第20話 謝罪
「カモミール!」
声がした。
目を開けると、ユウヤが心配そうな顔をして覗き込んでいる。
「何でこんな事に・・・」
私はユウヤに抱えられて、保健室へ運ばれたようだ。
白いカーテン。
白いベッド。
無機質な部屋。
「私ね、魔法使えるようになったの」
「え?」
ユウヤは予想してなかった言葉に戸惑っている。
「今日はもう帰ろうか」
ユウヤはそう言って、私の鞄を教室から持ってきた。
「体調悪いって言っておけば大丈夫だから」
私は回復魔法で、すっかり良くなったのにユウヤはまだ心配している。
変なの。
「もう学校行かなくていいから・・」
帰りながらユウヤが独り言のように、呟いていた。
****
「ごめんなさい!」
ユウヤの家に玲奈が来て謝っていた。
玄関先で、あみが玲奈の頭を下げさせている。
何でも私を突き飛ばして気絶させたらしい。
私はどうでも良かった。
全く気にしていない。
「・・・・。」
許すとも言えないし。
仲良くする気にはなれない。
「帰ってくれ。顔も見たくない」
ユウヤは、今まで見たことが無いおっかない顔をしていた。
何でそんなに怒っているのだろう。
あみたちが、帰った後ユウヤは言った。
「俺、学校辞めようかな・・カモミールさ、苛められるところなんて、行きたくないだろ?」
「ユウヤ学校辞めるの?」
「高校は通信でも資格が取れるからな。無理に通わなくてもいいさ」
****
数日後、俺とカモミールは学校を辞めた。
元々無理に行く必要ないんだもんな。
高卒資格なんて通信でも取れる。
何なら大学も通信で資格が取れるんだっけ?
俺が学校に行くから、カモミールが学校に通学するようになったんだし。
何故か、あみが学校に戻るように説得してきた。
よっぽど戻ってほしかったらしい。
俺は家でダラダラしていた。
学校に行っていた頃が嘘のようだ。
時間が取れるようになり、逆に自由になった。
カモミールも元の姿に戻っていて、気楽そうだ。
「そういえば、カモミール・・俺も練習すれば魔法使えるようになるかな?」
「ん?」
「使えると便利そうじゃん。楽しいかと思って」
「そうかな?そうでもないかも・・無くても生活できるでしょ?」
「まぁ、そうだけどさ。カッコよくドーンとかズバーンとか」
「なあにそれ、アニメとかのやつ?」
最近はだいぶこちらの文化に慣れてきたようで、一緒にテレビを見たりしている。
俺の好きなアニメとか。
本当は家に帰りたいのかな?とも思う。
カモミールは言わないけれど。
桜の下、初めて見たカモミールの涙。
あの時俺は、何とも言えない気持ちになった。
来年も桜を見るたび、涙を流すのだろうか・・・。
彼女にはいつも笑っていてほしい。
俺の勝手な願望だけど。
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