2-11
「それでは、お客様をお連れいたします」
メイドさんがこちらに一礼してから教室のドアをスライドさせれる、貴族の子息子女が入場してくる。
その姿は、まるで体育祭の入場行進のようで・・・・・・なんで体操服着て体育帽かぶってんの!
上は襟首が深緑で彩られた、白の半袖。下は襟首と揃えられた深緑のハーフパンツだ。そして、体育帽はツバの部分が天井に向いており、左右で赤と白の彩りを見せている。
なんで全員ウ○トラマンやってるんだよ!
ああ、誰のせいかはすぐにわかった。入場行進の最後尾で口元に手を当てて必死に笑いを堪えている甘楽さんと、遠慮なしに爆笑している粕川先生のせいだ。
入場をすませたウル○トラマンたちは、この前のように片膝をついて、両手を胸の前で十字にしようと―――
「それはさすがにダメー!」
「ぷぷぷ~!なんだよマモルく~ん。せっかくボクがこの国のあいさつを教えてあげたのに。最後まで見てくれても良いじゃんか~!」
「なんで初代なんだよ!世代的に粕川先生の仕込みでしょこれ!いつからあいさつのたびにスペシ○ム光線発射する文化になったんだよこの国は!」
「ちょいちょ~い。俺はそんなに年いってないよ~。リアタイはマッ○スとかメビ○スだったって~。ポージングは大体一緒っしょ?」
「いや、それ俺が生まれた頃のだから」
「あれ~、中里くんてタメ~?」
「んなわけねーでしょ!そんなことより、これ、どうしたんですか」
一列に整列して片膝をついた状態でフリーズしているウル○ラマンたちに視線を向ける。
一部は困惑した表情をしているが、さすがは教育の徹底された貴族家の人間だ。俺たちのやり取りが終わるのを粛々と待っている。
「あ~これね~。マコちゃんが用意してくれって言うからさ~。あっちでクラフターやってた知り合いにちょちょいっと作ってもらったのよ~。ちなこれ、中里くんたちの分もあるから着て着て~!」
クラフターって、生産職ってこと?ゲームとかだとアイテムやら家具やらを作る職業って感じだけど、わざわざ専門家に頼む必要あるのかな?
部屋に行けば俺も同じ体操服あるけど?赤白帽はさすがにないけども。
「ほらほら~、今日のレクリエーションで必要だから。ね☆」
「は、はぁ」
ウインクすんなよ、気持ち悪い。
この時、そんなことを考えないで、何のレクをやるのか、どうしてこの格好になる必要があるのかをしっかり確認しておけば、あんな悲劇が起こらなかったんだろう。
結論から言えば、粕川先生を信じた俺がバカだった。
どうしてあの人を信じてしまったのか、数分前の自分を叱り飛ばしてやりたい。
体操服に着替え終わると、先ほどの教室ではなく、訓練場に向かうように言われた。まあレクリエーションだし、広い方が都合良いのかな?なんて、浅はかな考えだった。
訓練場に着くと、久賀くん率いる男子チームと、甘楽さん率いる女子チームに別れ、ウル○ラマンだった頭は、男子が白、女子が赤になって、正しい形で被られていた。
なぜか全員が体育座りをして、1人だけ立ったままの粕川先生に注目していた。
「いいかな~、この国では古くから、『裸の付き合い』という文化があってね~。戦いながら脱がし合い、裸になるころには仲良くなっているって考え方なんだ~」
さっそく粕川先生が異世界の生徒たちに誤った日本文化を教えている。大間々先生か東さんを呼びに行った方が良いだろうか?
「というわけで、今から皆さんには、脱がし合いをしてもらいま~す」
「ちょおおおおおおおおおおお!」
全力で叫んだ。声帯やられるかと思ったわ。
いやいやいやいや、何?脱がし合い?バカじゃねえの?は?バカじゃねえの?
ご令嬢や王女様までいるんだよ?
それをなに?脱がし合い?
