第25話 随分と豪華じゃないか

「———ここは……」


 ドラ◯もんみたく引き出しの中に入れば、タイムマシン……と言うわけではなく、公立学校の体育館程度の大きさの空間が広がっていた。

 その空間の壁にはびっしりと本棚が敷き詰められ、3分の2程度が本で埋まっている。

 空間の真ん中にポツンと1つだけ机と椅子、ランプが置いてあった。

 部屋はランプ以外の灯りがないせいで全体的に薄暗い。


「これは……」


 本棚に入っている本を適当に取って開らけば……歴代の暗殺記録が書いてある。

 今俺が見ているものは約300年前の依頼内容だった。

 

「……ただの無名な暗殺者集団かと思ったんだがな……」


 実際それ程の強さではなかったし。

 いや……ここ100年で弱くなったのか。


 見てみれば、1番古くて約500年前の記録があり、記録された本が多いのは約400年前〜約250年前で、数万冊は裕に超えるだろう。

 しかし、200年前から徐々に減っていき……ここ100年間の記録はたったの11冊。


 ……通りでゲームでは無名なわけだ。

 暗殺者とはそもそも表舞台に上がることがない上に、もう100年以上衰退してんだからゲームに出るわけないわな。


「さて……俺の暗殺記録を探すとするか」


 持っていた本を戻して1番新しそうな本を手に取る———とここで突如、全ての本棚の前に柵が落ちて来た。

 勿論俺の手にも当たったが……まぁすぐ治るので問題ない。

 問題があるとすれば———。



『『『シンニュウシャ、ハイジョスル』』』



 目の前に現れた、3体の上級ゴーレムについてくらいか。


 上級ゴーレムの特徴でもある、3体ともまるで人間そのもののような見た目に当て嵌まり、動きも普通のゴーレムに比べて滑らかであった。

 そして大きさも人間と大して変わらない。

 

「確か上級は……B級程度だったか?」


 ただまぁ……苦痛を感じないというのは案外厄介なものである。

 確実に破壊しきらないとどんな状態でも攻撃してくるって事だからな。


 3体のゴーレムは怪しく瞳を赤く光らせ此方に近付いてくる。

 手には各々剣を持っていた。


「全員近接系か……ラッキーだな」


 笑みを浮かべた瞬間に軽く地を蹴る。

 一瞬にして1体のゴーレムの懐に入ると、力を加減しながらゴーレムの膝を破壊。

 『ドガッ』と言う破壊音と共に倒れるゴーレムの心臓部付近を貫手で貫いて魔力核を砕き割った。

 途端に目の赤い光が消える。


『……』

『『003ノマリョク……カンチフカ。カクヲハカイサレタモヨウ。タダチニシンニュウシャヲハイジョスル』』


 そういうと同時に1体が俺へと接近、もう1体が剣を取り込んで腕を銃に変形させ、無数の魔力弾を放ってきた。

 蒼い魔力の砲弾と煌めく斬撃が常人では反応出来ない速度で俺へと迫る。

 だが……。


「———無駄だ」


 俺は振り下ろされた剣を片手で掴み、もう片方の腕を使って魔力弾を全て跳ね返す。

 

「ククッ、お前らなんぞ、師匠とあの森のモンスターに比べれば雑魚も同然なんだよ」


 俺は掴んだ剣を振り回してゴーレムを上空に打ち上げると、魔力核のある心臓部を指輪から変化させた小刀を投げて破壊し、ゴーレムが落ちてくる前に腕を砲弾に変えたゴーレムノ心臓部を思い切り殴って吹き飛ばした。


 ゴロゴロ……と意思を無くしたかのように崩れ落ちるゴーレム達。

 

「ま、こんなものか」


 俺は手に着いた汚れをパンパンして払い、本棚の前にある柵を無理矢理引っこ抜く。

 そこまで力を入れていないが、重さ数百キロは余裕でありそうな柵があっさりと持ち上がった。


「うわっ……これはもう人間じゃないだろ」


 自分でやっていながら、自分でドン引きすると言う奇妙な光景だ。

 ただ、改めて俺のチートボディが如何に凄いかが分かるな。

 

「さて……この前の盗賊狩りで手に入れた魔法鞄で……」


 此処からは完全に手作業だが、必死こいて数万冊に及ぶ本を1つ1つ入れて行く。

 この後この店は破壊するので、全部持って行ってしまおうと言う魂胆である。


「……こう言う時、サーシャが居たら楽なんだろうな……」


 今も目を光らせて暗殺者を見張っているであろうサーシャを思い浮かべながら、死んだ顔で終わりの見えない作業に取り掛かった。


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