第119話 腕など要りませんわよね


 ギルドを経由する事により帝国からの報奨金をいくらか中抜きはされるだろうが、帝国に引き渡す前にギルドが大々的に発表をする為帝国側にエドワーの仲間がいたとしてもこの事実を地切り潰す事はできない上に、そのせいで万が一逃がしたとしてもそれは帝国の不備でありわたくしの不備ではない為報奨金は問題なく支払われるだろう。


 逆にそのギルドの中抜きを嫌がって帝国サイドに渡したしてそうなってしまった場合は帝国にそれら不祥事を握りつぶすどころかわたくしがエドワーを捕まえた事もエドワーのやって来た行いも(表向きは)無かった事にされて報奨金を支払われず手元には銅貨一枚すら入って来ないという最悪の可能性もあるので、ここは確実に金銭が手元に入ってくる方が堅実的だろう。

 

 要はギルドの中抜き分は保証代と思えば妥当な金額だろう。


 なんならもう一度エドワーを仲間が逃がしてくれれば、もう一度稼げるので少しばかり逃がしてくれる事に期待していたりする。


「…………馬鹿めっ!! 敵に塩を送り、それで勝ったつもりかっ!! やはり貴様はまだまだケツの青いガキじゃのうっ!!」


 そしてやけに静かだなと思ていると、エドワーは虎視眈々と勝機を窺いつつ魔術の術式をわたくしに隠れて練っていたようである。


「そのガキに良いようにあしらわれるクソジジイが何をいっているのかしら? 自身の実力とわたくしの実力の差すら測れないようになったのならば引退する時期ですわね。わたくしがしっかりと引導を渡してあげますので、若者にその席を譲ってあげなさいな」


 しかしながらエドワーがこそこそと魔術を練っていた事には気付いていたので、エドワーが魔術を行使する前にその両腕を拳銃で撃ち落とす。


「あぎゃぁぁぁああっ!?」

「悪さをするこんな腕など要りませんわよね」


 魔術というのは体内で練った魔力を詠唱で形を作り手で放出して行使するので口か両の腕のどちらかが無ければ魔術を行使する事すらできなくなる。


 口はこれから様々な事を供述してもらう必要があるので必要である為、結果的に両腕を打ち落とす事になった。まぁ、両腕が無かろうとわたくしにはメリットしかないので問答無用で撃ち落とさせてもらう。


「良い歳したお爺さんが両の腕を打ち落とされただけで叫ぶのは流石にどうかと思いましてよ?」

「か、返せっ!! 儂の腕を返せっ!!」

「どちらにせよ傷口は回復させたので、打ち落とされた腕を付けてもくっつく事はございませんわよ? 一度回復した傷は回復魔術でも元の状態に戻す事はできない。傷が無かった状態に戻す事もできなければ腕を生やす事もできない。回復系魔術唯一の弱点ですわね」

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