第3話 諦めと苛立ち
「車の中でずっと待たせてごめんな」
コウタロウは申し訳なさそうに言った。
「? 菅原くんは何にも悪くないよ〜 しっかし、警察のあのナワバリ意識どうにかならないのかな。それが嫌で嫌で……」
果心は溜息ついていた。
「一般市民をそんな面子とかどうでも良いことに巻き込ませない方が良いのにね。だから魔法部は動きが遅いって言われるのに……」
果心はペットボトルのミルクティーを飲みながら言った。
果心も多少のナワバリ意識を持ってるのではないかと、コウタロウは思ったが口にはしなかった。
「そういえば菅原くん、晩ご飯どうする?」
「果心は食べたいものあるのか? どうせお前の金だし、今日は散々だったし、好きな物食えよ」
「特にないかな。コンビニにする?」
「了解」
果心の車は家路へと向かった。コンビニなら帰り道に何軒かあるので、一番家から近いコンビニに行くことにした。
コンビニに向かう途中の出来事だった。いつものように大通りを走っているとドスンドスンと地面が揺れた。ぼんやりと助手席から外を眺めていたコウタロウは、
「地震…?!」
とびっくりした様子で言った。車を道路の端っこに止め外に出ると、目の前には巨大な猫の魔族がこちらに向かって来ている。このままでは一般市民はおろか、自分達の身が危ないので食い止めるために2人は変身した。
果心は猫の魔族の動きを止めるために得意の幻術でマタタビを出して、魔族の動きを止めて捕まえようとした。
「えっ……?! なんで……!」
果心の幻術は幻覚を見せるだけに止まらず、幻覚で見せている物、そのものをそのまま再現する。そのため、マタタビに含まれている物質で、猫なら反応してもおかしくない筈だ。
なのに、猫の魔族はマタタビに目もくれず、大通りをひたすら突っ走って行った。
「菅原くん……!!」
果心が叫んだ。
コウタロウは車の近くから走って猫の魔族の元へ向かった。尻尾に捕まり、尻を狙って少し火傷する程度の威力で攻撃した。
『バチン!』と痛そうな音が響き渡り動きが止まったように思えた。
だが、そう簡単に事は進まない。猫の魔族は、悲鳴のような金切り声を上げてコウタロウを振り落とした。
無様にアスファルトに叩きつけられたコウタロウは、猫の魔族を追おうと立ち上がった。しかし、その魔族はコウタロウが追えない所に行ってしまった。
爆風で自分を持ち上げれば追えないことはないのだろうが、道路や建物を壊すことになるため極力避けるべきである。
「菅原くん! 遠くに行っちゃうよ! 今ならまだーー」
「無理!! どうやってあいつを追えって言うんだ?!」
「……」
果心はコウタロウに返す言葉が無かった。コウタロウの既に諦めたような態度に苛立ちを感じている。
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