1-27





中里 護(15歳)


レベル1→5


体力:110→160

霊力:92 →134

魔力:90 →129

筋力:121→176

知力:61 → 88

俊敏:123→178

耐久:134→194

器用:111→161


スキル

乙女の祈り

大盾術レベル1

シールドバッシュ

カウンター

リフレクター

バックステップ

耐久力上昇

痛覚耐性

拳術レベル1(New)


魔法

氷属性魔法レベル1





 東さんに言われてステータスを確認したところ、こんなことになっていた。とうとうレベルが上がってしまった、という空虚な気持ちと、なんでボスを倒したのにレベルが4つしか上がってないんだよ、という怒りの感情が同時にやって来る。


 レベルの上がり方はまあ置いておくとして、ステータスがかなりの問題だ。レベルが4つ上がっただけで、訓練前の初期ステータス値の3~4倍くらい上昇している。


 果たして現在のステータスが、人類にとってどのレベルに位置するのか。せめてトップアスリートとか、格闘家とか、人類の範囲で収まっていて欲しいと思う。


「へぇ~、初期ステータス限界まで上げてっからのほうがステータスの伸びも良いってのは本当だったんだな。こりゃ、レベル20の一般冒険者のステータスを軽く抜いてるぞ」

「なん・・・だと?」


 レベル5でレベル20のステータス抜いてたら、それってチートじゃん!


 いや、努力して訓練を続けてきたからチートではないのか?とはいえ、世間一般から見ればバグみたいな存在になってしまったのかもしれないと思うと、がっくりと膝が折れてしまった。


 普通に、平凡な生活を送るのは本当にもう無理なようだ。


「このステータスなら、20階のボスもいけそうですね」


 なんて良い笑顔で恐ろしいことを言ってくれるんですか!今だってバディそろってゲロゲロしながらやっと倒したって言うのに、これ以上の強敵相手に戦うなんてムリムリムリ!


 仮にステータスが大丈夫でも精神的にダメになってしまう。


「さっきは何もできなくて不完全燃焼だったから、次はがんばるよ!」

「バカやめろ!東さんに冗談は通用しないんだぞ!俺も小雪も、精神的な疲労でもう戦うことなんてできないよ?」

「え?私、全然疲れてないよ?むしろやっとすっきりしたって感じだし」


 あんだけ吐けばすっきりしただろうさ。胃の中がな。


「そんなこと言って、20階までまたさっきみたいに移動して耐えられる?」

「う・・・それはちょっと、ムリかもしれない」

「今日のところは、ここまででいいんじゃないか?どうせ騙されて連れてこられたわけだし?」

「なっはっはっは!見学って言ってたのは奏だけだろ?俺ははなっからここでボス戦をやらせるつもりだったよ」

「つまり、ウソをついたのは大間々先生だけだと?」

「そういうことだ!」

「ちょっと!そんな力強く肯定しないでくださいよ。これじゃあ私だけ悪者じゃないですか!もともと、東さんがとっととレベルを上げさせたいって言ってたから、私が方法を考えただけじゃないですか」


 いや、どうせそんなところだとは思っていましたけど、そこは大間々先生が止めてくださいよ。いくらステータス的に問題がないって言っても、いきなりボス戦は精神的にもよろしくないって。


「じゃあ、明日は20階のボスに挑戦させるから、心の準備ってやつをしっかりしとけよ?」

「事前に伝えとけば問題無いわけじゃないからね?そもそもいきなりボス戦ってのが問題なんだから!」

「そうなのか?お前らだったら、各階の魔獣を相手にするよりもボスと戦ったほうが楽だと思うんだけどなぁ」

「そんなわけないでしょ!」

「いいえ、確かに各階の魔獣を相手にするよりは、ボスと戦うほうが安全だと思いますよ?」

「ウソでしょ?」


 大間々先生まで東さんと同じ考えだと?どう考えたって、各階に現れる雑魚モンスターを相手にするほうが楽だろうに。


「それなら、11階で試してみるか?」






「ちょちょちょ!小雪、魔法早く!」

「え?え?どっちに撃てば良いの?」


 11階に下りてそうそう、俺たちは魔獣の集団に取り囲まれていた。


11階は昔のRPGに出てくる通路のような造りではなく、なぜか森の中。


 そのせいか、前後左右に上空からと、あらゆる方向から魔獣が接敵してくる。必死に盾で魔獣からの攻撃を受け止める俺と、背中合わせになって接敵する魔獣に魔法を放ち続ける小雪。


 とてもではないが手が足りない。


 個々は先ほどのボスに比べて明らかに弱いが、数が多すぎる!これじゃあRPGじゃなくて無双系じゃん!


