第2話
中学生の僕らが親の許可なく
そう言ったリリだが、
どういうことだと思って両親に
リリのところも同じだったとあとで聞いた。
そこまでするか……と
ちなみに私は期末テストで赤点を一つでも取っていたら許可しないと言われていたが、それは要らぬ心配だった。パニックで頭の中が真っ白なままに解答欄を埋めただけだったのに、どういうわけか全教科で平均点近くを叩き出し、普段よりも高得点になったくらいだ。リリとの勉強会は知らぬ間に身になっていたということらしい。
「
二学期終業式の日、そう言いながら私の肩を叩いた
着崩した制服に短いスカート(冬なのに生足!)、派手めな髪色とメイクで非常に目立つ人だ。私のような地味に地味を重ねたような人種とは一生関わり合うことはなさそうだが、縁あってリリ
よって、例の件のお
「小波渡さんはスノボできるの?」
「あたし寒いのダメだから、全然。温泉が目当て。
寒いのダメなのに生足なの? ファッションに命がけの人?
というツッコミは喉の辺りでかろうじて抑え込んだ。
「そうなんだ。……でも鹿瀬さん、気まずくないの?」
なんとなく教室の
例の件の
そんな私の心配もどこ吹く風と、小波渡さんは笑う。
「
「ならいいけど……」
「心配すんなって。
言いたいことだけ言って、小波渡さんは教室を出て行った。その少しあとに鹿瀬さんが席を立ち、追いかけていく。この二人は私たちと違って、付き合っていることをクラスのみんなには秘密にしているのだ。
「……ま、小波渡さんが間に入るなら大丈夫か……」
鹿瀬さんと梁川さんの問題は大丈夫そうだと息をつき、私の机に伏して居眠りしているリリの頭を撫でる。
鹿瀬さんのこともそうだが、実のところこちらにも
前にも言ったとおり、私とリリは梁川グループに所属していない。しかも普段梁川さんはリリを敵視しているのだ。いくら
まあ、今回に限っては梁川さんがリリに礼をするという
「…………」
そう思っていた時期が私にもありました。
「あの、小波渡さんたちは……?」
出発当日、東の空が少し
梁川さんが用意してくれた迎えの車の後部座席に乗り込むと、そこには梁川さんとリリがいた。他は運転手と引率の人が前の席にいるが、小波渡さんたちは乗っていなかった。
ああ、これから二人を迎えに行くんだ……と思っていたら、車はまっすぐ高速道路に向かい、目的地を目指して走り出したのだ。
そこで不審に思って梁川さんに訊いてみると、衝撃の返答があった。
「鹿瀬さんが風邪を引いて行けなくなったから、
「なん……ですって……?」
自分の声がかすれていくのがはっきりわかった。
ということは、梁川さんちの別荘に私とリリだけで行くの?
なんというか……不安しかないんですが。
「心配しなくてもいいわよ。これは私からのお礼なんだから、ちゃんとお客様としてもてなす準備はしてあるわ。あなたたちは気にせず楽しんでくれればいいのよ」
そう言って、梁川さんはリリに目をやった。
早起きしたからか、リリはすでに夢の世界の住人になって可愛い寝息を立てていた。迎えに行って車に乗った途端に眠ってしまったらしい。見るからにふかふかもふもふの高級なブランケットに包まれて幸せそうな顔をしている。
「別荘まで数時間かかるから、あなたも眠るといいわ。……私と話すことなんてないでしょ」
色違いのブランケットを差し出し、梁川さんは言った。それを受け取って膝の上に置く。
うむ、これはすごい。眠くなるのも納得の肌触りと温かさだ。こんなのに包まれて寝たら、さぞかしいい夢が見られそうな気がする。
しかし――
「それじゃ、梁川さんが退屈でしょ。話し相手くらいは私にもできるよ」
なんとなく
すると梁川さんは少し意外そうな顔をしたあと、すぐにふんと小さく息をついて、
「私も寝るから結構よ。しゃべりたければドアに向かって独り言でも言っていればいいわ」
人を小馬鹿にする見下した目で吐き捨てた。
……私の気遣いを返してください。
途中のサービスエリアに立ち寄り、起こしても起きてくれないリリを運転手さんに任せて車に残し、引率の人を
もちろん、彼女とは同じ席にいながら会話はほぼゼロだった。
それに耐えきれず引率の人に活路を
そんな具合で車に戻ると、目を覚ましたらしいリリが不機嫌な顔で私と梁川さんを
「起こしてくれればよかったのに」
「起きなかったのはリリでしょ?」
「むぅ……」
私はきちんと起こしたのに、うるさそうに拒否したのはリリだ。文句を言われる筋合いはない。
「何食べたの? ミコからいいにおいがする」
「当ててみて?」
「んー……」
しばしリリはじっと私の顔を見つめ、ちょいちょいと手招きした。何だろう、と思いながら顔を近づけると、いきなりキスされた。唐突な事態に驚く私をよそに、リリの舌が私の口内をさらりと撫でていった。
「この味は……マスカット風味のソフトクリームかな?」
「正解」
「僕の好きなフレーバーじゃないか。ますます起こしてくれなかったことを恨むよ」
「そうおっしゃると思いまして、こちらにリリの分をご用意しております」
この私が愛する
持ち運びや揺れる車内で食べるのに向かないコーンタイプではなくカップタイプのアイスを買ったので、それをスプーンですくってブランケットに埋まって顔だけ出しているリリの口に運ぶ。
はむ、と小さな可愛らしい口をもごもごと動かし、にへっと嬉しそうに微笑んで、もっとちょうだいと
何というか、生まれたての
「本当にバカップルよね……あんたたちって……」
はあ、と心底
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます