第80話 最大の利点



 ちなみにこの【神の逆鱗】なのだが、何故前世ではこれを行使できないと魔術師として話にならない言われるほどの魔術なのかというと、先ほど裂け目から出て来た無機質な美女が見た景色、約百メートル内にある全てが光の粒となって消え去るという効果がかなり万能であるからである。


 勿論対策はあるので俺がルドルフにしてあげているように常に結界を張っておくなどもあるのだが、そういう対策をしていないものに関しては光の粒で消してしまうという事は単純に相手の行使した魔術ですら消してしまう為単純にカウンタースペルとしても優秀であるからだ。


 しかし、それだけであればわざわざこんな大規模な魔術を行使しなくとも、カウンタースペルをするのであれば水魔術段位二【失敗】や水魔術段位三【削除】など、その都度場面に応じたものを行使した方が魔力的にも節約でき、効率的であると言えよう。


 にも関わらず【神の逆鱗】を覚える事が魔術師としての最低ラインだと言われている理由は、この魔術はかなり応用を利かせやすいという最大の利点があるからである。


「…………お、俺は…死んだはずでは……? このような事が、俺が謝罪して罪を認めるまで続くのか……?」

「どうだ? 実際に自分の身体で体験してみた感想は? そして更にこの【神の怒り】に様々な属性を混ぜて使う事ができるんだ。だから、身体を再生したばかりで申し訳ないんだが、もう一度首から下を消し去ってしまおうか」


 先ほど首から下が消え去った事がかなりショックだったのが窺える程に動揺しているルドルフに向けて、再度首から下を消す旨を告げる。


「は?」


 ちなみに【神の怒り】を行使する時に、俺は別途炎属性へと練り込んだ魔力を加えた為、その追加効果がルドルフに襲い掛かる。


 その追加効果は先の尖った炎の十字架が複数ルドルフを取り囲むように出現すると、そのままルドルフ目掛けて突き刺さっていく。


「あぎゃぁぁぁああっ!! 熱い………っ」


 そして次の瞬間ルドルフの下半身は一瞬にして消し炭になってしまうではないか。


 その熱さにルドルフが叫ぶも、直ぐに身体は消し炭となるので、先ほど同様に身体という支えが無くなった頭部が『どしゃり』と地面に落ちるので、先ほど同様に髪の毛を掴んで消えて無くなった身体を再生させてやる。


「良かったな、ルドルフ君。威力が高いため身体が焼けても一瞬で消し炭になってしまう為苦痛も一瞬だな。それで、まだやるかい? まだまだこんなもんじゃないぞ?」

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