第8話 新装備
ダレルとヴェリには、木剣でバランスを見て貰う。
先が重いか根元か中間か。
戦闘スタイルは片手か両手か。
ダレルは、スピード重視で、バランス型で細身の七十センチ刀身。ヴェリは一刀両断で、刀身八十センチの先が重め。重さで振り回すようだ。
フフタラの弓と、遊撃用のナイフ。ナイフは僕のより短い三十センチくらいで軽く細身。それが二本。
サンタラの盾と、バトルアックス。
「じゃあ造ってみるよ」
そして、師匠のところで窯を借りる。
ダレルの剣はしなやかな刀身を堅い刃の部分でコートする形。
そうしないと折れる。
ヴェリのは、元々丈夫だからバランス。
フフタラの弓は、金属で弓を作ったら引けなくなった。
考えた末、つるべの滑車を参考に、滑車を変形させて引き始めや保持の時に力が必要ないように調整をする。
「ううん。何とか引ける」
バトルアックスは柄と斧部分でバランスを取る。
扱えそうなら、もう少し斧が重くても良いかもしれない。
盾は複合のハニカム構造。強度は同じで軽い。
「こんなものかな?」
そう思って見ていると、師匠が目を丸くしている。
「何だその妙ちくりんな弓は? 弦は鋼線を編んだのか?」
そう言って引き、妙に軽いことに気がついたようだ。
「ああ、このカタツムリのような、滑車のせいか」
面白そうに、みよんみよんと引いている。
「射ってみます?」
そう言って矢を渡す。
先には返しのある普通の物。
丸太は四十センチ。
距離は五メートルくらい。
近いが仕方ない。
破裂するような音。
驚いている師匠。
放った矢は、近い距離だと言いながら、四十センチの丸太をほぼ貫通。
乾燥していたため、真っ二つにヒビが入っていた。
「こりゃアブねえ」
「そうですね」
師匠が、意匠を申請するそうだ。
金属複合弓。そんな名前で。
そしてみんなに、スライムプロテクターを配り、心機一転。
外へ。
フフタラが弓を引く。
「見た目の割に軽いな」
いつも距離。二十メートルくらいで矢を放つ。
矢は、ボアの額から入りお尻から抜けて、三メートルくらい先の地面に突き刺さる。
「――はっ?」
「「「はぁ?」」」
「ななな、なんじゃありゃ」
みんなが一斉に矢を見に行く。
地面に刺さったせいか、途中で折れていたが、半分は埋まっていた。
グラスボアは、もちろん即死。
「ちょっと、飛距離を見てみろよ」
「あっ、ああ」
周りを探し、はぐれゴブリンを発見する。
「距離幾つだ?」
「さあ三百くらいか?」
「なら限界くらいだよな」
そう言って、かなり上方を狙ってみる。
「はっ」
そう言って、フフタラが矢を放つ。
ゴブリンのはるか頭上を、落ちることなく消えていく。
「「「はぁ??」」」
「もっと下だ」
直接狙う様な感じで放つ。
ほとんど放物線を描かず、スカーンと頭に刺さる。
「こここれ。危ない」
「あーうん。練習をしてね」
そうして、俺達は狩りを始める。
「レオン。そうじゃあねえ。引きつけてスパーンとだ。こうだこう」
うん一生懸命教えてくれるダレル。
俺の相手はゴブリンで、棍棒持ち。
無茶苦茶に、振ってくるので距離が計れない。
「こうだ、こう。こう来たら躱して、スパーンといけ」
スカーンとか、スパーンでよく分からない。
みんなが見守ってくれる。
ゴブリン退治は対人戦の練習になる。
だから、数をこなせと言われている。
この二年素振りとか、体術を習い練習はした。
だから、体力はそこそこ付いているはずだが、実戦だと消耗が激しい。
とくに、空振りの時、押さえが効かない。
振りすぎるから、余計な力がいる。
そしてゴブリンを追いかけるから、余計に体力が必要。
ヴェリは振り回すタイプだけど、ダレルは突っ込み、数歩で距離を合わせて、うん。スパーンと切っている。
確かに、言うとおり、こう躱してスパーンだ。
そして、その日から、特訓を始めた。
ヴェリ達は、二日狩りをすると、一日は薬草採取などをする。
そういうルーティンを繰り返している。
だが俺は、ひたすら狩った。
本当は良くないが、元々鍛冶に行ったり、錬金術に行ったり。
自由行動を許して貰っていた。
だが、めったにいないオークが草原にいた。
そいつは手負いで、ふらついていた。
オークだが、手負いなので、俺はいけると思った。
だが、一般的に手負いは危険だと言われている。
そんなことも知らなかった。
ゴブリンすら、まともに狩れないのに、無謀としか言えない。
まだ一五歳で、体もできあがっていない。
大柄な体。二メートル近くの身長。強力な筋肉。
一かすりで吹っ飛びそうな拳。
その拳が頭をかする。
躱したつもりだったが、狙っていた脇腹を見過ぎて反応が遅れた。
それとも誘われたのか。
オークが笑った様な気がした。
ふらつく俺に、右の蹴りが来る。
駄目だ。
俺は一歩前に出て、その脚を捕まえに行く。
そのまま、五メートル以上拭き飛ばされる。
奴は当然追撃に来る。
ああ。やばい。
相打ち覚悟でナイフを突き出す。
奴の拳は、突き刺す動きで、俺の頭が傾いたせいで、かすめただけだったが、まともに当たれば、頭は粉砕されていたかもしれない。
ナイフは、切れ味鋭く。目の前に現れ、とっさに突き刺した首を、半分切り取った。
ほとんど手応えもなくスパッと。
「何だ、切るのに力なんて、要らないじゃないか」
その日、素振りで力一杯振ることが、そもそも間違っていたことを理解した。
力一杯握って振ると、動きは堅くなり遅くなる。
軽く握りインパクトの瞬間だけ引き締める。
無手も、剣も同じ。
そして、討伐証明になるかと、耳を切り取り、ギルドに提出。
それにより、ギルドは大騒ぎになる。
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