第23話 渡さないもん

「ねえ、カモミール」


俺は、リビングのソファで隣に座っている彼女に話しかけた。

カモミールはあれからぼーっとしている時間が多くなった。

何を考えているんだろう。


「あれ、何か言った?ユウヤ」


「ああ、うん何でもない・・」


あれから何となくぎこちなくて、お互い意識しているからだろうか。

改めて、俺を好き?って聞くのハードル高い・・。

こういう時はあみに・・って聞けないか。


ピンポーン

玄関の呼び鈴が鳴った。


「宅配頼んだっけ?」


俺は玄関に行った。

ドアを開けるとあみが飛び込んできた。


「今日学校は?どした」


「今日は休校です~」


俺の腕にしがみついてくっついてきた。

昨日の今日で意識してしまう。


「お前な~くっつくな。今日は遊びに来たのか?」


「裕也に会いに来たの」


「あれ?あみちゃん?」


カモミールがリビングから出てきて、カモミールも俺の腕にしがみつく。


「ユウヤは渡さないもん」


「望むところよ!」


あみが小さい胸をそらして息巻いている。


「つうか、お前ら・・俺これから勉強しなくちゃなんだけど」


「「じゃあ一緒に行く」」


見事に声が重なった。

勉強にならんだろこれ・・。

学校を辞めたが、高校卒業認定を貰うために家で勉強をしている。

高校を出ていないと何処にも就職できないからだ。


数カ月前までは学校を辞めるとか、考えも及ばなかったけど。

逆に退学させられないように我慢して通っていたかも。

カモミールと出会ってから色々あったけど、変化が目まぐるしい。


平穏な生活も良かったけど、これはこれでアリなのかな?


「じゃあ、一緒に勉強する?」


俺は彼女たちに声をかけた。


「や、やっぱカモちゃんと遊ぼうかな~」


「そ、そうですね。一緒に遊びましょう」


最近買ったテレビゲームをやるつもりなのかな。

勉強はどちらも嫌なようだ。


「あ、裕也お昼はピザでよろしく~」


去り際にあみから、お昼のリクエストが入った。

まぁいいけどさ。


「カモミールもそれでいいの?」


「うん!チーズのいっぱいのが良い。あとコーラも」


カモミールもお気に入りの様子だ。


「あみ、家にお昼食べてくるって連絡入れとけよ」


「は~い」


二人は仲良くリビングへと消えて行った。


「勉強するか・・」


自分の部屋に入り、机の上を見た。

読みかけのマンガ本が無造作に置いてあった。

そういえば前に買ったマンガ読み切ってなかったっけ。

以前は毎月発売日を楽しみにしてた。

すっかり忘れてたけど。


俺は壁掛け時計の針を見た。

午前10時か。

宅配でピザを頼んで、彼女たちと一緒に食べる。

後のお楽しみがあると、勉強も頑張ろうって思えるから不思議だ。

食べたら、一緒にゲームしてもいいかも。


「頑張るか・・」



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