第29話 蛮族の誘い出し方
「———それじゃあ行くか」
「待て待て待て、イルガ! そもそも何故師匠である儂が、お主の依頼を手伝わないといけないんだ?」
転移石を使って修行をした森に戻って来た俺とサーシャは、早速師匠とセニアに事情を説明して手伝って欲しいことを告げた。
しかし、師匠はどうやらあまりこの森を出たくないようで、渋っていた。
「俺だけじゃ勝てない可能性が高いからですけど? セニアも付いて来てくれよ」
「ん、分かった。久し振りに森から出れるから行く」
こうしてセニアも味方に加わり、3人で師匠に目を向ける。
始めは視線を気にしないように薪割りをしていた師匠だったが……流石に10分以上も見つめられるとは思ってなかったらしく……。
「……はぁ……分かった、儂の負けだ。儂もついて行けばいいんだろ?」
「そうですね……もしも俺たちが危なくなった助けてくれるだけでいいです」
そう、今回師匠にはついて来てもらうものの殆ど何もして欲しいことはない。
さっき言ったことくらいで、あくまでサーシャを安心させるために呼んだだけだ。
「はぁ……それじゃあさっさと行くぞ。儂も暇じゃないんだ」
「「それは嘘」」
「お前ら弟子のくせに師匠を弄るな」
「あ、あの……早く行った方が……」
そんなわちゃわちゃした雰囲気は、現場に着くまで続いた。
「———い、イルガ様……噂は本当だったのですね……」
サーシャが目の前に広がる枯れ果てた大地を見て恐怖に身を縮こませる。
まぁ確かにこれなら恐怖を感じるのも何らおかしくなく、俺はゲームでうんざりするほど見たことあるが……実際に来てみて改めてこの場所がヤバいことを再確認した。
木は枯れて枝のように細くなっており、少し触れればあっさりポッキリと折れる程に脆くなっていた。
土もカサカサで、まるで何十年も雨が降っていないような感じだ。
夜ここに来たら間違いなくお化け屋敷なんかより100倍は怖いだろうな。
「ん、どうやって探す?」
セニアが相変わらず何を考えているのか分からない表情で尋ねてくる。
ただ、聞いているのはおそらく蛮族をどうやって探すのか、ということだろう。
確かにこの広大な土地の中で探すのは中々骨が折れる———なんて思うのは素人のみ。
俺のような何周もした廃ゲーマーであればこの土地の蛮族を探し出すのくらい朝飯前である。
「これを使う」
「……何、それ?」
セニアが首を傾げて、俺の手にある血が入った袋を見る。
「人間の血だ」
「ん、ついにおかしくなった?」
「至って俺は正常だ」
少し見とけ、とだけセニアに伝えてその血の入った袋を破く。
途端に地面へと大量の血が流れ落ちて乾いた大地を赤く染めていき……遠くから地響きが鳴り始めた。
そして少しすると———。
「「「「「グルルルルル……!!」」」」」
「ガガガッ! ニクだ! オレタチのモトにニクがやってキたぞ!」
「ヒサしブりのニンゲンのニク!! ヤハくあいつらコロしてクう!!」
「「「おおおおおおおおおお!!」」」
5体のヘルハウンドと呼ばれる炎の犬に乗った『蛮族』と呼ばれる人間とは別種でありながら人間と殆ど同じ言葉を使う特殊な種族の者達が現れる。
蛮族は腰に動物の皮を巻いているだけで、あとは全部裸であった。
コイツら、まんまと俺が先程流した血に釣られて来たわけか。
これが———死の鎌を自ら首元に添える行為だとは知らずに。
俺はぞろぞろとやって来た蛮族達を背に、3人にドヤ顔をする。
「どうだ? 直ぐだったろう?」
「ん、凄い。これなら、楽。まだ後ろにも沢山来てる」
「ほぉ……歴戦の冒険者みたいな戦法を使うな、イルガは」
「す、凄いですっ!」
サーシャは相変わらずキラキラした瞳を此方に向けており、珍しくセニアがまともに褒めてくれる。
師匠は案の定知っていたらしい。
さて……蛮族退治と行きますか。
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