第4章 ゲスな女(回想)

第1話 ハッカー

 女ってメス豚、嘘ばっかりで嫌い。でも、男性は、純粋で、子供みたく夢を追いかけていて、周りの人のことを考えてくれる優しい人ばかり。そんな姿が素敵。


 私は大学の時に、付き合っている人がいた。それを親友に話したら、初めて彼氏ができて、よかったじゃんと言われ、嬉しかった。


 そこで親友に彼を紹介して、親友も交えて付き合いができるって喜んでいたら、ある日、彼と親友が腕組んで歩いているじゃない。次の日、どうしてかと親友に問い詰めたら、もう、あなたには興味がなくなったって彼が言ってたよって。ひどくない?


 彼はそんなこと言うはずがない。あの女が、お酒とか使って、体で誘惑したに違いない。たいして魅力もないスタイルなのに。本当に、あの女が憎かった。殺したかった。


 だって、私が親友と思っていた人に裏切られたのよ。仮に、どうしても好きになっちゃったということなら、ごめん、どうしようって相談するでしょう。それを、しらじらと彼を盗んでおいて、私が悪いみたいな言い方をして。


 彼女を信じていた私が馬鹿みたい。彼女には、彼の良いところとか、いっぱい話していたのよ。それを、笑顔を作りながら、裏では、そんないい彼氏なら奪ってやろうって、私のこと裏切っていたの。そんなひどい話しってある?


 だから、女は嫌いなのよ。陰で何をしているかわからない。親友のふりをして、私の周りを調べ、いい男を見つけたから、奪っていく。本当に汚い生き物ね。この時から、女は嫌いになったし、信用しないことにした。


 もう女とは友達になんかならない。心を許せるのは男だけ。男は、女みたく汚くないし、綺麗で透き通った心を持っているもの。


 だから、彼のことはまだ好きだった。でも、彼には、なんて言っていいかわからなくて、電話とかきたけど、涙ながらに無視を続けた。彼は、あの女に騙されて悪くないと思いつつも、どう話していいかわからなかった。


 そして、時間が私の気持ちを、なんとか癒していった。本当に苦しい時間が続いたけど、彼のこと、私の親友がしたひどいこと、許してはいないけど、忘れていくことができたの。


 その後、会社に入って、職場で素敵な人を見つけた。東大出ているらしいけど、そんなことはどうでもよくて、どんな仕事でも期待以上にやりこなす、やり手と評判だった。


 彼が会社を出てから、後ろからついて行って、駅で偶然出会った風で声をかけてみたの。会社の廊下で会った時も、ワンピースが好みなのか、スーツが好みなのかと表情を探り、好きそうな服着て、駅で出会い、飲みにでも行きませんかと誘ったら、一緒に行こうと言ってくれたの。本当にドキドキだったけど、努力の甲斐があったわ。


 近くの居酒屋に行き、どんな仕事をしているのか、大体は知っていたけど、あまり知らないふりして聞いてみた。彼って、仕事のことになると、こんなことをしたい、そしてその次はと、淀むことなく目を光らせて力強く話した。そして、この会社の社長になってやるという夢を力強く語っていた。


 そんな話しを聞きながら、私は、絶対、この人と付き合う、彼の夢の実現を応援したいって強く思った。だって、私には夢がないから。


 私に夢がなくても、彼の夢の実現の手助けをしたい。それが私の夢とも言える。だって、男性って、現状を変えていく女性にはない強い力を持っていて、それで歴史は変わっているもの。女性の力も必要だけど、私は、男性を支えていきたい。


 そして、私には人には話していない力がある。小学生の頃からハッキングを学び始め、今では、ハッカーの世界でレッドアイといえば、それなりに知っている人もいるレベル。難しい所に入り込む能力というよりは、入った痕跡を全く残さないことで有名だった。


 そんな私が最初にやったのは、社内で彼のライバルと言われている人を排除すること。そのライバルは、バリバリのキャリアウーマンって有名だった。でも、絶対、何か悪いことをしているに違いない。


 だって、人相が悪いもの。悪いことをしていると、人相に出てくるのよ。温厚な人は、顔も温厚になる。だけど、この女、目がつりあがって、笑顔が不遜というか、相手を馬鹿にしているみたい。こんな顔は初めて見た。


