第124話 あり得ない
すると、その回復魔術の効力は絶大であり、穴が空いた喉や顎下、縦に割れた口の傷がみるみる癒えていく。
しかしながら再生ではない為喉と顎下には大穴があき、口は縦に割れたままなのだが、それでも痛みが和らぐだけでも大分違って来る。
そして何より驚いたのが、私は快楽に溺れる事が無く正常な判断ができているという事だ。
恐らくドラゴンの身体だからこそこの魔術のデメリットを防ぐ事ができたのだろう。
これに関してはかなりの大発見であり怪我の功名と言えよう。
早くこの事について色々と調べたいのだが、その為にも目の前の二人を倒す必要があるのが地味に面倒くさい。
このドラゴンの身体を突き抜ける程の威力と、固い鱗を貫通できる程の強度と粘度をもった特殊な金属を打ち込めるだけの魔力は、恐らくもうこの者たちには残っていないだろうが、私は同じ過ちを犯さない。
例えそうだとしても舐める事はせずにしっかりと殺しに行く事にする。
そして、まず手始めに寮の手の爪に魔力を込め、切り裂こうとするのだが、待てど暮らせど振りぬかれた事によって起こるはずの衝撃や音といったものが伝わってこず、代わりに『どちや……っ!!』という何かが落ちる音が聞こえてくる。
いったい何が落ちたのか? と思い音がした真下を確認してみると、そこには先ほど攻撃しようとした私の右腕である、ドラゴンの腕が落ちているではないか。
「……おぉぉぉぉおおお?」
分からない。
何故私の腕が落ちているのか。
そもそもドラゴンの固い鱗で覆われているはずの腕がこうも簡単依切り落とされるはずがないし、もし切り落とされたとしても先程私の顎に刺さった金属の棒の時のようにかなりの衝撃があるはずである。
しかも傷をつけるのではなく切り落とされているという事は肉も骨も切られているという事であり、ますます切られた事に本人である私が気付けない程にスパッと切るなどあり得ない、ありえてはならない。
「あら、思った以上にあなたの身体は柔らかいのね」
未だに腕を切り落とされた事を受け入れる事ができないである私に向かって獣人族の娘が話かけてくる。
「本当に拍子抜けね。無駄に図体がでかくなっているせいで的も大きくなり、やりたい放題じゃない。これならばまだ幹部とかの方が強かったのではないかしら?」
あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ない。
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