第20話 じ・ん・も・ん☆

「———さて、お前の所属と誰からの差し金か教えてもらおうか」

「…………」


 俺は、研究室の子供ドラゴン用の鎖に繋がれた暗殺者に問い掛ける。


 因みにコイツ、物凄く弱かった。

 どのくらいかと言えば……俺>>(越えられない壁>>執事>>>>>>暗殺者くらいの強さだ。

 あの執事はしっかりと受け身をとって自分の被害を最小限にしていたが……コイツ、俺が回復ポーション使わないと死んでた。


 全身の骨が粉砕骨折してて、血反吐吐いてぶっ倒れた時はマジで焦ったね。

 折角の証拠人なのに危うく死んでしまうところだったんだし。 


 これには、猛毒ポーションと間違えて間違えて高級回復ポーションを持って来たサーシャのドジっ子具合に感謝だ。 

 そのサーシャは現在俺の部屋の掃除をしている。

 多分このレベルの暗殺者なら、サーシャのぶっ壊れ付与魔法で瞬殺だと思われるので、1人でも問題ないという判断だ。


 俺は鎖に繋がれた暗殺者を見下ろす。

 今は綺麗に治っているが、頭と首以外の全ての骨が折れたせいで、心も完全に折れているらしく、抵抗されることなくあっさりと口を開いた。

 まぁ敢えて弱い回復ポーションでちまちまと治したから、というのもあるだろうが。


「我らは『月光』と呼ばれる組織……アーケイン伯爵家からの依頼だ……」

「ほう……えっと……」

「シンフォニア様の家だ……」

「ああ……ゲイルの母親の実家か」


 そう言えばゲイルの母親ってそんな感じの名前だったな。

 それに『月光』なんていう暗殺集団は知りません。

 ただ、この程度は秒で分かる。


 依頼主が予想通り過ぎて、無駄に回復ポーション使ったかな……と思っていると、少し興味深いことを話し始めた。


「アーケイン伯爵家は……私を除いて、刺客を後5人送っている……」

「……何でお前が知っているんだ?」


 こんな弱い奴が流石にリーダー的存在とかなわけないと———。


「———私が今回の暗殺部隊を率いるリーダーだからだ」


 前言撤回。

 どうやらコイツ、リーダーらしい。

 多分師匠の下で修行した俺、サーシャ、セニアが強くなり過ぎて……イマイチ他が弱く見えてしまっているのかもしれない。


「おい、今もサーシャを殺そうとしているのか?」

「いや……私の命令で帰らせた。もっと上の人間を頼む、と……」


 つまり……コイツらじゃ俺どころかサーシャも殺さないから、もっと強い奴を呼んだと言うわけか。

 何と面倒なことをしてくれるんだ。


「もう……俺に話すことはない」

「あ、そう」


 だろうね。

 逆にこれ以上情報を持ってた方が怖いわ。


 さて…………コイツ、どうしようか?











「———イルガ様っ、終わりました!」

「ああ、ご苦労様。随分と綺麗になったな」

「はいっ! 頑張りました!」


 俺は暗殺者を解放した後で部屋に戻ると、サーシャがピカピカの部屋で機嫌よく立って待っていた。

 

「サーシャ、特に異常なかったか?」

「はいっ! 【ハイエンチャント・マジックアイ】で確認しましたが、どの魔法の存在も感知できませんでした! 勿論魔道具なども置いてありません!」

「よし、良くやった」


 俺はサーシャの頭の撫でながら、今後のことを考える。

 

 あの暗殺者を解放したのは、勿論俺と向こうとで二重スパイをして貰うためだ。

 ま、俺からすれば、死体の処理が普通に面倒なので逃したという部分が大きいので、成功しようがしまいがどちらでも良い。

 アイツが仮に裏切ったとしても、大した害にはならないからな。


「それよりは……今度新たに来るとかいう暗殺者についてだが……」


 何となく、チートボディの俺は暗殺者程度には負けない気がする。

 例え毒を使われようが今は大体のモノは免疫付いているので効かないし、首を斬られるにも、多分そこら辺の上物の短剣程度では薄皮1つも切れないと思う。

 我ながら何とも不気味なことだが、多分本気で俺を殺すなら魔性武器や聖性武器を使わないと無理なんじゃないか?


「ま、魔性武器とか聖性武器を持っている暗殺者系統の人間なんてこの世に1人しか存在しないがな」


 そう、セニアである。

 アイツは暗殺者というよりは盗賊寄りだが、アイツがゲーム中盤で魔性、聖性唯一の短剣型聖性武器の封印を解いて手に入れるのだ。


 つまり、この世に俺を殺せる暗殺者は存在しない。

 サーシャは……常に俺が見張っておくしかないだろう。


「ふぅ……俺もそろそろ仕掛けないとな」


 俺は取り敢えずゲイルを潰す策を練り始めた。

  

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