 この女のメールを見てみたら、やっぱり、本当にひどい。メンバーの子達に、罵倒の嵐。こんなこともできないのか、お前は生きている価値がない、死んじゃえばとか、3行に1回ぐらい、こんな言葉が出てくる。


 あなたが成功している裏には、メンバーの努力があるのよ。それを、成功したら自分の手柄、失敗したら部下のせい。なんて、ひどい考え方なの。逆でしょう。成功したら部下のおかげ、失敗したら責任者として責任を取る。これが正しいのよ。


 この女こそ、生きているだけで社会に害を与えてる。このことで引きずり落とすことも可能だけど、もう少しお仕置きしないとダメね。


 何がいいかしら。強姦されるとか。でも、こんな女好きになる男とかいないから、かえって処女を卒業できたって、喜ぶかも。強姦をお願いする男性にも申し訳ない。こんな女のあそこなんて気持ち悪いでしょう。


 こんな金に汚い女だから、会社のお金を横領して、クビになるなんて良いかも。そしたら、会社をクビになった後も、どの会社も雇ってくれないでしょう。そうして、干上がって死んじゃう。それがいい。


 そこで、社内の財務システムに入り込み、会社口座から1,000万円、その女に振り込んでやった。あまりに単純だと信憑性がないので、まず会社から、全く関係のない休眠会社の口座に送金し、その口座からその女の口座に送金した。


 さらに、その女から、財務部の口座管理している女子社員に、「あの件、よろしくね。」という偽装メールをログに仕込んでおいた。


 その財務部の女子社員は、元々、経理清算とか依頼すると、つまらないことをいっぱい指摘するとか、対応が悪くて気に食わなかった。ある案件で、支払対応してたら、もう間に合わないから支払いは来月だって。


 どれだけ私が上司から怒られたか知っているの。あなたが、私が書類出した日に早退したから間に合わなくなったんじゃないの。


 本当に嫌なやつ。この女も、いなくなればいいのよ。本当に、消えればいい女が世の中に溢れている。


 仕事をするっていうことは人のためなんだから、相手が何をして欲しいのかを考えて、その実現のために力を尽くすんでしょう。机に座って、高いところから、正論ばっかり言ってるんじゃないわよ。


 あなたが偉いんじゃなくて、みんなが、それぞれの立場で仕事してるんだから、ただ文句ばっかり言ってないで、自分の役割を果たしなさいよ。サボっているんじゃないわよ。


 ところで、お金を動かして、3週間ぐらい何もなかったけど、急に、ライバルの女と財務部の女子社員に懲戒解雇という人事速報が出た。横領だって、やっとわかったのね。


 私の口座に送金するのはバレちゃうからダメだけど、他人の口座に送金するのは、バレてもいいなら簡単。私の腕なら。


 でも、私の彼のライバルになるのも、運が悪かったのよ。そうじゃなければ、どんなに社会の害でも、私に目をつけられずに済んだのに。ちょうど、よかったわ。これで当社から悪人が2人減った。


 私は、この世界の救世主。だって、悪い人を排除してるのよ。がんばってるでしょう。


 彼から、お寿司への誘いがきた。もちろん、いつでもOK。お店に行くと、彼は、とてもご機嫌で、俺はついているって。そりゃ、そうよ。私と付き合っているんだから。これからも、ずっと、ついているわ。そのご褒美だから、大トロとウニを頼むね。美味しい。


 その後、夜景が綺麗なホテルの部屋に入り、シャワーを浴びてからバスローブに着替えてシャンパンで乾杯。カットされたチーズもおしゃれ。


 そして、両手で私を持ち上げてベットへ。ストイックに週3で筋トレしている彼の体はステキ。いつものとおり、硬いあなたの腕で抱きしめて。壊れるぐらい。続けて、続けて、やめないで。私を壊して。幸せ。この時間がずっと続いてほしい。


 彼の寝顔は子供のようにあどけなく可愛い。彼に体を寄せて、顔を見ながら過ごすこの時間がとっても好き。彼の逞しい体で、私を抱擁してくれると安心する。


 背中を向けていた彼に後ろから抱きしめると、硬い背中を感じられて、守られている感じがいい。このために、嫌なことばかりの職場でも我慢して過ごしているんだもの。

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