2-10
もうすぐお茶会あらため交流会の時間になる。準備にほとんど時間が無かったため、上野さんと小雪、ミナモちゃんにはジュースとお菓子を買いに行ってもらっている。
荷物持ちには、暇そうにしていた刀司を任命した。
レクリエーションについては俺に任されていたが、そんなの仕切ったことがない。
とりあえず地元の友人女子たちにSNSで連絡して、妙案がないか尋ねて、返信待ち。
なにをするかはその返信が来てから決めるとして、交流会の盛り上げ要因が必要だと思ったんだよね。
別に俺は陰キャというわけではないと思うけど、輝くほどに陽の気を帯びている訳でもないから、場を盛り上げるっていうのがちょっとねぇ。
「というわけで、協力して欲しいんだけど」
「任せてくれ!僕はキミに大きな借りがあるからな。こんなことで良ければいくらでも力を貸そう」
「いやいやいや、リーダーに交流会のレクリエーションの盛り上げ役なんてムリっしょ!親の七光りなだけで、学校でも浮いてたんじゃないの~?カースト上位って感じしないもんね~」
「カースト?制度の話か?こう見えて僕は、選ばれた人間だぞ。庶民の遊びくらい、たやすいものだ」
見るからに陽の気を帯びていそうな2人に、レクリエーションの盛り上げ役をお願いした。
甘楽さんは見るからにコミュ強だし、人に好かれる性格をしてるから申し分ない。久賀くんは・・・・・・まあ、問題を起こさなければそれで良いか。本人がやる気みたいだし。
「それでそれでそれで?どんなことやる予定なの~」
「ああ、ちょっと待って。地元の友だちに、今流行のゲーム聞いてるから・・・・・・お!来た来た」
「へ~どれどれどれぇ?」
甘楽さんと一緒に端末の画面をのぞき込む。
『最近のトレンドは間違いなく野球拳!』
『ポーカーで、掛金の代わりに服を脱ぐヤツ』
『全裸でツイスターゲーム』
「「・・・・・・」」
すごいだろ?これ、女友だちからの返信なんだぜ?
中学三年間で、こいつらとこんな遊びしたこと1回もねえよ!
「マモルくん、男子同士ってこういう遊びするの?」
「いや、この返信してくれたの、みんな女子なんだけど」
「ウソでしょ!」
俺もうそであって欲しいと思ったよ。
実際に会って話をすると、こいつらも普通のヤツなんだけど、なぜか最近SNSの返信がぶっ飛んでるんだよなぁ。
「野球拳?これは野球とは違うのか?それに、ポーカーとツイスターゲームか。ふむ。定番のゲームではあるが、人数に制限があるからな。ここは大人数でできそうな野球拳を選んだらどうだ?」
ポーカーとツイスターゲームは知ってるのに、野球拳は知らないのかよ!
「まぁ、マモルくんや久賀っちが通ってた中学だもんね。納得だよ」
「ちょっと甘楽さん?何を納得しちゃったんですか?」
「いやいやいや、変人の集まる中学校だったんだろうなって」
俺と久賀くんを一緒にしないでねお願いだから!
