第8話 転校生?

学校へ行きたくないけど・・行かないといけないんだよな。

義務教育は終わったけど、高校を卒業しないとどこにも就職できない。

カモミールは学校に行っても安全な様に、アミュレットを渡してくれたのだろう。

長井が俺に、何かしてくるとは思えないけど。


翌日俺はあきらめて、学校へ行った。


「はあ~」


ため息が出てきた。


「おはよう~何、朝からため息ついてんの」


教室で、あみが俺の肩を叩く。

俺はいいけど、カモミール危なくないか?

他人より自分の心配しろって思うよ。

一応誰か来ても、絶対ドアを開けるなとは言っておいたけど。


「今日はあの転校生来てるみたいね」


長井は、斜め前の席に座っている。

俺と目が合った。

アイツがいるってことはカモミールは無事だな。

俺はホッとした。


キーンコーン

始業のチャイムが鳴り、教室のドアが開かれた。

担任の竹下先生そうりが入ってきたが、誰か連れてきたようだ。


「転校生を紹介する。はい、自己紹介して」


「松永 かもみです。よろしくお願いします」


黒髪美少女のカモミールが、黒板の前に立っていた。

ひょっこりと頭を下げる。

教室がざわついている。

目の前の光景に、俺は頭が混乱していた。


「席は・・同じ松永の後ろが空いていたかな、そこで」


「はい」


スタスタと歩くカモミール。

男子の視線を一斉に受けている。


「よろしくお願いしますね。松永くん」


カモミールは俺に微笑みかけた。



****



朝のホームルームが終わり、カモミールの周りには人だかりができていた。

ほとんど男子ばかりのようだ。


「松永さん、どこに住んでるの?」


「何が好きなんだい?」


本人に色々理由を聞きたいところだが、人が多くて聞くに聞けない。


「あれさ、従妹いとこだよね?」


あみが俺に絡んできた。


「そうだけど」


「さっき、初めまして風に挨拶してなかった?」


「気のせいだよ」


あみって結構鋭いんだよな。

注意しないと。



****



俺は昼休み、屋上にカモミールを連れて行った。

今日は寒いから誰もいないな。

俺はカモミールに話し始める。


「おまえ、何考えてるんだ!学校に来るとか危ないだろ」


わざわざ長井がいる学校にくるなんて。

というか、学校にどうやって入ったのかも気になるが。


「ユウヤの方が危ないでしょ?」


「狙われたのはカモ・・むぐ・・」


カモミールに手で口を覆われた。


「ここではかもみと呼んでね。松永さんでもいいけど」


かもみってネーミングセンス・・まあいいけどさ。


「昼飯ないだろ。これ食べろよ」


俺は自分で作った弁当を差し出した。


「俺はパン買ってくるからさ。あいつにはくれぐれも近づくなよ」


弁当箱をカモミールに押し付け、売店へ急ぐ。

まだパンあるかな・・。


「私も一緒に行く!」


何故か俺の後をついてくるカモミール。


「売り切れていないといいけどな」


俺たちは急いで売店に向かった。



**


屋上で俺とカモミールは座っていた。

かろうじて残っていた一個のクリームパンにかじりつく。

カモミールは俺が作ったお弁当を、隣で美味しそうに食べている。

もぐもぐと食べている姿はかわいいな。

そういえば、肉が苦手なんだっけ。

残しているみたいだ。


「ありがとう。もう食べきれないわ」


カモミールはそう言うと、お弁当箱を俺に返した。

気を使ってくれたのだろうか。

お弁当の半分が残っていた。

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