1-19
風守学院に連れてこられてから早1ヶ月。2月もまもなく終わろとしているのに、相変わらず訓練の日々を過ごしている。
訓練はなれてくるとハードルが上がっていき、今では早朝のランニングが20㎞に増え、筋トレの回数も3倍に増加している。
しかも、早朝だけでなく夜にも同じ訓練が追加された。こんなん常人には不可能だろう!そう思っていたのだが、世界が変わってからは人間の体の構造も変わってしまったようで、不可能は努力で超えられるようになってしまった。
中里 護(15歳)
レベル1
体力:103
霊力:89
魔力:82
筋力:111
知力:52
俊敏:106
耐久:124
器用:101
スキル
乙女の祈り
大盾術レベル1
シールドバッシュ
カウンター
リフレクター
耐久力上昇
痛覚耐性
魔法
なし
「はああああぁぁぁ」
「護くんどうしたの?自分のステータス見てクソデカため息なんて」
どうしたもこうしたもないよ!レベルアップしてないのに、ステータスが異常に伸びてるんだよ?しかも、筋肉方面で。
当然、勉強なんかはまったくと言って良いほどしていないので、知力の上がりが低いのは仕方がないと思うんだけど、知力と筋力でダブルスコアの差があったらさすがに泣けてくる。
「このままだと、俺も東さんみたいな脳筋になってしまう」
「あ~、うん。大丈夫、では無いかもしれないけどさ。護くんには私がいるんだから、大丈夫だよ?」
「小雪がいても、この知力の低さは問題でしょ。このままじゃ俺、考えるより先に体が動いちゃうキャラになっちゃうよ」
「でも、ここに来る前より知力のステータスも上がってるんでしょ?」
「上がり幅に差がありすぎるでしょ。ちなみに小雪のステータスはどんな感じ?」
「私?護くんほど上がってないと思うけど?」
月夜野小雪(15歳)
レベル1
体力:45
霊力:162
魔力:187
筋力:31
知力:152
俊敏:33
耐久:26
器用:86
スキル
厨二魔法
厨二病を極めし者のみが扱える魔法。
自身が夢想する全ての魔法が使用可能になる。使用者の心の持ちようによって、魔力以上の威力を持った魔法が発動可能。
「厨二魔法に限界はない」
魔法
炎魔法レベルⅡ
闇魔法レベルⅡ
「知力が、俺の3倍、だと」
「護くんが低いステータスを私が補ってる感じかな?ふふふ、まさに相棒って感じじゃない?」
ステータス的にはそのとおりかもしれないけど、あれからも連携の訓練はまったく上手くいってない。
マッドドール単体であれば、どうにか上空へ打ち上げられるだけの筋力を手に入れたけど、マッドドールの数が増えると、途端に何もできなくなってしまった。
ダンジョンでは、魔獣が集団で襲ってくる場合が多いらしく、今のままでは小雪を護りきることができないかもしれない。
小雪はこの短期間で魔法の軌道をある程度操れるようになった。魔法のレベルも上昇している。きっとレベル1では破格のステータスを誇っているはずだ。
そんな彼女が、俺なんかと正式にバディを組む必要なんかないだろう。もっと向上心の高いヤツと組んで、上を目指して欲しい。
「ちなみに、知力ってどうやったらそんなに上がったの?」
「う~ん、異世界の本を読むとかかな?最近は物語とか、魔法の教本とか読んでるよ」
「へぇ、それじゃあ俺も読んでみようかな?」
知力を上げて、平らなステータスにしたい。突出するところがない平凡なステータスに。そして、脳筋と言われないステータスに!