「ねえねえねえ、もう時間ないんだよ~。本当にこの中からゲーム決めちゃうの?」
「いや、異世界のご令嬢たちを裸にするわけにはいかないだろ?」
「裸に剥かれるのは男子かもしれないけどね~」
ああ、俺も久賀くんが全裸で笑っている姿が想像できるよ。
「な、なにかないかな?準備が必要なくて、大人数で遊べそうなゲーム」
「ふっふっふ。だったらボクが素敵なゲームを紹介してあげる~!ちょっと準備してくるから、マコトくんは先に会場行ってて~!」
自信満々といった表情で、甘楽さんはもの凄い勢いで走り去って行った。
「ぐおおおおおぉ!か、甘楽、僕は自分の足で走れる。走れるから、引きずるな~!」
久賀くんを引きずりながら。
「それで?なんでこんな大量にポッ○ー買ってきたの?」
会場に到着すると、すでにテーブルや椅子のセッティングはすんでいた。
飲み物も、ペットボトルのジュースやお茶など、豊富な種類が取りそろえられていた。
問題は、お菓子類だった。
机の上に積み上げられたのは、ポッ○ーの箱、箱、箱・・・・・・
こんな大量のポッ○ー、スーパーのお菓子コーナーでも見たことないよ。
「だから言ったろ?護はポッ○ーじゃなくてトッ○派だって」
「はぁ?トッ○だったらポッ○ーゲームできないでしょ!」
「そうです!ポッ○ーゲームは古来から男女の仲を深めるための伝統行事だとお母様も言っていました!」
どうやら、ポッ○ーゲームがやりたくて、こんなに大量のポッ○ーを購入してきたらしい。別にトッ○だろうとプリッ○だろうと、ポッ○ーゲームはできると思うんだけどなぁ。
それから水姫さん。娘に間違った日本の伝統を教え込まないでください。
「いやいやいやいや!交流会だよ?合コンするわけじゃないんだよ?なんでポッ○ーゲームなんてする必要があるの?」
「・・・・・・だって、護とポッ○ーゲームしたかったから」
いや、それにしたって買いすぎだからね?
昔から、走り出したら加減が聞かなくなるというか、イノシシみたいというか・・・・・・
「とりあえず、ポッ○ーは3分の2を回収してください。刀司、あとはどんなお菓子買ってきたの?」
「おう、これでどうだ?」
ガサリと手渡されたビニール袋の中には、大量の小麦粉と卵、バター、ホイップクリームなどなど。
「何これ?」
「クレープ、食いたくね?」
「アホかああああああぁ!」
たしかに適当にお菓子買ってきて、とは言ったけど、材料買ってくるバカがいるとは思わないでしょ?
しかもちゃっかり果物まで買ってきているし。
最近はあんまり絡んでなかったけど、ここまで脳筋のアホに成長しているとは思いもしなかった。
おかげで、軽くつまめるものがポッ○ーと果物しかない!
「旦那様、お菓子でしたら、お茶会用に準備したものがございます」
「おお!さすがはメイドさん!ちなみに、どんなお菓子が?」
「この国のお菓子には疎いのですが、貴族相手にお出ししても失礼にならないものかと。ご確認なさいますか?」
「はい、ぜひ!」
からからとワゴンに乗せられて登場したのは、色とりどりのプチケーキやデコレーションチョコ。
高級感の漂うお菓子たちは、学校の教室には不釣り合いではあるが、ポッ○ーの束や小麦粉を置いておくよりは良いだろう。
ありがとう、ミナモちゃんのメイドさん!
「それでは、セッティングさせていただきます。食器類も合わせて準備いたします」
流れるような手つきで教室内を改変させていくメイドさん。
いつの間にかくっつけたテーブルの上にはクロスがかけられ、お菓子コーナー、ドリンクコーナー、ポッ○ーコーナーが出来上がっていた。
なんでポッ○ーだけ別コーナーを設けたのか、ツッコみたい気持ちをぐっと我慢した。
一応紙皿や紙コップを用意してもらっていたけど、各コーナーには高そうな食器類が置かれていた。
なんか、お嬢様学校のプチパーティみたいな感じになっちゃったなぁ。
そう言えば、お嬢様学校出身のうちの相方はどこ行っただろう?
「交流会って何私誘われてないんだけどいつそんなのやったの連絡先の交換なんてしてなかったからたまたま誘われなかったのかなでも誘われても何していいかわからなかったから丁度良かったし必要以上にクラスメイトと関わる必要なんてないし体育で2人組にあぶれちゃっても先生が一緒にやってくれるから全然困らないしむしろ先生に直接指導してもらえるんだからお得だし・・・・・・」
教室の片隅で蹲った小雪は、虚空を見つめながら何かをつぶやいていた。
聞いちゃいけないような気がしたので、内容は聞かないようにしよう。
不安しかないけど、いざ、交流会だ!
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