第18話 説得
「———バレてましたか」
「クククッ、我の目は誤魔化せん」
マジか……師匠が、まず滅多なことがなければお前の魔力が無くなったとはバレないとか言ってたから安心してたんだが。
つまりこれは魔力を対価にした俺が9割、師匠が1割悪いと言うわけか。
俺がバレたことに若干焦りながらも、それを表には出さない様に取り繕う。
そんな俺に、先程までの笑みを消して無表情となったバルガスが重々しく尋ねてくる。
「して……イルガ。お前はこの家が何なのか分かっているのか?」
途端に、暴力的なまでの魔力の奔流がバルガスを中心に巻き起こった。
机の上にあったら料理や食器などは、全て吹き飛ばされる。
更に使用人の中には、バルガスの魔力に当てられて気絶する者が多数現れた。
こ、この狡猾陰険なジジイ……何が『もう歳だ』だよ……!
全然元気じゃねぇか……!
ただ、ここで気圧されてはダメだ。
ここで主導権を握られると俺は詰む。
「アンタ、受け身取れるよな?」
「勿論とれますが———っ、ガハッ!?」
俺の言葉に訝しげに答えた男だったが、俺は間髪入れずに椅子を引いて男の鳩尾に拳を突き入れた。
あまりの衝撃に、男はボールの様に弾き飛ばされ、壁に激突して気絶。
そして俺は地面に落ちた短剣を拾い……チートボディの膂力であっさりと握り潰した。
「「「「「「っ!?」」」」」」
「ば、バカな……!? あのイルガが素手で剣を破壊するだと……!?」
場の雰囲気が騒然とする。
ゲイルなどは目が飛び出そうなくらい驚いており、マイロンやその母親すらも、俺の短剣破壊には軽く瞠目していた。
そしてこのパフォーマンスには、バルガスでさえも固まっていた。
そんな中で俺は、あくまで余裕があると思わせるために敢えてニヤリと笑みを浮かべて腕を組む。
「勿論分かってますよ。この家が魔法名家であることくらい」
「ならば———」
「———しかしですね、当主様。巷でマジックロード家がなんて言われているか知ってますか? 『魔法だけの軟弱名家』ですよ?」
俺のそんな、下手すれば侮辱罪とも取れる挑発的な言葉に、バルガスの眉がぴくりと動く。
よしよし知っている様だな。
しかも結構気にしてるな。
俺は内心ガッツポーズをする。
バルガスが子供や妻達のことよりこの家のことを大事にしていることなど誰もが知る周知の事実だ。
それも手段などはどうでも良く、マジックロード家が栄えるのならそれでいいらしい。
つまり、バルガスに我が家に利益があると思わせれば、魔力なしとなった俺でも処罰を受けず、当主戦に参加できると言うわけだ。
「……何が言いたい?」
「いえ特には。ただ……そろそろ『魔法だけ』という汚名は返上した方がいいのではないですか?」
「……ふむ、それで?」
どうやら俺のお話を聞いてくれるらしい。
やっぱりバルガスにとっては家の話が弱点だったか。
バルガスの戦闘能力については詳しくファンブックの方にも載っていない。
だが、今もなお溢れ出ている魔力から考えるに……今の俺では全力を出したところで倒すのは少し難しいと考えた。
よって、俺は切り札を出す。
「実は俺———【闘神】の弟子なんですよ」
その言葉に再び場が騒然とした。
「———【闘神】の弟子……と言うのは本当なのか?」
「勿論ですよ、マイロン兄上。その証拠に……」
俺は指輪型の武器を長剣に変化させる。
一瞬指輪が光ったかと思うと、次の瞬間には指輪が消えて俺の手には鉄の剣が握られていた。
いきなりの俺の行動に、マイロン達からは困惑の声が漏れる。
まぁ確かに【闘神】の弟子であることを証明するのに何故か剣を出したらそうもなるだろう。
しかし———この場で1人、この意味を分かる人間がまだ残っていた。
「……それは……」
「どうです? 当主様なら見たことあるのではないですか? 戦争に参加していた当主様だからこそ。嘗て【闘神】が使ったとされる変幻自在の武器———【万変武具】の存在を」
そんな自信まんまんな俺の言葉に……バルガスは小さくため息を吐いた。
「……今回の件は不問とする。我に文句のある奴は言ってみるがいい」
「「「「「「…………」」」」」」
誰も反論する様子はなく……こうして俺は何のペナルティーもなく不問にされたのだった。
やっぱり師匠、強かったんだなぁ。
俺は何故かとても誇らしくなった。
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