不機嫌な彼女 vs アキネーターおじさん

ちびまるフォイ

幸せなふたりの門出

「もう信じられない!!」


「そう怒らないでくれよ。

 せっかく結婚の話をしていたってのに」


「だからこそよ!

 どうして私が不機嫌なのかもわからないの!?」


「そ、それは……」


「付き合うときに言ったよね!?

 理想の夫婦はお互いになに考えてるかわかるのがいいって」


「たしかに言ったかもしれないね……」


「私が結婚するのは、私の気持ちをわかってくれる人だけ!

 なのに、私がなんで怒っているかすらもわからないの!?」


「……ご、ごめん」


「謝ってほしくない!

 私はわかってほしいだけ!!」





「そうだよね、だからアキネーターおじさんを呼んできたよ」


「ランプの魔人アキネーター。どうぞよろしく」



「いや誰よ!?」


「はっはっは。私はアキネーター。

 どんな人間の考えもぴたり当ててしまうよ」


「ふん……。彼氏すらわからなかったのに、

 あなたのような他人になにがわかるっていうのよ」


「それはどうかな?」

「先生、お願いします」



「こほん、では聞こう。

 あなたが怒っているのは記念日に関すること?」



「当たり前でしょ! このテーブルの食事見たら明らかじゃない!!」



「それは、あなたの誕生日?」


「違うに決まってるでしょ! それくらいなら彼氏で気づくわよ!」



「ペットに関すること?」


「ペットなんかいないわよ!!

 なのに知らないおじさん連れてきたからこっちは言葉もないわよ!」



「今回の記念日は過去にお祝いしたことがある?」


「ないわ」



「どれくらい前からわかる?」


「1年前からこの日であることくらいわかるわ!

 なのにどうして忘れてるのか、信じられない!」



「それは実在する人物の記念日?」


「死んでる人をお祝いするほどバチあたりじゃないわよ!!」



「イケメン? もしくは美人?」


「……それはわからないわよ。人にもよるだろうし」



「他の人も大事な日?」


「そうね。大事だと思うわ」



「それは祝日?」


「ちがうわよ!! どんだけ大規模なのよ!」



「それは……それは……えーっと……」



「ちょっと! このおじさん、ついに質問が底つきはじめたわよ!? 本当にわかるの!?」


「わ、わかるに決まってるじゃないか。アキネーターおじさんなんだよ」




「えーっと、えーっと……それは……うーーん……」



「なによ。やっぱりこのザマじゃない。

 さっきから延々と悩むばかりでちっとも答えに近づいてない。

 

 これじゃ、私がなにに怒ってるかなんてわかりっこないわ」



「それは……怒っていた理由は……」



「もういいわ。あなたなんて終わりよ」





「彼氏が自分の誕生日を忘れたから?」




彼女の顔がぱあっと明るくなった。



「そう! そうよ!! やっとわかってくれた!


 彼氏の誕生日は大事だから私も気合いを入れて

 こうして準備をしていたのに、ちっとも覚えていない!

 

 それどころか飲んできて帰ってくるんだもの!!

 ほんと信じられない!!

 

 でもわかってくれた!! うれしい!! 好き!!!」



そう言うと彼女は熱いキスをして結婚を誓った。




数日後、彼女とアキネーターおじさんの結婚式が開かれるはこびとなった。

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