第15話 宰相(候補)他イロイロが決まった

✱時間軸の説明を……


 ヤマハゲたち二十四人がエバンス王国に召喚され転生したのは、ユースケとリンコが小王国アスノロクに召喚転生する二ヶ月前となります。

 何故、そんなに間があいているのか? それは時空神である玄抻素くろのすが意図的にそうしたからです。

 前話で五人と出会ったのですが、ユースケやリンコがアスノロクに来てそれほど間がない内に出会えるように玄抻素が手配したからです。


 以上、説明を終わります。引き続き本編をお楽しみ下さい。




 翌朝、再びミセと会う為にイルマイの研究所を訪れたユースケとリンコ。


「おはよう、イルマイさん」

「イルマイさん、おはようございます」


 二人が挨拶しながら中に入ると既に五人も集まっていて、ミセと談笑していた。中には忙しい筈のセバスまで居る。


「なんと!? シンゴ殿のジョブには【伝説の】とついておるのかっ!! イルマイっ!」


「ハッ! 陛下! 【伝説の】とつくジョブは我が国では伝説となっており、その能力はとてつもないと文献に記されております。シンゴ様は【伝説の】何というジョブなのでしょうか?」


 問われたシンゴは入ってきたユースケやリンコを気にしながらも返答する。


「僕のジョブは【伝説の影忍】です……」


 それを聞いたユースケがリンコに向かってこう言った。


「リンコよ、今朝ついさっきまでは俺の弟子だったシンゴだが、破門する事にした」


「先輩、シンゴくんが自分よりも格好良いジョブだったからって破門は可哀想でしょ?」


「師匠!! 見捨てないで下さいー!!」


「フンッ、何が【伝説の影忍】だっ!! お前は【仮面の忍者赤○】かっつうのっ!! 手裏剣シュッシュッでもするのかっ!? 因みに言っておくけど俺はあの特撮大好きだからなっ!!」


 などとユースケがおバカな事をのたまう。


「もう、先輩。シンゴくん泣いてますよ」


「ユースケくん、それぐらいで許してやれよ。ジョブは自分じゃ選べないんだから」


 デカトラもそう言ってユースケを諭す。


「そうだな、ユースケ殿。それに、シンゴ殿のジョブは伝説として文献にあるジョブだが、ユースケ殿やリンコ殿のジョブは文献にすら残ってない新しいジョブなんだから、ある意味ではシンゴ殿のジョブよりも我が国では凄い事になる」


 セバスの言葉に途端に機嫌が良くなるユースケ。


「そうだよな、セバスさん! 俺のジョブは凄いよな! 良し、破門は無しにしてやろうシンゴ」


「師匠〜、有難うございます〜……」


 コソコソとセバスに近づいたリンコがユースケには聞こえない小さな声で言う。


「セバスさん、だいぶ先輩の扱いを理解してきましたね」


「フフフ、リンコ殿には及ばぬが、余もそれなりにはな……」


 二人してフフフと含み笑いをしあっていた。そんな悪い顔をしてる二人に気づかずにユースケはシンゴに偉そうにしていたのだった。


「さてと、それでは改めてミセさん、五人をこの国までちゃんと案内してくれて有難う」


「フフフ、良いのですよ。私はイルマイ様の弟子ですし、イルマイ様からお聞きしていたユースケ様の名前がネイ様とアカリ様から出たのを偶々聞いただけですので。そのままお話をさせて頂いて、師匠に連絡を取ったらお連れしてくれと厳命されただけですので」


「こら、ミセ。厳命なんてしてないぞ。私は丁重に我が国まで来ていただけと言っただけだ」


「あら? 師匠。弟子に対してそう言うと厳命になるってご存知なかったんですか?」


 ミセは自らの師匠であるイルマイにも言いたい事は言うタイプのようだ。


「ムッ、まあ、命じた事にはなるだろうが…… それでも厳命とまではならない筈だぞ」


「まあまあ、イルマイさん、そのぐらいで。それで、調査にはこのミセさんも来てくれるんだよな?」


 珍しくユースケが間を取り持ち、そう問いかけた。


「はい、ユースケ様。それとリンコ様。お年を召された我が師匠は忘れていたようですが、玄抻素様の神殿はどうやらその昔、魔獣の森に建っていたという文献が残っております。ですので、今回の調査の序に探してみましょう」


「私はまだ三十二だ! それほど年じゃない!!」


 イルマイの抗議をミセもリンコもサラリと無視をする。


「まあ、そうなんですねミセさん。有難うございます。絶対に探してみます」


 それから事情を昨日の内に話していた五人からは、シンゴが付いてくる事になった。そして……


「のう、デカトラ殿、ユミコ殿、お二人には余の補佐をして頂きたいのだが…… 頼めぬか?」


 セバスは今朝、この部屋に来たときにデカトラとユミコが以前にしていた仕事の話を聞いて是非とも手伝ってもらいたいと内心で考えていたのだ。


 デカトラは営業ではあったがヤマハゲによって主にクレーム担当をしていた。その手腕は確実で、時には他の部署からも応援要請クレーム対応が来るほどだったのだ。

 何せ怒り心頭の相手方がデカトラが出てきて話をし始めると長くとも三十分後にはニコニコ笑顔で、しかも新規契約を結んで帰るのだから。


 そして、ユミコだがその実務能力の凄さが素晴らしい。㈱ママズマムは旧態依然とした会社で、売上を誤魔化す為に、勿論だがPCでも各種帳簿をつけていたが、主流は手書きであった。税務署の監査が来た時にはその手書き帳簿を出して対応していたのだ。

 それらを一手に引き受けていたのが、営業二課所属のユミコであった。商業高校卒業後に入社したユミコはその実務能力を遺憾なく発揮して手書き帳簿を最適にまとめ上げていたのだ。社長からの信頼も厚く、実はヤマハゲやお局キョウコですらユミコには何も言えなかったほどだ。

 何故、二課に所属していたのかと言うと、それも税務署員の目を晦ます為だったらしい。


 そして、今朝、セバスが一冊のアスノロク王国の人に見られても大丈夫な帳簿を持ってきてユミコに見せたところ、たちどころに問題点を八つも指摘したのだ。

 セバスはデカトラを宰相として、ユミコを事務処理の長として、是非とも王国で働いて欲しいと願っていたのだ。


 セバスの言葉にネイとアカリが反応した。


「はい! 私もユミコさんの下で帳簿管理をします!!」

「私もやります!!」


 二人はこの国に来ても争いごとなどは苦手だったので出来ればそういった危険な仕事はしたくないと考えていたのだった。それに、ユミコの下でならば前世で何度か助けてもらった事もあるのでその能力は十分に知っている。なのでユミコの下で働こうと考えて今の言葉を出した。


「おお、それは助かる。で、どうだろうかデカトラ殿、ユミコ殿?」


 問われた二人の返事は、


「僕で良ければ陛下の手助けをさせて下さい」

「私も、前と同じ仕事につけるならお願いします」


 と、了承の返事をしたのだった。それを見てユースケもリンコもウンウンと頷いている。デカトラもユミコも荒事は苦手なのだ。デカトラは一時だけとはいえユースケに間流柔剛術の基本を学んだが、それはユミコを守れるようになりたいとの思いからだったのをユースケは知っている。

 基本とはいえ間流の技はその辺の有象無象などでは問題にならないぐらいに強くなる。なので宰相として外交や国の数少ない貴族との折衝をしながら、セバスを守る事も出来るのだ。


「ナイスな人選だな、セバスさん! それじゃ俺からも一つ提案があるんだ。聞いてくれるか?」


 ユースケがそう言うとセバスは勿論だと頷く。


「このシンゴを長とした諜報組織を作らないか? 人選もシンゴに任せて、先ずはそうだな、教育から始まるから今すぐにって訳にはいかないだろうけど、二年〜三年後にはそれなりの形になるとは思うんだ。シンゴの下で先ずは五人ぐらいで始めて、徐々に拡張していけば良いと思う」


「ほう、ナルホド。諜報組織か…… 確かに我が国にはそのような組織は無いな。いつもミセに頼んでいるのだが、そのような組織が出来ればミセにも研究に力を入れて貰える。どうだろうか、イルマイよ?」


 セバスはイルマイに確認をとる。


「そうですね、直ぐには出来ないでしょうが…… 先ずは調査を終えてから、シンゴ様に動いて頂き、仮の組織を立ち上げてみては如何でしょうか? それにより今後の方針を決めるのが最良かと思います陛下」


「ウム、そうであるな。頼めるかな、シンゴ殿?」


 セバスに言われてシンゴはユースケの方をチラッと見てから了承の返事をした。


「はい、陛下。僕で良ければそのようにこの国に貢献したいと思います」


 その返事を聞いてから、ユースケが言う。


「シンゴ、お前が赤影で、白影にはそれなりのベテランを、青影は子供だぞ! コレは決まりだから必ず守るように!」


「それなら師匠が影烈風斎ですか?」

  

 とシンゴが聞くと、


「バカヤロウ、俺があんな騙し討で戦死した年寄りになれるか!! 俺は竹中半兵衛(by里見浩太朗さん)だよ!!」


「あっ、師匠。それはズルいですよ!」


 などと二人以外に通じない話で盛り上がっていた……。


「陽炎はリンコだな、後は薄影と黒影と紅影だぞ、シンゴ」


「師匠、どうせ地球じゃないんですからここはオリジナルな影を作るべきですよ! 最強の虹影とかどうですか?」


 などと盛り上がっている二人を放っておいて、リンコがネイとアカリとユミコと話をしていた。ミセも何気に加わっている。

 デカトラはセバスと共に執務室に向かい、イルマイも研究に戻ったのでさながら女子会となっていた。


「ウフフ、リンコちゃんも苦労するわね、ユースケくんが相手だと」


「ホントね。リンコ様、思い切って告白されるのも一つの手だと思いますよ」


 前世で三十代だったユミコからそう言われ、また妖艶な美女であるミセからも言われたリンコは顔を赤くしながらも頷く。


「ええ、ユミコさんが羨ましいわ。デカトラさんみたいな誠実な人に惚れられて。それに、ミセさんは私の事を言えないでしょ? イルマイさんにアプローチしても上手くいってるように見えないわ」


「まあ、そうね…… 師匠は鈍感を通り越してるから……」


 ミセもリンコに突っ込まれて頬を少し赤らめてそう答えた。そんな会話にネイが参加する。


「そうですよね、リンコ先輩。私も頑張ってこの世界の誠実な私だけの騎士様を探します!!」


 ネイの言葉にアカリも同調する。


「ネイに負けないように私も探すんだから!!」


 そのアカリの言葉に、リンコとユミコはシンゴに同情した。


『シンゴくん、早めに告白しないとアカリちゃんをこの国の騎士様に取られるわよ』と。 


 シンゴがアカリの事が好きなのをユミコとリンコは気づいていたのだ。


「それはそうとリンコちゃん。ユースケくんもリンコちゃんもかなり強そうだけど魔士ってどんなジョブなの?」


 ユミコの質問にリンコは自分やユースケのジョブについて説明を始めたのだった。





✱作者注


今回、(実写版)仮面の忍者赤影のキャスト名をそのまま出させて頂いております。(赤影、白影など)

○で伏せようかと思ったのですが、○影だとどれか分からなくなるし、赤○でもおかしな感じとなるのでそのまま出させて頂きました。

著作権的に問題があるようでしたら伏せ字に変更します。(誰か教えて?)






 

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