第18話 期末テスト

春一番とは聞くけれど、これはどうかと思う。

ビュウウー

外は台風並みの強風。

外に行きたくない。

相変わらず、俺とカモミールはいつもの様に学校へ行く。

今日くらい行かなくてもいいのではと思う。


「外、風すごいよね・・・」


風土的に風が強いところだとは言われているけど、最近はどうかしてるよな。

この中を自転車で来る奴がいるんだから凄い。

俺なら無理。


「まあ、それでも学校から5分とかって良い方なんだろうな」


俺の家は学校から近いところにある。

両親が残してくれた家。

駅からも近く便利なところだ。


何とか学校にたどり着いた。

教室から外を眺めていると、凄い砂ぼこりがたっていた。

春になれば風は収まるだろうか。


「おはよう~」


あみが教室に入ってきた。


「そういえばもうすぐテストだけど、カモちゃん大丈夫?」


そういえば期末テストあるんだっけ。

カモミールは異世界人だから、授業とか聞いていても難しいだろうなとは思っていたけど。



****



昼休みに廊下で、竹下先生そうりを見かけて声をかけた。

テストの事を相談してみた。


「ああ、それならいいのをあげるよ。カモちゃんだけにね」


何故か竹下先生そうりがカモちゃん呼びしている。

因みに声は魔法で、他の人に聞こえないようにしているらしい。


「今回は特別だよ?小学校から、高校二年位の一般知識を入れてきました。これをはめると、勉強しなくても答えが分かるようになるものです」


手の上には小さい指輪があった。

それ、カンニングってやつじゃ?

先生がそんな事していいのか?


「いりません」


カモミールは竹下先生そうりから貰った指輪を突き返した。


「魔法に頼るのはやめようと思うので」


「「え?」」


「それじゃ俺が・・」


指輪を取ろうとしたが、もちろん先生に奪い返される。


「君はもちろん駄目に決まってるでしょ。カモちゃんいいの?」


「魔法使えなくなってから考えたんです。使えなくても生きて行かないとって」


カモミールは、めちゃくちゃ真面目な子なんだな。


「そうか。わかった。松永、見習った方が良いぞ。じゃ、忙しいからまたな」


竹下先生そうりは足早に去っていった。

あっという間に見えなくなる。

移動がめっちゃ早いって噂、本当だったんだな。



****



期末試験――。

カモミールが試験内容をまともに書けるわけもなく・・。

問題も何を言っているのか、分からないレベルだと思うんだけど。

名前くらいしか書けなかったのではないだろうか。


「何も書けないのは、不自然だから少し直しておこうか」


僕はカモミールの書いた答案を少し書き足した。

赤点くらいのレベルなら違和感ないかな?

選択問題は一応埋まっているけど。

他の教科分は、ちょっと手間だけどそれも直しておくか。

僕は他の先生にバレないように細工をする。


「これでいいか」


三年になったら自分で頑張ってもらおう。

そこまでは面倒見きれないしな。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る