第4話 女カウンセラー
どうしても、この患者は苦手なので、女性の同僚にサポートをお願いすることにした。
「こんにちは。今日は、私が担当し、いつもの先生は、後ろで見ててもらうことにしたから、よろしく。」
「よかったわ。後ろの先生、いつも後ろ向きで、嫌気がさしてたのよ。」
「そうよね。わかるー。じゃあ、今日は、あなたの元カレの、ライバルだった女性に横領の罪を着せた件について、お話ししましょう。そのライバルをどう見てたの?」
「そうね、部下のメンバーに、お前なんか生きてる価値がないとか、死んじゃえばいいとか、メールだと3行に1回ぐらいはそんな言葉が出てきて、毎日のように罵倒の嵐なのよ。いくら仕事ができても、そんな人、会社にいちゃダメでしょ。」
「本当に、そうよね。ダメダメ。」
「先生は、私の気持ち、わかってくれるのね。」
「わかるわよ。本当に、ゲス女っているものね。」
「そう、ゲス女。ピッタリの言葉じゃないの。そいつが会社にいない方がいいと思って、横領の罪をきせてあげたの。」
「少し、やり過ぎかもしれないけど、ゲスな女は排除しなくちゃね。」
「そうそう。やっと、まともな先生が登場ってことね。」
「私も、そんなゲスな女だったら、追い出したくなるもんね。でも、一緒に排除されちゃった財務部の女性は、やり過ぎじゃない。」
「その女も、私に嫌がらせしてたから、そんなもんかなと思ってたけど、確かに、そこまでするのはかわいそうだったかもね。懲戒解雇だものね。確かに。」
「でも、やっちゃったんだから、仕方がないか。今度は、気をつけようね。」
「わかった。」
「そのゲスな女も、法務部とかにチクるというのでもよかったかも。それで内部調査が入って、パワハラとわかれば、出勤停止とかの制裁を受けたかもだし。」
「確かに。そういう方法もありね。」
「いずれにしても、ゲスな女は排除ね。」
「そうそう。」
「ホステスのママもさ、排除したのは良かったわ。世の中のため。よく、頑張りました。」
「ありがとー。本当に私は、正義の味方なんだから。」
「そう、あなたは正義の味方。ただ、殺さないで、その店に警察を呼ぶとか、脱税を見つけさせて、そのママがいられなくするという方法もあったかもね。」
「なるほど。排除にも、いろいろな方法があるってことね。確かに。」
「そう、方法はいろいろあるのよ。元カレもそう。別の男性に、付き合っていた女性を誘わせて、女性から振らせるとか。そうしたら、元カレ、絶望で落ち込んだでしょうね。横断歩道で、車に轢かれ、即死だったら、反省とか思う時間もなく、幸せに彼女と一緒にあの世に行ったのかもよ。」
「嫌だー。そうかも。あの世で、幸せに暮らしていたりして。精神的に追い込む方がよかったかも。先生、すごい。私の先を行ってる。」
「なんか、わかってもらったようね。これからも、すぐに人を殺したりしないで、もっと、他に、相手を追い込む方法がないかって考えてた方がいいわよ。」
「勉強になりました。じゃあ、今日は、ありがとうございます。」
こんなんでいいのか? 私は、女性の同僚と一緒に部屋を出て廊下でお礼を言った。
「今日は、ありがとうございます。あの患者は苦手で。でも、あんなんで良かったんですかね?」
「いいの、いいの。ああいうタイプの患者は、説得しようとしても無理なのよ。あの患者は、ゲスな女たちの中でも、最悪のゲスな女でしょ。だったら、少なくとも、人を殺しちゃいけないってわかるだけでも大成功よ。私の偉大さ、わかった? これからも、頑張ってね。ところで、今日の料金は15万円だから、後で、口座に振り込んでおいて。」
「いや、本当に助かった。お金はわかった。予定の半分の時間だったけど、きっちりしてるね。でも、これからも、よろしくね。」
いつも、笑顔が素敵で、きちんと成果を出す、立派な同僚だ。本当に、これで良かったかは不安もあるけど。
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