 小雪が至近距離で厨二魔法を使おうもんなら、俺らまとめて吹っ飛びそうだけどな。


「な、なんでこんなに数が多いの?増える一方で全然数が減らないんだけど」

「わ、わかんないよ。もしかしたら東さん、俺らに魔獣を呼び寄せるアイテムでも持たせたんじゃ?」

「そんなわけねえだろ」

「「「キャイン!」」」


 上空から巨大な筋肉・・・東さんが降ってきた。それと同時に、小雪に殺到しそうだったオオカミの群れを吹き飛ばした。


「フリージング」


 さらに、上空から猛吹雪が降り注ぎ、俺たちを取り囲んでいた魔獣たちは氷付けになってしまう。これは大間々先生の魔法だ。


「だから言ったろ?ボス戦のほうが安全だって」


 ドヤ顔ムカつくわぁ。


 でも、東さんの言うとおり、ボス戦よりも怖い思いをしたのは確かだ。小雪と2人で戦ったっていうのに、さっきのボスとは比べものにならないほど苦戦した。魔獣だって、レベルが上がるほど倒すことはできなかったし。


「ダンジョンで発生する魔獣は、侵入者を排除するためだけに行動する。戦闘の音を聞きつければ、次から次へと襲いかかってくるんだ。見つけた魔獣はとっとと処理しなけりゃ、こうなるってわけだな」

「ボスに比べてレベルも耐久力も低いですけど、数が多いですからね。今の2人だと、さばききることができないと思いまして」


 おっしゃるとおりです。俺はてっきり弱っちい魔獣を1体ずつ相手すれば良いと思ってました。数が多くても、せいぜい3体くらいかな~なんて考えてた俺をぶっ飛ばしたい。


「ちなみに、9階層までは迷路型の構造ですけど、前後から襲われるので今とあまり変わらないですね~」

「なっはっはっは!レベルを上げてステータスで圧倒できるようになりゃ、2人だけでも余裕になる。だから、とっとと20階のボス部屋に行ってレベル上げしようぜ!」


 その言葉に、俺はため息を吐くことしかできなかった。






「はぁ、やっと帰って来られた」


 11階の入り口にあるポータルを使用して、1階のロビーに戻ってきてほっと息を吐いた。もうしばらくはダンジョン入らなくてもいいんじゃないかな?


「あれ~、ポータル使って戻ってきたってことは、もしかしてユキちゃんたち、10階のボス倒しちゃった感じ~?」


 そして、帰還早々に絡まれた。


どうやら粕川先生たちも探索を終えて戻って来たようで、後ろにいる上野さんたち4人はかなり疲弊しているようだった。刀司まで肩で息をしているなんて、かなりハードだったんだろうなぁ。


「へぇ~、すごいじゃん。10階ってことはレベル20くらいまで上がってるのかな~?もしかして、もっと上だったり?やっぱりさ~、もっと前からレベル上げしてたんじゃないの~?」


 何が面白いのか、軽薄なニタニタ顔で尋ねてくる粕川先生。ちょっと小雪に顔近づけすぎじゃないですかね?めっちゃ嫌がってるんで離れてください?


「わ、私たちもダンジョンは今日が初めてです。レベルだって、今日初めて上がったんですから」

「ふぅ~ん。それなのに、どうやって10階のボスを倒したの?」

「私は何もしてないです。ボスは、護くんが1人で倒しましたよ。ワンパンで!」

「へぇ~」


 小雪さん、それ絶対言う必要なかったよね?







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る