第10話 病欠

職員室で、担任のクラスの女子生徒に声をかけられた。


「そうり・・じゃなかった、竹下先生ちょっといいですか?」


「朝倉か、どうした?」


僕は生徒から総理と呼ばれている。

名前が竹下登で、昔の首相と同じ名前だったりするためだ。

生徒がネットで名前を調べたら出てきたらしく、芸能人のお祖父ちゃんだったらしい。

ただの偶然なんだけど。


面白がって付いたニックネーム。

すっかり定着してしまった。

今年28歳になる。

担当科目は英語。

体が弱くて、先生のくせによく学校を休みがちだ。


英語で解らない所を聞かれた。

授業で解らなかったところを聞きに来たようだ。

生徒にも色々いる。

朝倉は、成績優秀で真面目な生徒だ。


「有難うございました」


お礼を言って、朝倉ほなみは戻っていった。



**



「竹下先生、最近入った転校生はどうですか?」


数学の杉谷先生が聞いてきた。

職員室でコーヒーカップを持ち、ストーブの前で立ち話をしている。

スーツ姿が似合っていて、男子生徒に人気の若い女性の先生だ。


「長井ですか?松永ですか?」


「こんなに短期間で、立て続けに入ってくるなんて珍しいですよね。長井くんの方ですよ。見た感じ友達がいなさそうな感じですから・・」


「あ・・そうですね」


あれはわざと作らないようにしている気がする。


「杉谷先生、心配してくれて有難うございます。僕からも声をかけてみますよ」


面倒くさそうな生徒。

正直関わりたくない。

長井ラクトは色々不明な点が多く、陰のありそうな生徒だ。


「最低限で良いか・・」


僕は呟いた。



****



「熱下がらないな・・」


俺は、カモミールの体温を見た。

一日寝て、まだ熱があるみたいだ。

三日位は休んだ方が良いかもな。


「学校に電話しとくか」


学校に電話することなんて初めてだな。

スマホで検索して、電話をかけた。


「二年一組の松永です。そうり・・じゃなくて竹下先生いますか?」


「はい。従妹のかもみが熱を出して多分しばらく休みます。世話をする人がいないので、俺も休みます。はい。お願いします」


「ん・・ユウヤ休むの?」


「だって、心配だからな」


顔が真っ赤なカモミールは、まだだるそうに見える。

おかゆを食べたら、また寝てしまった。

俺は寝ているカモミールをぼんやり眺めていた。

代わってあげられたら・・なんて思っている。


「はぁ~」


どうやら、俺も重い病にかかってしまったようだ。

俺は静かにドアを閉めた。



**



「休みか・・仕方ないな」


僕は、職員室の電話の受話器を置く。

松永かもみという生徒は本来はものだ。

無理やりに設定を作ったため、少し矛盾が生じている。

助けるつもりはないのだが、別に良いかと思い少しサポートをしてあげた。

可愛い女子生徒は好きだし。


「面倒なことは起こすなよ?」


長井ラクトと松永。

何か起こりそうな予感がする。

あのエルフには悪気は無さそうなのだけど。

恐らく何かを守る?ために学校へ入ったのだろう。

二人とも休みなら、学校は平和だと思うが。

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