第82話 本当にできた子供達である
ただ餌を与えるだけでコイツ等は私の事をまるで本当の親であるかのように信頼し始めるのだから孤児院というのは私にとって実験体を育てる為の効率的な良い牧場だと言えよう。
しかも孤児である為この者たちが複数名いなくなったとしても、誰も怪しむ者はいないだろう。
孤児たちについては一定の年齢以上になると実験結果を確認する為に冒険者登録をさせているので、孤児たちには『冒険者ギルドの依頼途中で死んだようだ』とでも言えば大体が納得してくれる。
勿論、欲を掻いたら孤児たちどころか帝国にも怪しまれてしまい、私の崇高な実験の邪魔をされるだけでなく、また一から新天地で始めなければならなくなる事を考えれば実験体として間引く数も怪しまれない程度に絞る必要があるだろう。
裏の世界はこの己の欲こそが最大の敵であり、その欲に呑まれたものから消えてしまうのである。
新たに空いたテリトリーを自分の組織のテリトリーにしたいという気持ちは分からなくもないが結局その結果、その奪い合いに参加している組織は帝国に睨まれてしまっているのだから骨折り損のくたびれ儲けという結果になる可能性がかなり大きいだろう。
恐らく帝国側はこの争いが終息しはじめ、どの組織も疲弊したところで一斉に摘発に動くだろうし一気に帝都の治安向上の為に動き始めるだろう。
こういう場合は下手に動かない方が得策に決まっている。
そしてその後にゆっくりと自分の実験を進め、その組織も大きくしていき、テリトリーも少しずつ広げていけばいいだけである。
「うん、そうだね。ここ最近は毎日良い事が起こっているからね。この孤児院から腕の立つ冒険者が増え、街の人々からも感謝され、私にとっては自慢の子供たちだわ」
実験の効果を見る為に殺さないでおいた孤児たちは、実験の成果もあってか着々と冒険者ランクを駆け上り、巡り巡ってその結果私は地域住民からも、そして帝国からもここ最近では聖母として呼ばれ始めるという予期せぬ副産物まで与えてくれるようになった。
やはり良い事をすれば自分に帰ってくるのだろう。
死んでいった孤児たちもきっと天国で私に祝福を願っているに違いない。
「それでは、私は今から地下室に用事があるからあなたも自分できる事をしなさい」
「はーいっ!」
「あと、地下室には──」
「危ないから絶対に入っちゃダメなんでしょっ!? もう何回も聞いたからいちいち言わなくても分かってるよっ!!」
うん、本当にできた子供達である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます