第19話 桜

俺達は三年生になった。

相変わらず、カモミールは魔法が使えないまま・・。

本人は以前よりは元気になったと思う。

きっと忘れたころに使えるようになったりして。


担任の先生は・・。

今年も竹下先生そうりだった。

まぁいっか。

校庭には桜が咲き乱れていた。


「カモちゃん。こっちこっち」


俺とカモミール、あみは一緒のクラスになった。

あみの友達の玲奈は、隣のクラスになったようだ。

校庭のベンチで桜を眺める。


「あれ・・。これって・・。」


カモミールが桜を眺めて呟いた。

彼女の眼には涙がたまっていた。


「思い出しちゃった・・。故郷の景色・・」



****



私の故郷の森には、不思議な大樹が生えていた。

魔力を回復させる花。

花を加工してポーションにするの。

真っ白いまるで・・今の桜の花のような形をしていた。


私は涙を流していた。

帰りたい・・。

あの森へ・・。


「裕也!カモちゃん泣かせたでしょ!」


あみがユウヤに食ってかかった。


「俺、何もしてないよ・・」


ユウヤは慌てている。

喧嘩を止めたいけど、私は悲しい気持ちでいっぱいでそれどころではなかった。


「痛っ」


コンタクトがズレたかもしれない。

泣いたからかな。

魔法は相変わらず使えないし、私はユウヤにお世話になりっぱなしだ。

何か返せることはないかな。


「大丈夫か?何でも言ってくれよ」


ユウヤは優しい。

あみちゃんも優しい。

私の周りは優しい人だらけだった。



****



校庭のベンチで、あみとカモとユウヤが仲良く座っている。


「カモなんかいなくなればいいのよ」


「玲奈、口わる~」


「嫌がらせしちゃう?」


あたしはあみとクラスが離れてイライラしていた。

相変わらず、あみとカモは仲がいい。

恋敵なんだから、何で仲良くしてんのか正直わかんない。

あみに合わせてたけど、もう止めた。


「そうだね。面白そう。やっちゃおうか」


クラスの友達のゆりも、男子に人気のカモが気に入らないみたいだし。

学校来れなくしちゃおうか。


「話したいことがある」


そう言ってあたしはカモを呼び出した。

今まで仲良くしていたから、いじめられるとは知らずに付いてくる。

定番の校舎裏に連れてきた。


「あんた、生意気なのよ!」


あたしはドンとカモを突き飛ばした。

カモは壁に激突する。

顔を少し切ったようだ。

白い肌に赤い血が滲む。


「ちょっと、怪我させるのはまずくない?」


ゆりが言ったが、あたしの気がすまない。


「いいのよ。言わせなきゃいいんだから」


我慢していた悪心が一気に出てきた気がする。

ひどい事をしているはずなのに、悪いと思えない。

むしろスッキリしていた。


「なんで・・そんな事するの?」


悲しそうな目でカモはあたしを見る。


「あたしは、あんたを嫌いだからよ」


あたしは屈みこむカモに蹴りを入れた。


「うっ」


うずくまって動かなくなった。

気を失ったようだ。


「あみ、やりすぎだって・・わ、わたしは知らないから」


ゆりはその場から逃げ出した。



****



私どうしたんだろ。

ああ・・急に玲奈さんに突き飛ばされたんだっけ。

何でだか分からないけど・・。

もうどうでもいいか。

体の力がふっと抜けた気がした。


「ヒッ!」


玲奈さんが叫んでいた。


「何この光・・」


光?

体が暖かくなっていくのを感じていた。

回復魔法?

無意識に体の危険を感じて回復魔法を発動させたらしい。

ああ、何だ。

私、魔法使えるじゃない。


私は気が遠くなっていった。

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