「バッカじゃねえの!」
「ちょちょ~い、中里くん、言い方きつくね?」
これでも遠慮してる方だと思いますけどね?
見て見ろよ、さっきまでウル○ラマンやってても顔色一つ変えなかったご令嬢たちが、明らかに顔をしかめてるじゃないですか。ご子息たちも口元緩んでるけど。
「とりま、男子チームと女子チームって感じのチーム分けで良いっしょ?」
「誰か警察呼んで~!ここに犯罪を助長しようとしてる変態がいるよ~!」
女子の体操服を無理矢理脱がせろってか?本当にバッカじゃねえの?健全な交流を目的にしてるわけで、夜の交流を助長するわけじゃねえんだわ。
「まぁまぁまぁ、落ち着いてよマモルくん。別に無理矢理服を脱がせようってわけじゃないんだって」
「そうだぞ、中里。キミの友人たちの案を参考に、僕と甘楽で考えたんだ。きっと楽しい交流会になる!」
久賀くんの自信はどこからきてるのか知らんけど、俺の友人たちの意見を参考にした時点で終わってるんだわ。
「それじゃ~、簡単にルール説明するよ~。今男子チームと女子チームに分かれてもらってます。男子チームは中里くん、女子チームはミナモ殿下がリーダーで~す。どちらかのリーダーが全裸になるか、全員が全裸になったチームの負け~」
マジで全裸?下着とかじゃなくて、マジで全裸にさせるきなのかあの変質者。
「あ~そうそう。今みんなに着てもらってる服は特別製でね~。一定のダメージを吸収してくれる代わりに、許容量を超えるとはじけ飛ぶ仕様になってるから~。ケガはしないと思うから、思いっきり戦ってちょ~!」
クラフターに作ってもらったって、そんな仕込みしてたのかよこの体操服。安全に配慮してるのは良いと思うけど、もっと別に配慮するべきところがあったよね?
「装備はここにある訓練用のを自由に使って良いよ~。あ、スキルや魔法に制限はないから。ただ、あんまり危険なものは止めるかもだけどね~。それじゃ~開始は10分後~。それまで装備や作戦を整えといて~」
つまり、相手を攻撃すれば、攻撃した箇所の服がはじけ飛んでポロリといくってことか。2000年代のアニメかな?
まあ、決まってしまったことにいくら文句を言ってもしかたない。
あきらめて、この夢のようなゲーム・・・・・・このアホらしいゲームをとっとと終わらせるとするか。
最短で終わらせるには、速攻でミナモちゃんを倒せばいいんだよね。身長は低いけど、実は小雪や上野さんより女の子なんだよね~。
「やっぱり、エッチな遊びだった」
「うおおおお!こ、小雪?」
いまだ瞳に光が戻らない小雪が背後から声をかけてきた。やっべぇ、今の声に出てたのかと焦ったわ。
「やっぱり交流会なんて、エロいことをするのが目的なんだ。女子を集団では、裸にしようなんて、いくらなんでも露骨すぎるよ!」
「お、落ち着いてよ小雪。これはどう考えても普通の交流会じゃないから。あのカス・・・・・・粕川先生と甘楽さんが悪ノリしただけだから。ちゃんと入学式が終わったら、普通の交流会しよ?エッチじゃない、普通のやつ」
「・・・・・・本当?」
「ああ、本当だ。普通のことをやらせれば、俺の左右から出られるやつはいないんだぜ」
「わかった。信じる。でも、これはどうしたらいいかな?私、男の子の前で裸になんてなりたくないよ?」
「だったら、俺たちがミナモちゃんを倒すまでの間、天井ギリギリまで飛んで隠れてたらいいんじゃない?」
「うん、そうするよ。護くんは?まさか、上野さんや甘楽さんの裸が見たいってわけじゃないよね?」
「ぶおん!ソウッスネ?」
「・・・・・・信じるよ?相棒」
そう言い残して、小雪は上野さんたちの方へ歩いて行った。
裸が見たいわけじゃない?
すっげーみたいです。だって、思春期の男子高校生だもん!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます