　そうフィリアは恍惚な表情を浮かべながらそう答えるではないか。

　これはむしろ、俺の奴隷となる事を望んでいるとしか思えず、確かに俺は『奴隷でないと信用できない』とは言ったものの、こういう返しをされると逆に奴隷にしたくなくなるのは何故だろう？

　確かに、相手がどういう思想の持ち主であろうとも奴隷にしてしまえば関係ないのは確かであるのだが、こう、変態に餌をやりたくないと言えば良いだろうか？　とにかくぞわぞわと身体全身を搔きむしりたくなるような感覚になってしまう。

「そ、そう言ってくれるのは俺としても嬉しいのだが、自分の妻を奴隷にしている事がバレたら周囲からの視線は当然キツクなるであろうし、そして何よりもフィリアのご両親も納得しないだろう。そうなった時を考えれば後々面倒臭い事になるのは避けられないので、フィリアを俺の奴隷にするのは厳しいと思うんだが？」

「なるほど……確かにその考えも一理あるな……」

　いや、一理どころか普通にあり得る事だと思うのだが？　と口に出さなかった俺を誰か褒めて欲しい。

　こういう手合いの変態を相手にしなければならない場合は、餌をやらない事が大前提であるのだから基本的に『刺激しない』を大前提に相手をしなければならない。

「しかしながら私を奴隷にしたとして、周囲や私の両親はどうやって奴隷にした事を見抜くんだ？　確かに隷属紋は身体に浮かび上がるのだが、目立たない所に指定すれば良いだろう。それこそ太腿の内側や舌の上など、いくらでもあるぞ？」

「それを万が一見られ、バレた時を想定しているんだ。女性同士裸の付き合いが無いとも限らないし、使用人に着替えさせればそこから広がる可能性もあるだろう？」

「なるほど確かに……でも、それでも私は旦那様の奴隷になりたいと、今心の底からそう思うのだが、この滾る心はどうしてくれよう？」

　いや、知らねーよ。

　そう言えればどれだけ楽だったことか。

　もはやツッコミ待ちなのだろうか？　と疑ってしまう自分がいるのだが、そもそもこの展開を招いてしまったのは『奴隷』という言葉を出してしまった俺にも幾分か責任はあるだろう。

　しかしながらこの脳筋はそう簡単に『はいそうですか』と下がってくれるとは思えないし、現に今下がるどころが食いついて離れないので俺は頭を抱えたくなる。

　正直な話しをすると適当な下位貴族男爵あたりの三女をにして娶ろうかと思っていたのだが、流石に伯爵家長女を娶って奴隷にするのはリスクが高すぎるとしか思えないだが……。

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