第114話 わたくしも見覚えがあった
たったそれだけで相手の身体はまるで紙のように切り裂かれていくではないか。
「攻撃がショボければ防御力もショボい……はっきり言って命を費やしてまで求めた力にしてはあまりにも釣り合って無さ過ぎたわね……」
そして私はそう言うと、そのまま奥へと進んで行くのであった。
◆リリアナside
「それにしても、この裏組織は本当に帝国内でもかなり有名で凶悪な部類と言われている組織なのかしら? はっきり言いて手ごたえが無さ過ぎてつまらないですわね……っ」
「侵入者がきたというから来てみれば、まだ年端もいかぬケツの青いガキではないか。これは拍子抜けだのう……」
わらわらと組織のメンバーであろう者達がどこからともなく現れてわたくしを殺しにむかってくるのだけれども、弱すぎて退屈していたその時、通路の奥から初老の髭を蓄えた老人がやって来るではないか。
その老人の羽織っているローブは帝国宮廷魔術師の長にだけ与えられるローブに、宮廷魔術師にしか付ける事の出来ないバッジを胸に付けており、その顔は貴族であれば誰でもしっている顔であり、勿論元貴族であるわたくしも見覚えがあった。
「…………どうしてあなたのような人物がこんな所にいるのかしら? もしかして帝国を裏切ったんですの?」
目の前いる者は私の記憶と帝国が出している情報が正しければ今現在帝国の宮廷魔術師たちを束ねる存在であるはずのエドワー・ドケリーが目の前にいるではないか。
「ほう、この儂の事を知っているのか? …………ほう、誰かと思えばゴールド家の娘であったか。それならば儂の事を知っていておっても不思議ではないの」
そしてエドワードは自分の存在を知られていた事に一瞬だけビックリしていたのだが、わたくしの顔を見て、わたくしがゴールド家の娘である事を思い出したようである。
とはいってもわたくしとエドワーとは、ゴールド家のパーティーで一度だけしか会った事がなく、しかもまだわたくしがゴールド家から勘当される前の話なので今と顔つきも幼く、身長も違えば身体つきも違っている筈であるのにエドワーはわたくしがゴールド家の娘であると気付けたようである。
「ふむ、何故直ぐに儂がお主の事をゴールド家の娘であるか気付けたのかと不思議そうな顔おしておるな。相手に自分の感情を読まれるなどこれが宮廷魔術師や儂の弟子たちであれば叱責していたところではあるのじゃが、儂の敵であり尚且つ逆立ちしても勝てるようなお主に叱責したところで意味もないだろう。ここは特別に何故儂がお主の事を覚えていたのか教えてやろうではないか」
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