第120話 それは楽しみですわね


 そしてわたくしは、腰を含めた下半身と両腕を失ったエドワーの背中を踏みつけると、まるでカエルを潰したかのような「ぐえっ」という鳴き声がエドワーの口から出るではないか。


 あの宮廷魔術師長というエリートの中のエリート、まさに上級国民であると言えるエドワーが、惨めなものだ。


 というか、下半身を吹っ飛ばしてしまった人の身体すら回復させてしまうこの回復魔弾は流石としか言いようがないだろう。


 攻撃力は言わずもがな、回復面でも帝国一だと言っても過言ではないだろう。


「返せとはおかしなことを言いますのね。そもそもあなたはわたくしによって殺されてもおかしくないというのに、わざわざ瀕死の状態から生かして差し上げたのですから感謝こそすれ、何でそのように敵意を向けられるのかさっぱり分かりませんわ。とりあえず、何らかの方法で仲間を呼んで逃げられるのも嫌なので結界を張って、奥を探索しに行こうかしら」

「貴様は絶対にこの組織の創設者であるサンドラ・アラ・ベルトラン様には敵わぬ……絶対にだっ!! そして後悔するがいいぞっ!!」 

「あらそうですの? それは楽しみですわね」


 そして結界の中で、ただの音が鳴る玩具でしかなくなったエドワーへの興味は一切無くなったわたくしは、エドワーの転がっている四方に結界の効果を持っている魔弾を打ち込み結界を張ると、更に奥へと進んでいくのであった。



◆サンドラside



 施設が何だか騒がしい。


 どうやら侵入者は二人のようなのだが、そこそこ強いようなので恐らく帝国が私の組織を潰す為にグルドニア帝国七騎士の内二人を派遣してきたのかもしれない。


 ちなみに宮廷魔術師が派遣されていない事はエドワーよりここ最近宮廷魔術師に変わった動きが見られないとのリークから間違いはないだろう。


 エドワーがこの組織のメンバーである事が帝国に漏れていなければの話ではあるのだが、そこに関しては心配する必要は無いだろう。


 そして、侵入者は地下と地上と別れて移動し始めたようなのだが、己の力に余程の自信があるようなのだが戦力を分散させるのは悪手であると言えよう。


 地上部分には帝国宮廷魔術師長であるエドワーが、地下には今現在任務から返ってきた組織の幹部が複数人いる筈なので、いくら帝国七騎士といえども勝てる事はまずないだろう。


 宮廷魔術師長であるエドワーに関しては言うまでも無いのだが、私の組織である幹部は全員魔獣化をする事ができるので、そうなってしまっては一人で倒す事はまず無理だろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る