第129話 今でも鮮明に覚えている



 というか流石に無視できなかった。


 確かこの組織は誘拐じみた方法で奴隷を集めていたという事は知っていたのだが、であれば女性だけに偏るのはおかしいと思うのだが……。


「あぁ、それでしたらあの組織【粛清する影】のリーダーの性癖がレズで、どうせ奴隷にするのならば女性で固めたいという結果みたいだわ」

「…………え?」


 しかし、俺の疑問にサシャが答えてくれるのだが、想像以上に性欲に忠実な理由に思わず呆けてしまう。


「しかしながらそれだけではなく、最終的にリーダーに合う配合具合を研究するにあたって同性であるという事も重要であったみたいで、むしろこっちの方が大きいですかね。男性女性でやはり多少なりともデータも変わってくるでしょうし」

「…………それもそうか」


 しかしながら、流石に性欲優先で集めた訳ではなく、自分も使用する為により正確なデータを取る為というちゃんとした理由もあったようで、何故だか知らないのだがホッとしてしまう自分がいる。


 それにしても大勢の女性の中に一人だけ男性がいるこの状況は、俺が主人であり俺の親の別荘であるにも関わらず、なんだかいけない事をしているような気分になってくる。


 それでも、きゃいきゃいと楽しそうにメイド服へと着替えたり、サラサラになった髪の毛に驚いていたりしている彼女たちの姿を見ると少しばかり心が救われたような気分にもなる。


 やはり良い事はするべきだな、と思う。


 そして後日、正式に俺がトップであり俺の奴隷で出来た組織【ブラック・ローズ】が作られるのであった。



◆奴隷side


あの日の事を今でも鮮明に覚えている。


 温かな光に包まれたかと思うと身体が楽になり、そして一人ひとりマリエルさんによって治療を施され、身体を綺麗にしてもらい、下し立ての衣服を頂き、温かなご飯をお腹いっぱい食べさせてもらうだけではなく、地下ではあるもののその日の内にご主人様が土魔術で地下に新しい空間を作ると私一人ひとりに部屋を用意してくれるだけではなく、ストレージから家具一式まで全員分出したかと思うとそれも全て私たちにあげると言うではないか。


 ベッドにふわふわな寝床、クローゼットに箪笥、机にカーペットなどなど。


 こんな幸せな事がたった一日で起きても良いのかと、疑ってしまいそうになるくらいの状況に思わず『これは夢で、目が覚めるとまた地獄の日常が待っているのではないかと思いその日はなかなか寝付けなかった程である。


 その事を話すと、寝られなかったのは私だけではなく、どうやら殆どの仲間たちが私と同じような理由で寝られなかったようで、それがおかしくてみんなで笑ってしまった事を思い出す。

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