第3話 町での生活

「一体どういう事だ?」

 お嬢さんを見送った後、ダレルの第一声。


 辺境伯達が、ウルフに囲まれていて、シモンさんに貰った魔物除けが仕事をしたことを説明をする。

「上手いことをやったな」

「そうかな?」

「俺達が、辺境伯さまと知りあうことなどあり得ない。雲の上の存在だぞ」

 ダレルに、その幸運を認識させられる。


「まあ良い。俺達もまだギルドから出られていない。お前は未成年だから余計にな。その間に、剣術や体術を習えば良い。報酬は貰ったから、ある程度面倒を見ているように見せないと、ギルドからきっと報告が行くからな」

 そう言って受け付けさんを見る。


 お姉さんは、ニコニコとこちらを見ているので、思わず頭を下げる。

 すると、少し驚いたようだ。


 仲良くなった時に聞くと、ハンターは皆、承認欲求の固まりで、俺様は偉いという感じを崩さない。間違っていようとも、相手にそれを認めないという人が多く、頭など下げてくるものは少ないようだ。

 中には、人との付き合いの中で色々覚えていく人もいるが、大多数は見栄を張り、無謀なことをして死んでしまうと嘆いていた。


 後は、盗んだり脅したり。

 やり過ぎて、結局ハンター内で、秘密裏に処分もされることもあると言うことだ。

「奴? 見てないな。死んだんじゃないかな」

 そんな報告があると、大抵はそう言うことらしい。


 さて、ギルドの宿泊所。寝るときの注意だが、基本グループを組み。誰かが寝ずの番をする。

 つまり一人の奴は、稼いでも寝ているときに盗まれ、食えず死んでいく。

 グループでは、仲間は絶対裏切らないというのが基本原則で、裏切れば背中から切られてモンスターの餌となる。

 それが決まりだそうだ。


 ちなみに最近は、泊まる前に貴重品はギルドで預かってもらえる。

 ただ、余分にお金が掛かる。単純に倍。銅貨二枚で五日宿泊と保管費用。


 他にも、準構成員の仕事は、町中でのものになるが、なるべく薬師や錬金術師、鍛冶屋などの仕事を受けて、手を抜かず仲良くなっておく。

 商人もそう。


 必要になったときに、採取の仕事や護衛などを依頼してくれる。将来に向けて繋がりを作っておくのが重要だと教えて貰う。


 ハンターの主業務はモンスター退治だと思っていたが、それにしても、武器や防具は必要だし、素材の買い取りや加工には、そういう人のつながりが重要になる。

 逆に、依頼を受けたときに、相手が信用ができるかどうかも見ておけば、騙されずにすむ。悪徳な生産者や商人は、準構成員を馬鹿にして本性を見せるらしい。


「人を見る癖を付けておけ。本心を出さない奴ほどやばい」

 それがダレルにとって、最も重要な事らしい。


 そうして、町中での仕事が始まる。

 この町、錬金術師が頑張って上下水道が完備され、疫病に対して徹底的に対処をした。

 ここでの報告は、王都にも伝えられ、この領都自体が実験都市となっている様だ。


 辺境で、モンスターも多く、素材が潤沢なため。それを目当てに、錬金術師が集まってくる。


 最初に受けた初仕事は、商家の周辺清掃。

 草むしりと、排水口の掃除。


 三日で、銅貨一枚。準構成員の報酬はそんな感じ。

 だから、ギルドの宿泊と食事代でギリギリとなる。


 つまり、まともなハンターになるまでは、ギルドから出られない。

「だから言ったろう。準構成員時代は、人とのつながりを作る。それが自分にとっての儲けとなるんだ」


 僕は、とっても幸運だった様だ。


 そして商家さんからの評判は、報告として、ギルドへ行く。

 すると、ギルドの方からも、推薦をしてもらえることを後日知る。

 気難しい鍛冶屋さんとかね。


「おう。そんな体じゃ、ろくな事はできんだろうが、材料。金属の種類ごとに分けてこの箱の中へ入れていけ。怪我はするな」

 ぶっきらぼうにだが、気遣いながら指示をくれる。


「気難しい人だから、言葉には気を付けて」

 そんなことを、ギルドのお姉さん。今回はヴァレリーさんから言われた。


 ギルドのお姉さんは、大体二〇歳前後までで、実家の商家に戻るか結婚をするらしい。他に、リウハラ、ノヴァー、バルテ、シエンヌさんが勤めている。


 基本的に、僕には優しい。

 だけど、ノヴァーさんは、ハンター相手に剣を振り上げているのを見たことがある。

 カウンターには現金があるため、馬鹿な奴がたまに現れる。


 表情を変えず、伸ばされた腕がポトリと落ちるなんていうことがたまに見られると、ヴェリだったか、アウグストだったか忘れたが、教えてくれた。


 この町、女性は基本強い。

 弱いと、襲われるからだ。

 辺境だと、攫われてしまうと、帝国へ奴隷として売られる。


 だから、武器は携帯しているし、体術も子供の頃から習っている。

 ギルドに勤めるお姉さん達は、子供の頃から習っているため、駆け出しのハンターなど相手にならないくらい、みんな強い。そう強いんだ。


 そして、顔が良く将来性のあるハンターは、たまにお姉さんに食われると噂がある。

「自分で選ぶのは、ちょっとした反抗ね。お父さんに任せると商家のつながりだけで、売れ残った次男坊とか押しつけられるのよ。すると仕事ができなくて、最悪店を潰すことになるの。お父さんもそれが分かっているから、ギルドに勤めていい男を探しているのよ。レオン君も良い子だけど、若すぎて残念だわ」

 ヴァレリーさんに、頭をなでられながら、一度しみじみと言われた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る