第115話 話が長すぎる
そう言うとエドワーは嬉しそうに、何故私だと分かったか話し始めるのだが、その姿はまるで子供が親に『自分だけが知っているとっておきの話』をするかのような、まるで敵であるわたくしに見せるような表情とは真逆の、生き生きとした表情をしているではないか。
「始めてお主を見た時は正直言って、お主を誘拐するのを我慢する事が大変であったほど、お主というノーマンは儂が今まで見てきたノーマン、いやエルフやドワーフ、獣人等といった他種族も含めてみた事も無い魔力の流れをしておった。その衝撃たるや今でも鮮明に覚えている程であるのは儂がお主の成長した姿を見ても一発で思い出すくらいだからの……。おぬしの魔力量は他のノーマンよりもかなり多い、それこそ何十年と研鑽を積んで来たあの時の儂よりも少しだけ少ない程の魔力量を秘めておる事は分かったのじゃが、その魔力はお主の身体の中に留まっており、外へと流れ出る量が明らかに保有量と比べて少なかったのじゃ。そんな事普通ならばあり得ない。あり得るとしたら普通ではないという事であり、何が普通ではないかを突き止めたいという衝動を抑えるのはかなりきつかった程じゃ。『何でお主は平民ではなく貴族のむすめであるのか、もし平民であれば大金を積んででも親から買ったというのに……』と何度お主を見て思った事か……。そして、儂はその後一度西側の砦へと行き魔術の研究に没頭して、偶に式典などに出る為に帝都に戻るという生活をしていたのだが、それをずっと儂は後悔していたのじゃ。というのも、お主がゴールド家から勘当されるという事をもっと早く知っていれば儂が引き取ったのに……と。しかし、神は儂を見捨てなかったようじゃっ!! 何故ならば今、あれほど恋焦がれたお主が、あの日以上におかしな状態へと成長して儂の目の前にいるのじゃからのっ!! むしろあの時引き取らなくて良かったとさえ思う程じゃわいっ!!」
そしてエドワーは高ぶった感情のまま一気に話始めるのだが、要約すると『わたくしの魔力の在り方を研究したかった』という事であり、だから覚えていたというものらしい。
老人の話は長いとはいうが、正直言って話が長すぎる。
それと、分かった事はこのエドワーは狂っているという事である。
恐らく研究の為ならば人の命など何とも思っていないのだろう。その事が話の節々から伝わってくる。
その事をしれたわたくしは、ホッと胸を撫で下ろす。
もし、このエドワーがわたくしと同じようにこの組織を潰す為に潜っているという可能性も万が一あるのと、それか弱みを握られている場合も確率は低くともゼロではなかった訳だ。
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