第23話 反撃

「———チッ……本当に面倒臭いな……」


 俺は11人目の暗殺者を倒して大きくため息を吐いて辺りを見回す。


 まだゼロを逃して1週間も経っていないが、既に俺やサーシャに向けて暗殺者が何人も送られてきている。

 しかも、どんどんと相手が強くなっている気がする。


「い、イルガ様……」

「ああ、もう大丈夫だ」


 現在、サーシャは新た同じ部屋で寝泊まりをしている。

 俺の部屋ならば、寝ていても必ずサーシャを護れるからだ。


 勿論、この世界の俺を脅かしかね無い暗殺者は———1人いる。

 だが心配は無用だ。


 その者は既に主君がおり、俺達マジックロード家はおろか、俺達の住まう国とは全く縁もゆかりもない所で暮らしている。

 そもそもその主君も、マジックロード家の子息程度が手を出せる地位でもないしな。



 ただ———そろそろ此方も反撃と行こう。



「サーシャ」

「はい、今回の相手はだいぶ上層部だったらしくて……無事、本拠地の場所を特定出来ました! やはり、今まで壊滅させた所はあくまで手先だったようです……」

「そうか。まぁそうだとは思っていたがな」


 俺達も勿論ただでやられていたわけではない。


 襲撃して来た暗殺者の記憶から、奴らが来た場所を特定して襲撃をしていた。

 既に3つもの場所を壊滅させたが……今のようにまた新たに暗殺者が送り込まれて来ていたのだ。


「ただ……それも今日で終わりだ……! サーシャ、準備はいいか?」

「も、勿論ですっ!」


 そう言いながらもわたわたと敬礼をするサーシャ。

 相変わらず愛くるしいな……と頭を撫でた後で脇腹に抱え込む。

 すると、サーシャが遠慮がちに俺のお腹に触れて、魔法を発動。

 

「【ハイエンチャント:オールアップ】」


 半年の修行で習得したサーシャの全部乗せ付与魔法を受けると……俺は全力で部屋の窓から飛び出した。











「ここか……」

「は、はい……おそらくは……」


 俺の家から離れること約300キロ。

 隣町のそのまた隣町をさらに過ぎた隣町である地方都市『ハザール』へとやって来た俺達は、夜にも関わらず騒がしい商店街的な場所にやって来ていた。

 道端には酔い潰れた冒険者や商人が多数存在している。


「…………臭いな」

「え、エンチャントしましょうか……?」


 俺が思いっきり鼻を押さえて顔を顰めるものだから、サーシャが心配してそう申し出てくれるが……それを断る。


「いや、サーシャの魔力は自分の身を守るのと……」

「周りへの被害の縮小、ですねっ……!」


 先に言われた俺は、成長したサーシャの姿にふっと笑みを浮かべる。


「ああ、その通りだ。頼んだぞ、サーシャ」

「はいっ!」


 即座に自分に【ハイエンチャント・オールアップ】を付与し、さらには【ハイエンチャント・ステレス】を重ね掛けしてスッと消える。

 対する俺は、そのまま目的地である1つの酒場へと向かった。

 

 酒場は何処にでもありそうなこぢんまりとした外観、程よく詰まった客の数、陽気で乱暴な雰囲気など、他の場所と何ら変わら無いように見える。


 そう———あくまで外見だけは。


 チリンと鈴が鳴って、俺が入ったことを店員に伝える。


 慌てて店員がやった来たが……強い。

 最後に相手をした暗殺者と同程度だろう。

 しかも、そのレベルが店員も客にも何人も混ざっていた。


「……相当強大な組織だな」

「いらっしゃいませ! 何名様ですか?」


 こちらにやって来た店員が、にこやかな雰囲気と表情を貼り付けて話し掛けてくる。

 その笑顔の下で無情にも人間を殺していると考えると、反吐が出るな。


 そんな店員に……俺は笑みを浮かべる。



「———少し、ここを破壊しに来た」



 瞬間、俺は記憶にあった顔の店員の首を小刀に変形した【万変武具】で斬り飛ばす。

 同時に近くにいた酒を飲んだ奴と店員が襲い掛かってきた。


 恐ろしい判断力だ。

 仲間が死んだというのにこれっぽっちも意識し無いとは恐れ入った。


 だが———俺には通用しない。


「っ!?」

「ぐっ……」


 素早く地面を蹴って跳躍すると、彼らの上を飛んで脳天に拳を突き入れる。

 地面に2人の暗殺者が叩き付けられた。


 俺は地面に着地すると……。



「———おい、お前らのボスを呼んでもらおうか」



 ニヤリと笑みを浮かべながら告げた。


————————————————————————

 ☆☆☆とフォロー宜しくお願いします!

 執筆の原動力になります!  

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る