第83話 自業自得というヤツである
そして私は孤児と離れると、そのまま地下室へと向かう。
隠し扉の奥にある階段を下り、地下の空間へと通じる扉を開けるとすえたような独特な匂いが私の鼻腔を刺激しはじめ、少しだけ眉をしかめる。
この匂いには未だに慣れることは無いのだが、数時間も入ればその内鼻が麻痺して匂いもあまり感じなくなる。
それに、この匂いがあったとしてもここへ来たくなる魅力的なものが地下にはいっぱいある。
例えば死体を利用したアンデットの研究や蘇生の研究、死体の細胞を魔獣の体内に注入してみたり、逆に魔獣の細胞を生きた人間へ注入してみたり、死体や生きた人間を使った新しい魔術や同じく生きた魔獣やその死体を使った新しい魔術の研究などなど、楽しい事ばかりの、私にとって地下室とはまさにおもちゃ箱そのものであった。
その地下室にある一室へと私はウキウキしながら進んで行く。
前回ダークエルフの血とノーマンの血を入れ替えたここの元孤児(ダークエルフはこの実験の為に闇奴隷商で購入した)であり現在は私の奴隷兼実験体は、一体どうなっているのだろうか?
「調子はどうですか?」
そして実験体がいる部屋へと入ると、そこには鎖に繋がれた二人の女性が私を睨みつけているではないか。
しかし実験体たちはわたしの言葉に無視し、返事を返そうとせず、ただ怒りの感情が籠った目で私を睨みつけてくるだけである。
「…………」
「…………」
「おやおや、二人して無視ですか? ここは、そんな悪い子たちには躾を……と言いたいところではあるのですが、それでせっかく珍しくまだ生きている二人が死んでしまったら元も子も無いですからねぇ。私が自分の感情よりも実験結果のほうが大事な人間である事に感謝する事ですね」
そもそも孤児になった時点で死を待つか、一生泥水を啜るだけの短く悲惨な人生を歩むだけかという状況の中でこの私は第三第四の可能性を与えてやった恩を仇で返すような人物だからこいつらは私の実験体に選ばれたのだろう。
まさに自業自得というヤツである。
最初から私に曇り一つない信頼と献身的な態度を取っていたのであればきっと選ばれる事は無かっただろう。
まぁ、ダークエルフについては違法な奴隷商から今回の実験の為に買い付けたのだけれども、彼女に関してもこの元孤児だった彼女と同じことが言えるだろう。
もしここで私に対して献身的な態度を取るような人物であれば、そもそも奴隷として捕まっていなかった筈である。
それにしてもダークエルフの奴隷を手に入れる事ができたのは幸運だったと言えよう。
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