第126話 逃がす訳がないでしょう
「哀れですわね……。 貴方の境遇はわたくしと少し似ている所がございますので、もしあなたが堕ちてしまう前にわたくしのご主人様であるルーカス様と出会えていたのならば、また違った未来があったのかも知れませんが、それでも闇へと堕ちる事を選んだのはあなた自身ですわ。ならばいずれあなたが復讐しようとしているようにあなたもまた復讐される立場である事を受け入れなければなりませんわ。わたくしはあなたに対して個人的な恨みがある訳ではないのだけれども、この施設を見渡した限りいつかは誰かしらに粛清される運命であり、それが今日であるという事ですわね」
そして二人の小娘は私に向かって正論を振りかざしてくる。
正論でどうにかできたのならばとっくの昔にやっているっ!! それができなかったからアイツらと同じように闇に堕ちるしかなかったのではないかっ!!
ふざけやがって。
私はこんな所で死んでいい訳がないっ!!
まだ帝国を潰す事ができずに死ねるわけが無いっ!!
ここは素直に、今の私ではこの二人の片方にすら勝てないという現実を受け入れて撤退するべきである。
例え尻尾と片腕が無く言葉が喋れずとも、片腕があれば無詠唱で魔術を行使できるし、ドラゴンブレスも威力は分散してしまい落ちてしまうが吐けないわけではない。
それに固い鱗は健在であるのだから並の攻撃程度であれば防ぐことができる。
そして私はプライドを捨てて逃げる事を選択する。
プライドを守る事よりも、プライドを守ろうとした結果復讐を果たせなくなる方が嫌だ。
所詮こいつらは空を飛べず地面を這う事しか出来ない下等種族であるいじょう、この背中にある一対の翼を使い、大空を経由して逃げる事は容易であろう。
そうと決まれば早速施設の外へと逃げ、翼で空に逃げるしかない。
「逃がす訳がないでしょう」
「あなたの敗因は、わたくしたちが侵入したと気付いた瞬間に、一目散に逃げなかった事ですわ」
「まぁ、そうだとしても逃がさないのだけれども、逃げないよりかは少しばかり長く生きられたかもしれないわね」
そして私は逃げようとした瞬間、心臓には金属の棒が突き刺さり床に縫い付けられ、翼と両の足は切り落とされ、最後にみた視界はゴロゴロという音と共に回転する世界であった。
◆ルーカスside
「それで、こんなにも野良の奴隷を保護してきたのか……にしてもすごい数だな」
なんか二人で裏組織を潰してくると言っていた事は覚えているのだが、まさかその結果として主人を失った野良奴隷を十二人も拾って来るとは思わなかった。
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