第79話 光魔術段位十【神の逆鱗】



 そう言うと、俺は早速段位十の魔術の中から光属性の魔術を行使する。


 今回行使する光魔術なのだが、折角なので前世では最もスタンダードかつ『これが扱えないと魔術師として話にならない』と言われている【神の逆鱗】を行使する事に決めた。


 こちらの世界ではこの【神の逆鱗】という魔術があるかどうかは分からないのだが、俺が昔家にあった冒険譚に記載されていた段位十の魔術描写がまさにこの【神の逆鱗】そのものであったので、正直な話こちらではこの魔術どの程度の段位であるのかは分からないのだが間違いなく段位十以上である事は間違いないだろう。


「しっかりと見ろよ? これが光魔術段位十【神の逆鱗】だ。ちなみに修練場とルドルフ君の頭部は俺が壊れないように予め結界を張っているから心置きなくその身体で体験すればいい」


 そう俺が言うと空間が裂け、中から石膏でできたような無機質で巨大な美女が目を瞑りながら手で裂け目を押し広げるように出て来ようとする。


「は? え? おい………っ。なんだよあれ……? こ、こんな魔術が存在して良い訳がないだろうっ!! や、やめろぉぉぉぉぉおおおおっ!!」


 俺はこの光景を幾度となく見てきた為今更驚きはしないのだが、初めて見た時は俺もルドルフ同様にあの無機質で巨大な女性を見た時は神々しさと共に得体の知れない恐怖を感じてしまっていたのは懐かしい思い出である。


 そして、当然ルドルフに止めろと言われても止めるつもりは無いので俺はそのまま【神の逆鱗】を行使すると、肩まで出て来た真っ白い巨人の美女が目を開いた瞬間、辺りは真っ白な光に包まれ、ルドルフの身体が光の粒子となり、俺が結界を張った頭部を残して消え去ると、そのまま『どしゃっ!』という音を立てて地面に落ち、少し転がったところで止まる。


 そして俺は地面に転がったルドルフの頭部を、髪の毛を掴んで拾うと再生系の魔術をかけてやる。


「ちなみに死んでも蘇生魔術を、精神的なダメージや欠損部位が無い場合は回復魔術を、先ほどのように欠損部位(首から下が全て欠損しようとも)がある場合は再生魔術を行使してちゃんと元に戻してやるから安心してこれから魔術を喰らって行けば良い。勿論、段位が十ではないと疑うのであればそれを証明する為にルドルフ君も何か対抗して魔術を行使して俺の行使した魔術を跳ねのけても良い。あぁ、俺はなんて優しいのだろうか? あぁ、勿論これからルドルフ君が俺に土下座で謝罪して罪を償うと言うまでは様々な段位十の魔術をルドルフ君に行使してあげるから」


 

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