「お~い、2人とも。ちょっと良いか?」
タンクトップを着た東さんが、ぶっとい腕をぶんぶんと振りながらこちらにやって来る。その後ろには、見たことのない男性が1人いた。
茶髪で両耳にピアスをつけており、首元にもジャラジャラとアクセサリーがぶら下がっている。どこで買うんだって言うような紫のスーツと黒のワイシャツを着崩した、ちょっとお近づきにはなれなさそうな男だ。
「明日から早期入学希望の生徒が来るらしくてな。こいつはその指導員を担当する粕川だ」
「お~っす、粕川了、26歳。て~かキミ、かわいいじゃん?お名前は?」
なれた手つきで小雪の両手をとり、ウインクを投げかけているカス・・・粕川さん。俺、生理的にこの人はムリそうだ。
「え、っと。月夜野小雪、です」
「へ~、小雪ちゃん、じゃあ、ユキちゃんだね。よろしく~。俺のことは、リョウくんって呼んで良いよ~。それで、そっちのキミは?」
「中里護です」
「あっそ」
女の子と男でこれだけ対応違う?ってくらい雰囲気が変わったなこの人。俺としても仲良くはしたくないけど、こんなんで指導員なんてできんのかね。
「おい粕川。あんまり俺の弟子に触るんじゃねえぞ?」
「っち。わかってるっすよ、東さん。それじゃ、俺は明日の準備があんで、これで失礼しますよ~」
最後まで軽薄そうに、ヒラヒラと手を振りながら帰って行った。
「ちょっと早急に手を洗いたいかも」
小雪なんか、腕に蕁麻疹でも出たのかってくらい鳥肌立ってる。ああいう男がモテるのかと思ったけど、そうではないらしい。
「あんまこういうことは言いたくねえんだけどよ。あいつには気をつけろ」
いつになく真面目な顔で、東さんがそう言った。普段人の悪口なんて言わなそうなのに、珍しいな。
「さてと、それじゃあ今日こそ、ダンジョンに行くかぁ~!」
「まだ話は終わってないでしょ、おバカ!」
いつの間にやって来たのか、大間々先生は持っていたタブレットで東さんの頭をバシンと叩いていた。タブレットは精密機器だから、壊れないか心配だ。
「どこから出てきたんですか?大間々先生」
「あ~、ごめんなさいね。ちょっと私用で少し遅れてしまいました。それよりも、ほら、話の続きですよ」
「続き?なんかあったか?」
「あったでしょ!明日早期入学する生徒の中に、中里くんに祝福をしてくれた、上野ひかりさんがいるんですよ!」
「大間々先生、それ、まだ本気にしてたんですか?」
聖属性を習得した女性が、一生に一度だけ贈ることができる祝福。それは贈る相手のことを強く想っていなければ成立しないものらしい。
だったら、間違っても上野さんが俺に贈ってくれたりはしないだろう。世界が統合されてから、顔を合わせたのも言葉を交わしたのも、あの会議室が初めてだった。
少なくとも半年以上疎遠だった相手に、そんな祝福を贈れるわけないって。
「だから、その件も含めてゆっくりお話しましょうって言ったじゃないですか。絶対上野さんで間違いないです!乙女の勘がビンビンですよぉ!」
そうですか。もう乙女ってとしでもなくなってきてるから、勘も鈍くなってるのかもしれませんね。
「何か、失礼なことを考えましたか?」
「・・・・・・いいえ」
そういうところの察しは良いみたいですね、怖いです。
「ふっふっふ。先生に任せてください。明日はバッチリ先生がサポートしてあげますから」
「なんのサポートですか」
「恋のキューピット的な?」
だから、上野さんには素敵な恋人がいるんだって。
どう考えても余計なお世話。下手したら上野さんに、「はぁ?昔からの知り合いってだけで、アタシがあんたのこと好きだって思ってたの?気持ち悪いんですけど?」なんて思われるかもしれん!
「やっぱりやめましょう!勘違いだったら大変じゃないですか!」
「ねえ、護くん。勘違いじゃなかったら、どうするの?」
「は?」
「護くんは否定するけどさ。もしその人が、護くんのことを好きだったら、どうするの?」
上野さんが俺のことを好き?
「はっはっは。それは絶対ないって。昔は家が近所でしょっちゅう一緒に遊んでたし、親同士が仲良くて一緒に旅行とかも行ってたけどさあ痛ぁ!」
「私も、同席させてもらいます」
なぜか俺のふくらはぎを全力で蹴り飛ばした小雪は、明日の面談に同席を希望した。いや、そもそもそんな面談、しないで欲しいんですけど?
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