄まじい。
無意識の内に、イルガがセニアにゲームでやられていた時の事を自分に置き換えて発散しているのかもしれないな。
「ん、絶対負けない」
「俺だってお前には絶対負けん」
「「「「「に、ニげろーー!!」」」」」
「「「「「ギャウギャウ!?」」」」」
「……何か儂らが悪人みたいだな」
「仕方ないですよ……依頼ですから」
師匠、分かっていても言っていいことと悪いことがあるんじゃないか?
「……ふぅ、これで依頼は終わりだな」
「本来は決して1日で終わる依頼じゃないと思いますけど……流石です、イルガ様っ!!」
俺達は蛮族を倒した証として30人分の死体を依頼の際に貰った空間拡張ポーチに詰め込んで一息付く。
元々あまり早い時間帯に来ていないせいで既に空は茜色に染まっていた。
「ん、私が早かった」
「いや、俺の方が完全に早かったな」
「違う、絶対私」
「絶対それはない。俺だ」
「おい弟子達。いい加減下らん言い争いをやめて野宿の準備を手伝え」
俺とセニアでどちらがノルマ達成まで早かったか議論していると、師匠が呆れたようにため息を吐いて俺とセニアの頭を叩く。
決して本気ではないのだろうが、世界最強の闘士である師匠の頭叩きは、俺達が頭を抱えるほどに痛かった。
「〜〜〜っ、何するんですか、師匠!」
「…………暴力、反対」
「黙れ。そうギャアギャア騒がれたらまた新たな敵が来るだろうが。何度注意したら分かるんだ、この馬鹿共ッ!!」
「「…………すいません」」
完全なる正論に、俺もセニアも何も反論することが出来ない。
一気にシュンとなった俺とセニアは、トボトボとテントを張る作業に取り掛かる。
「「……絶対
「お前ら……いい加減にしろよ……」
「あの……ご飯出来ましたよ?」
「「食べよう」」
「ちょっ、待て! お前らには一回しっかりと野宿の心得を……!!」
焚き火の横でご飯を作っていたサーシャの下に走る俺達を師匠が追い掛ける。
こうして楽しい時間が過ぎて行った。
まるで……家族と過ごしているような、そんな時間が———。
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ごめんなさい、普通に投稿忘れてました。
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