第10話 いざ、世界最強の戦士【闘神】の下へ

 3日が経ち、俺とサーシャはとある森にやって来ていた。

 

「うわぁ……木が大っきいです……っ!」

「そうだな。流石に『巨木群』と呼ばれるだけあるわけだ」


 俺達の周りには、最低でも高さ30メートルは裕に超えるであろう巨木達が立ち並んでいた。

 その分この世界を照らす恒星イオの光は巨木達によって遮られ、光は僅かな木漏れ日のみで真昼なのにとても薄暗い。

 だが、チートボディの俺は勿論のこと、サーシャは攻撃魔法こそ苦手だったものの、付与魔法が得意なため、【ナイトアイ】によって真昼と殆ど変わらぬ程度に見えている。

 まぁ今は真昼なのだが。


「それにしても……転移石は一度しか使えないのか」


 俺は手元で光を失った楕円形の石を見つめて落胆する。

 先程サーシャも「ああ……!? も、勿体無いです……」と思いっ切り零していた。


 いやほんと、この石1つで数千万円はマジでぼったくり過ぎではないだろうか。

 確かに便利だけど……たった1回しか使えないとか殆ど片道切符みたいなものじゃん。


 その内サーシャには、絶対空間魔法の最高ランクの【転移】を覚えてもらおう。

 攻撃系統の魔法ではないので、恐らくサーシャなら覚えられるはず……。

 じゃないと本当に金が幾ら有っても足りなくなる。


「サーシャ、あまりはしゃぐなよ。此処のモンスターは化け物だらけだからな」

「あ、はいっ! つ、つい物珍しくて……」


 まぁサーシャは幾らしっかりしているとは言えまだ7歳だし、はしゃいでしまうのも仕方ない、か……。

 此処は相当に珍しい場所だしな。


 此処のモンスターの強さはストーリー終盤レベルでも、下手すれば全滅もあり得る程。

 幾らチートボディとは言え、サーシャも居るし気を付けながら行こう。


 本来なら、サーシャは置いて行くつもりだった。

 だが、どうしても一緒に行くと言って聞かないし、彼女の付与魔法は相当使えるので仕方なく連れて来たのだ。


「サーシャは常に自分に付与魔法を掛けとけよ」

「はいっ!」


 俺達は【闘神】の住処へと先を急いだ。

 











「———流石に全く戦わない、と言うのは不可能だったか……」

「い、イルガ様……!!」


 俺は全身から冷や汗を垂らしながら、俺の背中にサーシャを隠して零す。

 そんな俺達の目の前には、地球の黒豹を3倍くらいに大きくした様な見た目のA級モンスター———ブラックサーベルがまんまと獲物がやって来たとばかりに涎を垂らしていた。


「ガルルルル……」

「……サーシャ、付与魔法を掛けろ」

「は、はいっ! 【エンチャント・アーム】【エンチャント・アーマー】【エンチャント・ヘイスト】!!」


 俺の身体が赤・青・緑に一瞬光った後、身体が軽くなった感覚が生まれる。


 流石にサーシャが居る場面でほんの少しの油断何か出来るわけねぇからな。


 しかも相手はトロールなどと比べ物にならない強敵。

 再生能力こそないものの、全体的な身体能力は勿論、何よりもヤバいのが知能と戦闘センスが段違いに高いことだ。

 『森の狩人』の二つ名で呼ばれ恐れられるだけあり、人間並みの知能を持ち、戦術も巧みに組み立てて動く。

 

 多分、今の俺だけだと勝てない。


「ま、俺だけなら、の話だけどな」


 誰にも聞こえない程度の声量で呟き、一気に駆け出す。

 一瞬でブラックサーベルの間合に入ると小刀を素早く抜刀。

 些か俺のスピードにはブラックサーベルも驚いた様で、慌てて回避行動を取って俺から少し離れる。


「やっぱり避けられるか……だが、まだまだ行くぞ!」


 地面を片足で踏み締めて軸にして身体を捻って方向転換すると、懐から短剣を取り出して即座に投擲。

 唯一練習していた投擲は寸分違わずブラックサーベルの下へと向かうもあっさり叩き落とされた。

 しかしその隙に俺はブラックサーベルの下に辿り着いていた。


「はッッ!!」

「ッ!?」


 俺が全力で小刀を振るうと、今度は避けられずに前足を切り裂いた。

 パッと鮮血が舞う。

 しかし残念なことに傷は浅く、ブラックサーベルはまだまだ余裕そうに俊敏な動きで再び距離を取った。

 

「……チッ、面倒だな」


 今のはマジで倒すつもりで振るったんだけどな……やっぱり身体能力だけじゃ、A級モンスターを倒すのは厳しいか。

 てか、こんなモンスターを片手で捻るように殺す未来の主人公とか【闘神】が異次元なんだよな……。


「ガルルルル……ガァアアアアアア!!」


 俺がゲンナリしていると、今度は向こうから接近してくる。

 

 いや速すぎ———!?


 俺はチートボディのとんでも反射神経でギリギリ避けると、苦し紛れに短剣を投げる。

 しかしこれまたあっさりと躱されてしまった。


「おいおい、天下の『森の狩人』が素人1人狩れないなんてだらしないな」

「……ガル」


 俺がニヤリと笑って煽ってみるも、全然かかってくれない。


 何だよこいつ……てかまだか?

 早くしてくれ……もう絶賛押されているんですけど……!


 俺は【エンチャント・ステルス】で隠れるサーシャを意識しないようにしながら再び小刀を構える。


 どうせこの構え1つでも、達人から見れば全然ダメダメなんだろうな……。

 

「さて……もうひと頑張りするか」


 俺は意識を切り替えて駆ける。

 対するブラックサーベルも俺を噛み潰さんと飛びかかって来た。


「ガルァアアアア!!」

「———ばーか」


 互いが接触する刹那、俺はニヤリと笑みを零し———小刀を捨てた。

 そして俺の奇行に一瞬隙を作ったでブラックサーベルの頭を、空いた両手で挟むように掴んだ。

 しかし、ブラックサーベルも俺を押し倒さんと肩に前足の爪を食い込ませる。


「グルルルルル———ッッ!?!?」

「ぐ、ぐぅぅぅ……ぁぁぁあああああ!!」


 肩に爪が食い込む痛みと後ろに倒されそうになるのを気合いと体幹で耐え、思いっ切り頭突きを食らわせた。

 頭を掴まれたブラックサーベルは、俺のチートボディの膂力によって脱出することは叶わずモロに食らってよろけた。


 今だ!!



「サーシャ!!」

「———【ショックウェーブ】!!」



 【エンチャント・ステレス】で隠れていたサーシャが魔法を唱える。


 発動したのは魔法使いなら誰でも覚えられる初級魔法の【ショックウェーブ】。

 ただ大きな音を出して衝撃波を起こすだけの魔法で、殺傷力は皆無だが———。


「ガルァッッ!?!?」


 その衝撃波は、人の何百倍も耳のいいブラックサーベルの鼓膜を一瞬で破裂させた。

 脳震盪によるふらつきと、耳を破壊されたことによる平衡感覚のズレにブラックサーベルは立っていられない。


「ふっ———」

「ガァッ———」


 俺は直様小刀を拾うと、トロール同様全力でブラックサーベルの頭部に突き刺した。

 刃渡り30センチが全て埋まるまでチートボディの怪力で無理矢理突き刺す。


 小刀を引き抜けば大量に血が噴き出した。

 ブラックサーベルはぴくりとも動かない。



 俺達は———A級モンスターの討伐に成功した。


 


 







「……ほう、中々の逸材だな」





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