第116話 返事は『くそくらえ』である


 しかしながらエドワーは自分から『殺しても良い存在である』という事を説明してくれたので、これで気兼ねなくわたくしはエドワーを殺す事ができるという訳である。


「あら、そうなんですの? そんなに昔からわたくしの事を想っていたというのは素直に嬉しいですわね。ですが、歳の差は考えた方が良いと思いますの」


 そしてわたくしは、明らかに喧嘩を売っているような挑発的な声音でエドワーへ返答する。


 しかしながらそこはやはり歳を取っているだけあるのか、私の煽りにはまったく反応する気配はなく、その事からも宮廷魔術師の長に成れるだけの能力は持っているのだろう。


 まぁ、宮廷魔術師の長に成れるだけの能力はあれど、宮廷魔術師の長として相応しい人間ではなかったという事である。


「どうだね? 今から儂の物になると誓えば(今は)殺しはしないと約束しよう。どうだね?儂の所にこないかい?」

「そうですわね、魅力的な提案には思えるのですけれども…………寝言は寝てから言え、クソジジイッ!! ですわ。正直先ほどから『わたくしの身体を使ってモルモットにしたい』という欲求が駄々洩れですし、先ほども『殺しはしない』の前に『今は』と思っている事も透けて見えておりましたわ。どうやらボケてしまっているようですわね。そんなボケ老人はここで始末してあげましてよ?」


 そんなゴミみたいな老人から『自分の物に成れ』と熱烈なアプローチをしてくれたところで返事は『くそくらえ』である。


 「それはそれは、勿体ない……実に勿体ないのう」


 そしてわたくしの返事を聞いたエドワーは、まるで傍から見れば好々爺のように思えてしまうような雰囲気で返事を返すのだが、その目の奥はドロッとしている物が蠢いているではないか。


 その姿はまさに人の姿をして獲物を狩るバケモノではないか。


「そもそもわたくしは既にご主人様であるルーカス様の奴隷ですわ。そのルーカス様の承諾なしに他人の物になる事はできませんわ」

「そうかそうか……。ならば仕方あるまい。多少強引ではあるが万が一お主を殺してでも無理やり誘拐して儂の研究室がある場所まで連れて行くしかあるまいの。生きた状態で研究できるに越した事はないんじゃが死んだら死んだで解剖して隅々まで調べればそれで良いじゃろ」


 そういうとエドワーはストレージから魔杖を取り出し、それを見たわたくしは【拳銃式自動魔力転送媒体器】を起動させる。


「な、なななななななな………なんじゃそれはぁぁぁぁぁああああっ!? 知らぬっ!! 儂はそんな物、知らぬぞっ!!」



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