第4話 試してみよう!

「———うっ……いってぇ……」


 頭を押さえ、ゆっくりと起き上がる。

 未だ頭がぼーっとする。

 何だか視界も『ぐわんぐわん』と言う効果音がピッタリな程揺れていた。


 気持ち悪りぃ……いや、吐き気はないけど。

 何か……寝過ぎて気持ち悪いみたいな感じだな……。


「今何時だ……?」


 俺は、予め設置しておいた時計を確認。

 因みにその時計は日付と時刻を教えてくれる高級な魔導具だが……何か貰った。

 と言うより、兄貴が捨てたものを拾ったと言った方が正しいかもしれない。

 

 イルガにあの父親達が何かを上げるとは到底思えないしな。

 ま、それはそうと……さてさて、一体どれくらい時間が経って…………は?


 俺は時計の日付を見て思わず三度見する。

 そしてわなわなと震えながら呟いた。


 

「———もう1週間経ったのか……!?」



 そう、俺が願いを唱えて寝ている間に1週間が経っていたのだ。

 俺の予想では最高でも3日程度だと考えていたので、流石に驚きを禁じ得ない。


 いや、こう言うのってさ、3日なのがお決まりじゃん。

 何で1週間丸々寝てんだよ。


 ただ、念のため1週間とサーシャに言っておいて本当に良かった。

 もし3日にしてたら、幾ら俺が他の兄弟に劣るとは言え、流石に大騒ぎになっていたかもしれない。

 それに……。


「今家族に会うのは危険以外の何物でもないからな」


 もし願いが叶っているなら(叶っていないと困るのだが)俺は魔力ゼロになった筈だ。

 そしてこの家はどれだけ人間が腐っても対外的には世界を代表する魔法名家なので、サーシャ以外に『魔力なし』がバレるのはまだ避けたい。

 仮にバレれば……一先ず追放は避けられないだろうし、下手すれば家門の恥として殺されることも十分に有り得る。

 

「流石のチートボディでも、水の中に水没させられたら死ぬだろうしな———ってそうだよ! 俺の身体、ちゃんとチートボディになってるか確認しないと!」


 俺は逸る気持ちを抑えながら、一先ず何処かに落ちでいるであろうペティーナイフを一瞬で探し出す。

 そして見つけた包丁で、試しに掌を切ってみる。


「い"ッ———たくなくなったな」


 一瞬掌に強烈な痛みが走るも、10秒もすれば痛みは完全に引き……掌には血こそ付いているが、傷自体は既に綺麗さっぱり無くなっていた。

 だが、これだけでは、本当にチートボディになったのか確信が得られない。

  

 俺が平均より1000倍もの魔力を注ぎ込んだんだから、最低でも常人の1000倍の身体機能がないと満足しないぞ。

 しかし、取り敢えず再生能力はそれくらいありそうなのでよしとしよう。

 次は……。


「お、これくらいが丁度いいか」


 俺は埋もれていたA級モンスター捕獲用の睡眠剤と麻痺毒を手に取る。

 2つとも人間が飲めば、最低でも数年は余裕で効果が持続するであろう、世界で見ても最高レベルに強力な物だ。

 麻痺毒なんかは人間が使えば心肺停止で死んでしまうだろうが。


 因みにA級モンスターの代表格は、グリフォンや生まれて100年以内のドラゴン、ブラックワイバーン、オークエンペラーなどで、肉体機能や能力で人間は世界が反転しても勝てそうにない相手だ。

 仮にこれが標準の効果時間である2時間より早く効き目が切れれば……俺の免疫力がA級モンスターより上だと証明される。


「睡眠剤は……また寝るのはな」


 そっと睡眠剤を元あった場所に戻す。

 そして10gで効果が現れる麻痺毒を、10gスプーンで掬って……食べる。


「ん"ッ!? ん"ー、ん"ー!」


 舌に触れてから最初に口、それからどんどん全身に向かい……僅か十数秒で、全身が完全に動かなくなった。

 声は『ん"ー』程度なら出せるし一応苦しいが呼吸も出来るので死なないと思うが……全身の感覚は全くない。

 当たり前だが一ミリも動けそうにもない。


 ……あー、暇だけど待つか……。

 暇つぶしとかにアニメとか映画がこの世界にあれば良かったなぁ……。


 俺は若干麻痺毒にしたことを後悔しながらも、取り敢えず効果が切れるのを待つことにした。











「———ククッ、最高だ……まさかこれ程のチートボディが手に入るなんて……!!」


 僅か30分程度で完全に動けるようになった身体と、更に2回目からは僅か数秒で動きが元に戻るようになったことに、俺は成功を確信して、感動のあまりガッツポーズを決める。


 麻痺毒の効果時間が著しく減ったのは、恐らく俺の身体が先程の麻痺毒への免疫を手に入れたからだろう。

 そしてその免疫は最低でも常人の1000倍の効果を持つ。

 

「つまり……この世界のありとあらゆる毒とか状態異常の魔法を食らえば食らうほど、俺の身体に耐性ができるわけだ。それに俺の身体の再生能力があれば死ぬことはないだろうし……ふっ、最高だな」


 文句なしの大成功。

 これで俺はもう『もやし』と呼ばれることは無くなったのだ。

 寧ろ、世界の生物の中でも上位の身体機能を手に入れたと言っても過言ではない。


「ま、筋トレとかは必要だと思うけど」


 何なら、前世では筋トレなど絶対に出来なかったのでやってみたいまである。

 ムキムキマッチョは嫌だが……それなりに筋肉は欲しい。


 俺が人生で初めて輝かしい未来について考えていると……50メートル先にサーシャが現れた。


 ———50メートル先にサーシャが現れた?


「いや、え……何で分かるんだよ……?」


 もしかして第六感的な物まで強化されているのか?

 いやまぁ……身体能力を向上させて欲しいって願いだから当たり前と言えば当たり前なんだが……。


 俺は、あまりの強化具合に半笑いになりながら、しっかり命令を遂行してくれたサーシャを逆に迎えに行った。

 

 ノックする前に声を掛けたせいで、物凄く驚かれたのは言うまでもないだろう。

 

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