ある日、私になった。

るなぴ

1話完結

ピピピッピピピッピッ…


『んん、、ねむ…。』


『ん…?』


声に違和感を覚えた。


男は喉風邪かと思いうがいをしようと洗面所へと向かう。


『顔洗うかぁ。』


パシャパシャッ


ふわふわの少しお高めのタオルで顔を覆う。


一応この男はアイドルで、顔が資本なので気を使わなければならない。


『ふぅー。』


顔を洗った後、鏡を見て笑顔の練習がルーティン。


・ ・ ・


『は、?』


『誰、これ。』


鏡に映ったのは、寝起きで浮腫んだアイドルとは思えない男の顔ではなかった。


一応人気アイドルグループ、izanamiのメンバー、五十嵐玲央だ。


だがそんな男が…。


『おん、な?』


そう、鏡に映ったのは小柄で寝起きとは思えないほど綺麗な顔をした女の子だった。


男、いや、女は自分の顔や体を触り確認する。


『女だ。』


女はどこか冷静だった。


『とりあえずリーダー達に連絡するかぁ。』


プルルルル…


『リーダー、おはよう。』


「おはよう。こんな時間にどうしたの?」


『家来れたりする?』


「行けるけど?」


『ついでにさ、全員連れて来てー。』


「うん?」


『じゃねー。』


理由も何も言わず来いと伝え切った。


一方的にも程がある。


だが、そういう人間なのだから仕方がない。


しばらく待っているとズカズカと数人足音が聞こえた。


『また、あいつらはインターホンも押さずに他人の家に上がり込みやがって。』


「玲央ー?どうしたー?」


どうしたじゃないだろ、インターホンくらい押せと思っているが、現れた4人の男達はどうしたと言うしかないのだ。


「れ、、お?」


「え?れお?」


「誰だお前。」


仮にもアイドルが女の子をお前呼ばわりなどあってはならないだろう。


だが、それが辞めれないのがコイツらだ。


『玲央は俺だよ。』


「いや、女だろ。」


「玲央は?」


『だから、俺が玲央!』


「は?」


そりゃそうだ。女がメンバーの名前を名乗るのだから驚くのも当たり前だ。


「んー、じゃあ、玲央の生年月日と出身を答えて。」


『は?なんで俺が今更そんな事言わねーといけないんだよ。』


「ほら。」


『はいはい、2002年10月5日。東京都。両親と姉貴が1人。』


これ以上聞かれるのもめんどくさいのだろう、自ら聞かれていない事まで答える。


「玲央だ。」


『だからそう言ってんだろ。』


「玲央?」


『なに。』


「可愛いね。」


『はあ?』


「玲央可愛いなぁ。」


そう、この男達は末っ子ポジの玲央が可愛くて仕方がないのだ。


それなのに今回の様な事が起これば加速していまう。


「ツンツン系の子っていいよな。」


「でも、玲央にならデレデレされたい。」


「うわ、リーダー失言だ。」


「どこがだ。」


『一旦全員黙れる?』


この場で一番小さく可愛らしい女の子が上目遣い(必然的に)でお願いしてきたら断れるヤツなどいない。


『仕事とかどうしようかと思って来てもらったの。』


自然にどこか女らしい口調になる。


「んー。とりあえず事務所に報告だよ。」


さすがリーダー、しっかりしている。


「だな。連絡するわ。」


案外ちゃんとしているリーダーの右腕、如月雷。


「れーお♡」


「れーおーちゃん!」


うるさいうるさい子供のような奴らだ。


ハートを飛ばしているのが加藤龍。


ちゃん付けをしてくるのが白鳥誠。


「社長がホームページでも動画でも報告してこのまま活動しろって。」


いつの間にか電話を済ませていたらしい。


『このまま?』


「そう。」


『はぁい。』


「玲央いつもより話し方も可愛いね。」


「ねー!」


『…とりあえず動画撮ろ〜。』


猿共は置いといて準備をする。


『着替えて来るからリビングで待ってて。』


そう言い残し着替えに行く。


「聞いた??待っててって!デートみたい!」


「玲央可愛すぎ。」


『…丸聞こえだっての、笑』




着替えを済ませた玲央がリビングに戻る。


『サイズ合うのなかったから大っきいのにした。ワンピースみたいでしょ?』


「最高。」


「わ、ワンピース…可愛い。」


『ふふ。』


リアクションにクスクスと笑ってしまう。


「笑い方っ!」


『え?』


玲央も気づかずに女の子の様な笑い方になっていた。


『んー、思い切って女の子らしくしようかな。』


「ありがとうございます。」


龍は謎のお礼を玲央に伝えた。


きっとさらに可愛らしい玲央が見れるからだろう。


『りゅーう!』


可愛らしく名前を呼んでみる。


「…。」


龍は思考停止させてしまうほど喰らってしまった。


『んはっ。気絶したみたい。』


「玲央、龍で遊ばない。」


リーダーに叱られてしまう。


『はぁーい。』


『リーダー、抱っこ。』


普段はそんな事ないが何故か甘えたくなってしまうらしい。


「はい?」


『抱っこ!して。』


「は、はい。」


リーダーは軽々玲央を抱き上げた。


『ふふ。リーダーイッケメーン。』


「はぁ。そんなに男をおちょくってるといたいめるよ。」


リーダーの言っている事は間違っていない。


実際、男性を煽ると何をされるか分からない。


『リーダーだもん。』


玲央はリーダーの言葉を無下にしてしまう。


まさかあんな事になるなんて。


「…玲央。」


『なぁに?リーダー。』


「リーダー俺も玲央お姫様抱っこしたい!」


「俺も!」


またしても猿共の登場だ。


「はぁ。」


それを遠目から見守る雷。


チュッ。


「分かった?こんな事されたくなかったから男をおちょくらないように。」


『え。』


「「「は、?」」」


ボンッ!!


何かが爆発した音が聞こえる。


『あれ?戻った?』


「「「「…!?」」」」


そう、戻ったのだ。男に。五十嵐玲央に。


そんな本人は呑気に何かほざいている。


『あ!王子様のキスで元に戻ったのか?』


『リーダーって王子様キャラだしな!』


口調もいつも通り玲央だ。


本当に戻ったようだ。


「えぇ、、玲央ちゃんがぁ。」


「俺の玲央がぁ。」


やはり猿共は放っておこう。


「ま、戻ってよかったな。」


雷はやはりしっかり者だ。


「…。」


間近で見たリーダーは驚きが隠せないようだ。


『リーダー?どーした?』


コレこそどうしたじゃないだろ、と誰もが思った。


「ハッ、!玲央!?なんで??」


『だから、王子様のキスで戻ったんじゃない?』


「は、あ、?」


「これで仕事にも影響出ないな。」


雷は仕事人間だ。


『だな!』


『よっしゃ、仕事行くぞー!』




一体何がどうなって女になって戻ったんだ?


答えを知る者は誰もいない。


だが、きっと、玲央の中の女性ホルモンが大暴れしたのでは?なんて。


馬鹿馬鹿しい。


玲央だけに限らず問題だらけのizanami。


そんな彼らから目を離すな。





では、次のターゲットの所にでも向かおうか。──

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ある日、私になった。 るなぴ @rumap

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