第7話 襲撃

「残念。まさか魔法が効かないなんて・・さすがエルフといったところか」


私は気が付いた。

今は変身魔法をかけていない。

姿がそのままだ。

昨日会った時、すでに正体が知られているようだった。


「私は話す事なんかありません」


ドアを閉めようとする。


「強引な手段は取りたくないのだが・・」


長井は手で合図した。

どこからか男たちがわらわらと出てきた。


「な、何この人たち」


どうやら魅了魔法チャームで操られているらしい。

髪の色や服装から、異世界人らしかった。

強引に引きずり出される。

魔法で逃げ出すこともできるけど、この人たちを傷つけたくない。


「「助けて!」」


私は思い切り叫んだ。

風魔法で声を遠くまで乗せる。


「ちっ!何てことしやがる」


辺りを警戒していた警察官が駆け付ける。

長井は慌てて逃げ出した。

異世界人を置いて。

私は今のうちに黒髪美少女に変身しておく。

長井が去ったことで異世界人たちは、魅了魔法チャームの効果が切れたようだ。


「あれ?おれ何してたんだ?」


数人の男たちがキョロキョロしている。

警官が男たちを連行していった。



****



リビングでテレビを見ていると、昼間事件があったようだった。

逃げた異世界人が、また警察に捕まったようだが。


「これうちの近所じゃないか。カモミールは大丈夫だったの?」


「・・うん。逃げれたから平気だったわ」


「え?怪我とかしてない?無理してないよね?」


俺がいない間に何が起きたんだ?

カモミールの全身をくまなく見る。


「腕、怪我してる・・ちょっと待ってて」


俺は慌てて、救急箱を持ってくる。


「すり傷だけど、一応消毒しといたほうがいいな。じっとしてて」


脱脂綿にアルコールを染み込ませて、カモミールの右腕に触る。


「っつ!」


「ごめんね。しみたかな。絆創膏貼るから」


「別に魔法でも治るのに、ポーションもあるし」


「そうなんだ。これでも治るから貼っとくね」


カモミールは不思議そうに絆創膏を眺めていた。



**



俺はカモミールから襲われた経緯を聞いていた。


「長井って人が訪ねてきて、魔法で男の人たちを操っていたの・・私をさらおうとしていたけど逃げれたから」


「何を考えているんだ、長井って奴・・」


意味が解らないが、それ以上にカモミールを傷つけたのが許せない。

沸々と怒りが込み上げてきた。


「ちょっといいユウヤ?」


「どうした?」


『ステータスオープン』


ブウンと音がして、俺の目の前に透明なウインドウが現れた。

ゲームとかで表示される四角い枠だ。


「見た感じ、何もされてはいないみたいね。一応これ渡しておくわ」


レトロな感じのネックレス。


「これは?」


「アミュレットよ身に着けていてね。魔法攻撃から守ってくれるもの。一時的なものだけどね」


細い縄で編み込まれていて、青い石が付いている。

空飛ぶあのアニメに出てくる石みたいだな。


「精神魔法なら、かけられても効かないからね」


さらっと物騒なことを言うカモミール。

長井は相当危険な奴みたいだ。


「聞いてると、学校行きたくないんですけど・・」


「行かなければいいじゃない。用があればあっちから来るだろうし」


それも遠慮してもらいたいな。

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